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成果を出すチームとは(12)──ビジネスとは"競争"か、それとも"共創"か

軍事用語から生まれたビジネス用語

ビジネス用語は、元々軍事用語であった言葉で溢れている。
「戦略」や「戦術」「ターゲット」「キャンペーン」など、どれも元々は軍事用語である。 さらに、マス広告によるセールスを「空中戦」、リアルでのセールスを「地上戦」と呼び、営業に関する部署を「営業部隊」と呼ぶなど、私たちが何げなく日常的に使っている言葉にもたくさんの軍事用語がある。

最近の言葉でいうと、VUCA(未来への予測が難しいということを表す頭字語)という言葉も、1990年代以降の国を中心とした戦いではない予測不能な思想グループとの戦いを示す言葉として使われていた軍事用語である。では、ビジネスとは企業同士が顧客を奪い合い、シェアを獲得し合う戦い(競争)であるのか。今回は、昨今のビジネス環境における変化と会社のあり方について考えてみたい。

2つの大きな共通点

なぜビジネス用語に軍事用語があふれているのか。さまざまな考えがあるが、大きな理由はこの2つに共通点があるからである。それは、「生き残る」ということである。

軍事的な戦いは言わずもがなであるが、ビジネス社会も熾烈な生き残りをかけた戦いである。会社の生存率は、中小企業白書(2016年)によると設立1年で95%、3年で88%、5年で82%と言われおり、5年で2割近くの会社が無くなっている。(図1)

つまり、会社は軍事的な争いに勝利し生き残ることと同様に、世の中に存在し続けるために、事業や組織の戦略を描き、具体的な実行のための戦術を考え、実際に戦闘(行動)をしているのである。

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会社が生き残ることは正義か否か

筆者は経営コンサルタント時代に「会社はつぶしてはならない」と教えられた。会社が無くなると社員が路頭に迷い、その家族が不幸に見舞われる。さらに取引先や関係会社も直接、間接で被害を受けるためである。つまり、経営には社会的な責任がある。

この考えは、組織コンサルタントとして活動する今でも非常に大切にしており、私自身の経営に向き合う覚悟でもある。しかし、生き残ること自体が会社の目的であるかというと、もちろんそうではない。会社が存在し続けるということは、その会社に社会的な意義があり、社会に求められているということである。逆に言えば、存在価値を失った会社(世の中から求められていない会社)は、社会から撤退をしなければならない。昨今は、売上や利益を上げるためのさまざまな不祥事や、不正な会計処理による経営数字の改ざんが頻発している。生き残ることや自社の利益だけを考えた競争には、マイナスな側面が隠れているのである。

最大の判断基準はどこにあるか

なぜ、競争にはマイナスな側面が存在するのか。それは、競争に目を向けすぎると組織の存在する目的が、生き残るために売り上げ・利益を上げ続けることや、シェアを獲ることなど「勝つこと」に 終始してしまうからである。その結果、組織の中での判断基準が全てそこに集中し、勝つことばかりを考えた意思決定が行われてしまう。結果、勝つためなら何をやっても良いという雰囲気が醸成され、その考えに傾倒できない人は、批判やマイナス評価の対象となる。

こうして、企業の中で不正や起こり、隠され、不祥事へとつながってしまう。もちろん、売上や利益を上げ続けていくことは企業の活動にとって重要なことである。しかし、組織の目的や目指すべき判断の軸が、そうした数字によってだけになる場合には注意が必要である。

存在意義の追求とその難しさ

では、会社は何を目的に活動していけば良いのか。それは、各社それぞれが持つ組織としての「パーパス(存在意義)」である。分かりやすく言えば、組織が何のために存在しているか(社会にどんな価値を提供するか)ということであり、目指し続ける理想である。そして、その到達点としてのビジョンがあり、具体的な行うこととしてのミッション、行動の指針であるバリューへとつながっていく。(図2)

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従来までは、組織全体としてパーパスを意識することはあまりなかった。もちろん、「三方よし」のように、企業と顧客、社会が共に幸せになるためにどのように事業活動を行っていくべきか、ということを経営理念や指針として掲げてきた企業は少なくない。しかし、株主資本主義のように株主を最優先する経営が主流だった時代に、企業のパーパスを明確にし、会社全体へ浸透し、組織内での判断基準として機能してきたかというと、そうではない。

これは、不正や不祥事が起こる会社の中にパーパスやそれに類するものが存在していることを考えると明らかであり、単に掲げられていることと、判断基準として使われているかどうかは全く別物なのである。

パーパスによってつながる、人・組織・社会

近年の世界的な気候変動や人口動態、デジタル技術の発展など、さまざまな要因からビジネスの環境が大きく変化してきている。その結果、自社だけの努力では事業が立ち行かなくなり、関わる幅広いステークホルダー(利害関係者)との協力関係の構築が必要になってきている。また、企業の人材採用においても、「共感」が重要となり、企業規模や扱う商品だけでは、求職者から選ばれ続ける企業になるのは難しい。

そんな中、必要になっているのがパーパスである。パーパスには、多様な価値観の人々や幅広い活動をしているステークホルダーを一つにし、多くの視点や技術を掛け合わせる力がある。たとえ異業種であったとしても、パーパスへの共感があれば、共に新しい取り組みを行うことができる。最近では、温泉施設と蔵元のコラボや、飲食業界とタクシー業界のコラボ、メガネブランドと美容室のコラボなど、業種を超えたさまざまな共創が生まれている。

理想が合わさると競争が共創に変わる

パーパスにはなぜ人や組織、社会をつなぐ力があるのか。 そこには、2つの原則が関係している、1つは「人は理想に向かって行動する」ということ、もう一つが「共通の理想を持つことによってチームが成立する」ということである。 私たちは一人ひとりがさまざまな目指す理想を持っており、そこに向って日々行動をしている。

この理想は、個々が持っている状態ではそれぞれの欲望や願望でしかない。しかし、同じ理想を持つ者同士がつながりあうことで、人々は同じ理想を目指すチームになることができる。 (図3)

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会社全体で共感される理想があれば、一体感のあるチームとして、理想実現に向けて協力し合うことができる、それが社会全体へと広がっていけば、会社を越えたさらに大きなチームを創ることができる。こうして、多くの理想が合わさっていくことで、これまで競争だった関係が共創へと変わっていく

理想の共有によって変わる社会

最近、春秋戦国時代末期における、戦国七雄の争乱を背景とした漫画『キングダム』を読んだ。もちろんこの漫画は過去の戦いの歴史を元にしており、競争の物語である。しかし、ここにはその時代を生きる一人ひとりの理想やチーム、組織の理想が描かれ、その共有・共感による人と人、チームとチーム、組織と組織のつながりの力が素晴らしく表現されている。

戦争などの争いが、正しいことであるとは言えないが、単に物事を良しあしで判断せず、その背景やどんな理想のぶつかり合いによって争いが生まれるのかを考えることでつながりを模索することはできる。国同士や社会全体での議論は非常に難しく、理想を共にすることは簡単なことではないかもしれない。しかし、まずは小さくとも、チームのメンバーや組織のステークホルダーと目指す理想を語り合うことで、打ち負かすための競争の社会から、幸せな社会を創りだすための共創の社会へと変わっていけるのではないだろうか。

※この記事は、日刊工業新聞の連載記事になります。


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著者プロフィール

新島 泰久也

「人と組織の発達を支援する」が信条。元経営コンサルタントとしての経営目線と、サイボウズの「チームワークメソッド」を織り交ぜ、「チームワーク経営(チームの生産性とメンバーの幸福が両立する経営)」の実現を目指す。 Coloring Lab.代表。一般財団法人 日本アロマ療法創造機構 専務理事。