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1on1で話したいのは、業務進捗だけじゃない──サイボウズチームワークMeetup レポート

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企業のチームワークや組織づくりの「ちょっとしたお悩み」について、サイボウズチームワーク総研のコンサルタントや、他企業の参加者と話ができるチームワークMeetup。今回は1on1をテーマに、3名のバックオフィス担当者にご参加いただきました

開催概要

テーマ:1on1で何を話す?相談しやすい1on1の場を考える
日 程:2022年7月14日 オンラインで約1時間
参加者:人事関連業務担当者3名
    サイボウズ チームワーク総研シニアコンサルタント なかむらアサミ

サイボウズでは1on1を「ザツダン」 と呼んでいます。主な目的は、相手をよく知り、よい関係を築くことです。メンバーの成長支援は必須ではなく、各マネジャーが必要に応じて判断しています。冒頭、ザツダンについて概要を共有した後、参加者の声をうかがいました。

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共通の悩み「1on1を有効に機能させるためには?」

なかむら:1on1について、みなさんはどんな取り組みをされていますか?

Aさん:弊社はまだ1on1を導入していないのですが、コロナ禍になってからコミュニケーション不足となり、今後経営陣に提案していきたいと思っています。導入にむけて大変なのは「マネジャー陣の気持ちをどうやって動かして行くか」かなと。まず、何から取り組めばいいのでしょうか?


なかむら:ひとつには「1on1は仕事です」との意識をマネジャーに植えつけることですね。「仕事なので、業務時間の中で十分な時間を取ってくださいね」と後押しをするんです。1on1は「仕事ではない」と解釈するマネジャーも結構いるので、これは大事な気がします。

また、導入の際には2つのやり方があります。1つは、制度として一斉に始めるやり方。もう1つは、興味をもったマネジャーの後押しをして、いくつかよい事例をつくった後に広げていくやり方です。

サイボウズの場合は、制度ではなく慣習として浸透したので、どちらかというと後者に近かったです。「良さそうだから、うちの部でもやろう」という流れですね。

制度として一斉に入れる場合は、「マネジャー陣の足元が揃わない」とか、「内容にばらつきがある」といったお悩みを聞くことがあります。

Bさん:弊社では1on1を3年前から始めて、現在は定着しつつあります。しかし、どのように「有効な時間」にしていくかが課題です。1on1を有効に活用できている人がいる一方で、業務の話ばかりになってしまう管理職がいたり、回数を重ねてはいるものの、上司との距離感を近づけられないメンバーがいたりと、何年かけても有効に活用できていない人もいます。どんな工夫が必要なのでしょうか。


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なかむらアサミ。2006年サイボウズ株式会社にキャリア入社。離職率28%時代の人事経験から始まり、サイボウズの組織風土が変わっていく様子を体感してきた生き証人。広報、ブランディングを経て、現在はチームワーク総研シニアコンサルタント。テレワーク下におけるオンラインマネジメント、チームワーク推進の相談実績多数

なかむら:サイボウズでは15年ほど1on1をやっています。1on1で「会話をすることのメリット」を感じたマネジャーは、その成功体験から「こうすればよいな」といった方向感がわかるんでしょうけれど、そうでない場合は悩ましいですよね。

たとえば、マネジメントが「メンバーを管理しなければ」という考え方をしていると、メンバーが雑談をしにくい時間になってしまう面があります。

集合研修の機会に、マネジャー陣の共通認識をつくるというのはどうでしょうか。先日サイボウズで、マネジャー同士でざっくばらんに話す勉強会がありました。あるマネジャーが「自分、こういう工夫をしています」と話すと、ほかのマネジャーも「それいいね、自分もやってみよう」となりやすい。

1on1をしているマネジャー同士、横のつながりをどうつくっていくか、というところは、わたしたちも気にしているところですね。

Cさん:わたしの職場では、上司部下のコミュニケーションを向上させようという動きがあります。昨年、管理職以下のメンバー側に満足度アンケートを取った結果、「もう少し上手くできるんじゃないか」と考えているところです。


なかむら:それはいいですね。1on1をする側のマネジャーへのアンケートは、多くの企業でされているようですが、メンバー側に......というのは意外と少なくて。メンバーの率直な意見をマネジャーにフィードバックすることはとても大事ですね。

フィードバックをしているかどうかで、マネジャー側のモチベーションも変わってくるのかなと、他社さんと話をしていて思ったことがありました。

Cさん:アンケートには多くのメンバーが、「話す機会がなかなか用意できない」と書いていました。その理由は2つあり、1つは、上司が忙しくて「ゆっくり話す機会が全然取れなくなってしまっている」こと。もう1つは、在宅勤務同士だと、「ちょっとした雑談ではミーティング設定ができない」と。

なので、マネジャーへのフィードバックとして「ゆっくり雑談ができる機会として1on1を設けてもらうことはありがたい」という声が多いです。


なかむら:アンケートが機能しているんですね。

Cさん:アンケートでは、ポジティブな意見とネガティブな意見、あとはこれからどうしてほしいか、などを聞いています。

ネガティブな意見としては、会社は1on1を「成長の機会と捉えましょう」というスタンスが強いから、上司に相談すると、「じゃあ、こうしてみたらどうかな?」「次までにこうしてみようよ」のように宿題を出されてしまう。それが、「評価に関わりそうで嫌」「相談しづらい」といった意見があります。

あとは、言葉を選びながらも、「結局、説教されているんじゃないかと思っちゃう」とか、「管理職の愚痴を聞く場になっちゃう」とか。

なので、管理職側にどういうスタンスで臨んでもらうのか、どういう準備をしてもらうのかという情報提供が必要だなと、アンケートを見て感じたところでした。


なかむら:それほど率直な意見が出てくるのはいいですね。会社によっては、率直に書く人は少ないですよ。

Cさん:匿名アンケートにしました。課だけ書いてもらって。


なかむら:なるほど。匿名だからこその率直な意見なんですね。管理職も、メンバーに嫌がられる時間を作りたいわけでは絶対にないと思います。ですから、改善点も含めた意見が出る時間にしていきたいですね。

業務進捗だけじゃない、1on1で「本当に話したいこと」

Cさん:トークテーマは、どんなものがよいのでしょうか。


なかむら:食べ物やペットの話は、導入の鉄板みたいなところがありますね。あとは、最近気になったニュースや、体調はどう?とか。業務の話だと煮詰まっているところないかなとか。

1on1で話すとよいトピックを、人事側からマネジャーにいくつか渡して、「気分に応じて使ってください」としておくと、マネジャーも選んで話せばよいですし、やりやすいかもしれないですね。

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Cさん:「業務の進捗は......」とか、「自己啓発が......」とか、真面目な内容ばかり考えていました。確かに、入り口の最初のスタートをしゃべりやすくするのはいいですね。


なかむら:他にわたしたちがやってよかった例として、「通常なら会社に伏せがちなことを1on1の場で話す」があります

プライベートなことは話しにくいという方は多くいますよね。たとえば、「子どもが骨を折りました」みたいなこと。でも、通常なら伏せがちな家族のことを話すことで、「病院に行く時間が増えるかもしれません」といったことを、マネジャーが予測しうることってあるじゃないですか。

それを共有しておくと、マネジャーも対処ができるし、話すことで、本人も安心します。危機管理といいますか、マネジャーと本人だけではなく、チームとしても気持ちの用意ができます。「本人の立場が悪くならないためにも、プライベートであっても業務に影響しそうなことは教えておいてくれるとうれしい」と伝えておくと、メンバーとしても安心します。メンバーからすると、どうしても言いにくいと思ってしまいがちですから。

こうした言葉がけで関係性が良くなることはあるんですよね。マネジャーの言動って、ご自身が思っている以上に影響力が大きいので、ていねいに話すことが大事だなと思いますね。

なかむら:サイボウズでは、マネジャーとメンバー以外にも、同僚同士の1on1をやっていますが、みなさんの職場ではいかがですか?

Bさん:上司と部下だけですね。


Cさん:うちも課長と部下がやるものっていう考え方ですね。横のつながりの1on1っていうのは聞いたことないですね。


なかむら:サイボウズではちょこちょこあります。特にコロナ禍に入ってからですね。部署を超えてとか、同僚同士とか。マネジャー同士もありますし、チームに新しいメンバーが入ってきたら、マネジャーが毎朝時間をとって1on1をしたり。

Bさん:「横のつながりで1on1をする」という発想がすごく新鮮です。「しっかり仕組みを作ろう」と1on1を導入しようとすると、マネジャーがメンバーとの関係づくりをしながらも、「いい業績を上げられる組織にして行きましょう」みたいな方向に行きがちです。それを防ぐためにも、横・斜めのパスを作るという発想は、すごい新鮮でした。


なかむら:マネジャー陣は誰かに話を聞いてもらうことはあるんですか?

Bさん:はい、上の層までやっています。


Cさん:「課長が、部長と話す」という場は設定していないです。でも、上との繋がりも確かに大事だなって、聞いていて思いました。


なかむら:1on1している側のマネジャーがストレスを持っていなければいいんですけど、「自分の話は誰が聞いてくれるの?」となっていると、よくないですよね。課長は部長と、部長は本部長と、というように各自が自分の上司と行う、または近い階層同士で1on1をすると、いろいろな情報の共有もしやすいです。マネジャーはさらに上のマネジャーとの関係性も、しっかり作っていくところはあってもいいのかなと思いますね。


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著者プロフィール

三宅 雪子

チームワーク総研研究員・編集員。組織におけるチームワークを探求。働く人の強み・魅力を引き出し、人と人との関わりをチームの生産性へつなぐ道すじを探る。