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ウェルビーイング、社内推進のポイントは「言語化」――サイボウズチームワークMeetup レポート

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企業のチームワークや組織づくりの「ちょっとしたお悩み」について、ほかの企業の方やチームワーク総研コンサルタントと対話ができる「チームワークMeetup」。3回目のテーマは「マネジメントの立場から考える自分とメンバーとのウェルビーイング」です。

開催概要

テーマ:マネジメントの立場から考える自分とメンバーとのウェルビーイング
日 程:2022年5月31日 オンラインで約1時間
参加者:人事経験者3業種3名
    サイボウズ チームワーク総研シニアコンサルタント なかむらアサミ
※本テーマは好評につき、ご参加者入れ替わりで2回開催いたしました


そもそもウェルビーイングとは

そもそも「ウェルビーイング」とは何でしょうか。日本の人事部ではこのように解説しています。

「ウェルビーイング」(well-being)とは、身体的・精神的・社会的に良好な状態にあることを意味する概念で、「幸福」と翻訳されることも多い言葉です。

引用:ウェルビーイング|日本の人事部

働く人の価値観の多様化や、働き方改革の推進を背景に注目が集まっています。いま、この記事を読んでいる方の中にも、ウェルビーイング向上にむけ、職場や仕事でさまざまなチャレンジをされている方もいらっしゃることと思います。

今回のチームワークMeetupでは、チャレンジされている参加者から話題をいただき、現場のリアルを伺いました。

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会社のウェルビーイング浸透、どうしてる?

なかむら:まずは「ウェルビーイングの社内浸透」ですね。気になっていることをお話いただけますか?

Aさん:わたしの所属は人事ですが、総務では健康経営を扱ったり、他にもウェルビーイング推進室ができたりと、人事以外のところで複数の動きがあります。今後、人事もノータッチというわけにはいかなさそうですが、そもそも「ウェルビーイングはどう進めていくのか?」といった大きな方向性がまだ決まっていません。


Cさん:大手の会社だと、人事ってどうしても敬遠されてしまうというか、何か「監視されている」ように思われがちだと思うんですね。なので、人事とは切り離したところで、推進部隊があってもいいのかなと思っています。小規模の会社であれば、関係ができていれば、人事が推進母体になることはアリだと思いますね。


Bさん:うちは正直、まだまだこれからという形です。ようやく部長が「ウェルビーイング推進していかなきゃね」と言い始めたところで。人事メンバーで会話がスタートしたというのが現状です。


なかむら:ウェルビーイングって、言葉がすごく広いですよね。幸福度、自分がどうあったら幸せなのかということを言語化できている人は、そんなに多くないのではと思うんです。

たとえば、社員が言語化しやすいように「どんな環境があったら、気持ちよく働けるか」につながる問いを作るとか、そういうことを話す時間を持つことが、第一歩になるのかなと思いますね。言語化して、「会社で話せた」ということが大事だと思うので、話せる場づくりは大切です。

特にリモートワーク中心の場合、話せる場が減っているので。会話の入口として人事が入るのもアリですし、いちメンバーとして入るのもいいでしょう。話す際のハードルは低いほうが良いのかな、という気がしますね。

Cさん:そう、ウェルビーイングって聞いても分かるようで分からない。例えば、健康経営で有名な会社さんで、「いきいき働く」を共通言語にしている所があります。そうすると人事じゃない人でも、「いきいき働くっていうのはどんな特徴があるの?」「関係性で考えると何?」のように議論しやすいので、いろんな方が入っていけるのかなって。その会社のリーダーの方は、このような形で、みんなで話しあえるような場に変えていらっしゃいますね。


なかむら:「共通言語を作る」というのは、すごくいいやり方ですね。想像ができました。


上司には本音を話せない? ウェルビーイングに欠かせない心理的安全性

なかむら:続いては、心理的安全性の確保について。


Bさん:会社でエンゲージメント調査をすると、「階層間の意思疎通」が弱みという結果が出るんです。社員と話をしても「上司には本音を話せない」と言われることもあります。評価者の立場で、安全性を保ちながら会話をするにはどう話せばいいのか、いうところも、ウェルビーイングを進める上で悩みだなと。


Aさん:コロナ禍もあって、実際のコミュニケーションの量や厚みが減っています。弊社では、そのあたりを1on1でカバーしていますね。特に上司部下の1on1を定期的にする必要があるだろうということで、5年ぐらい前からはじめています。最初は人事部門だけでしたが、いまはほとんどの部門で導入しています。

課題もありますね。全部門で1週間に1回とか、上司部下が30分使うわけです。その費用を計算した時に、見合うだけの業績効果が出ているのかどうか......というのは感じます。また、信頼関係がない中での無理やり1on1。これはメンバーからしたら苦痛でしかありません。やったら分かるんですけど、1on1って、スキルや経験がかなり必要なので、その辺の教育コストまで考えると、どうなのかなあと。


Bさん:うちも始めて3年目ですね。一応やることにはなっています。ただ、頻度は各部にお任せです。月に1回30分だと、業務の質問みたいな形になって、1on1でやる必要ないよねってなることの方が多いみたいです。


Cさん:前の会社は1on1あったんですけど、心理的安全性はまったく確保できていませんでした。トップダウンでモノが言えない組織だったら、機能しないなと思っています。

それに、管理職には最低限、傾聴の訓練をやらないと、しっかり話は聴けないだろうなあって。そこで、妥協策ですけど、人事には、傾聴に長けている方が割と多いと思うので、間に入って寄り添いながら話を聴く......というのも手かなと思って、わたしはそれを少しやっています。


Aさん:うちもそうですね。5年前に人事から始めた時は、一気に全社導入はせずに、本当に価値があるものかどうかというのを自分たちで確かめました。それから人事メンバーみんなでコーチングの資格をとりまして、ファシリテーターを人事メンバーでやりながら、社内に広めていきました。


Bさん:うらやましいですねえ。


なかむら:サイボウズにもザツダンという1on1の慣習がありまして。毎週30分上司と話をするんです。ザツダンなので、仕事以外の話をするというのがすごく大事で。特にリモートワークだとオフィスと違って、「なんでこれが決まったのか」といった背景がよくわからないケースがあるんですね。全部伝えきれないといいますか。

あと、オフィスでは立ち話というか、「他の会社はあんなことやっているよ」とか、「いまこんなの流行っているね」といった会話からいろんな話が生まれたり、コミュニケーションが生まれたりしますが、リモートワークの場合、仕事とは直接関係のない会話がしづらい。その結果、仕事の話しか話せないから寂しい、満たされない、みたいのが出てきます。

なので、1on1では、背景を深く知り、全体感を把握する「背景情報の共有」や、新しい知を生み出す、情報の活発な相互作用である「生成的な情報共有」あたりの話をする場を作ることが大事なんだろうなと思って、ザツダンの場でやっています。


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Aさん:弊社の 1on1では、「業務ミーティングではない」と明確にしています。メンバーの成長のための30分なので「指導する場ではない」と上司側に説明して。でも、現実には毎週ずっととなると苦しくなってきちゃう。部下側も目の前の仕事のほうが楽になって、業務ミーティングで済ましちゃっているっていうところもね。


なかむら:ああ、なるほど。前提条件として伝えてあるのはすごく大事ですね。


Aさん:ただ「業務ミーティングではない」と言えば言うほど、上司側からは「難しい」って言われます(笑)。そういった上司からの課題には、「上司であるあなたから先に自己開示してください」とアドバイスしています。メンバーの自己開示なんか待つなと。メンバーの立場になってください、自己開示しない人に自己開示なんてします? ということですね。

「課長にもこんなところもあるんだ」とわかると、メンバーも話しやすいですよね。まあ、それでも難しいっていう上司が多いですが(笑)


Bさん:そうなんですよね。うちでも自己開示用シートを作って配ってはいますが、実際は......(笑)


Cさん:わたしは、「月曜日の朝に雑談」っていいなと思っていて。土日って、どこに行ったとか、テレビを観てこう感じたとか、会社以外の「会話のきっかけ」が割とあるので。うまくいっている人であれば10分ぐらい話したら、じゃあ今週も頑張ろうね、でいいと思うんです。何か悩んでいる?という場合は、じゃあ別で話そうと。

もう1つ、「自己開示」と改まって言うと難しいので、「この年で、映画見ながら泣いてしまったよ」といった話を上司がポロッと言う、みたいな。そうすると、「上司も人間なんだな」っていう感じがするのかなって。


Aさん:部下一人ひとりによっても、状況が変わるじゃないですか。1on1では、変幻自在な対応力が上司に求められるのは間違いないので、1回か2回研修受けて「できるようになりました」ではなく、トレーニングを継続しないといけないと思うんですよね。

1on1なんかしなくたって、社員がおたがいに助け合って、コミュニケーションしあう、そんな企業文化・風土がある会社さんもあると思います。でも、まだそういう会社は少ないと思うので、社員のエンゲージメントを高めるためには、1on1のような仕組みが必要だと思います。


まとめ

ウェルビーイングを皮切りに、関係性構築のための各社の1on1施策の悩みが吐露され、参加者同士で情報共有し合う時間となりました。自分の「ウェルビーイングとは何か」を言語化できている人はまだ少ないと思いますし、言語化するには、それをじっくり考える時間も必要です。そうした時間を同僚や社内でつくることから始まるという話は、取っ掛かりのヒントともなりそうです。

チームワーク総研では、今後も「チームワークMeetup」をはじめ、参加者皆さんが意見交換できるイベントを開催します。自分自身のちょっとしたもやもやを共有しつつ、他社事例を聞く機会としてご活用いただければ嬉しいです。

次回は6月24日「ミドルシニア←→Z世代 世代間ギャップの埋め方」をテーマに開催します。ご興味ある方、 ぜひお話いたしましょう!

著者プロフィール

三宅 雪子

チームワーク総研研究員・編集員。組織におけるチームワークを探求。働く人の強み・魅力を引き出し、人と人との関わりをチームの生産性へつなぐ道すじを探る。