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「メンバーがよい状態だと、チームもうまくいく」サイボウズ流1on1「ザツダン」活用法──チームワーク総研所長 和田武訓

サイボウズには、「ザツダン」という1on1ミーティングに近い取り組みがあります。制度ではないため強制ではないものの、多くのマネジャーが行っています。

主な目的は「コミュニケーション量をふやして相手をよく知り、よい関係性を築くこと」です。気軽に自由なテーマで話しています。

この記事では、マネジャーが"ザツダン"をどのように活用しているのか、チームワーク総研所長 和田武訓の事例をご紹介します。

気負わず話せる場としてのザツダン

チームワーク総研:いま、メンバーとのザツダンは、1週間に何回ぐらいやっているんですか?

和田:11、12回でしょうか。ザツダンしているメンバーは14人いて、頻度はさまざまですが、毎週1回行うメンバーが多いですね。1人1回30分行っています。


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和田武訓(わだ たけのり)サイボウズチームワーク総研 所長。早稲田大学理工学部卒業後、サイボウズに入社。一度転職し、再入社。転職経験の中で、自分が働く上で大事にしているのがチームワークやコミュニケーションだと気づく。ITツールを活用した組織づくりのセミナーや研修を通して、変化に強い、自律的な組織に変革したいお客様に伴走している。2022年8月にチームワーク総研 所長に就任

チームワーク総研:単純計算で、年間500回を超えますね。そもそも、メンバーと定期的にザツダンをしようと思ったのはなぜですか?

和田:2018年にチームワーク総研ができて、メンバーのマネジメントをするようになったんですが、普段から「何かあったらいつでもザツダンの予定を入れてくださいね」というスタンスでした。

でも、メンバー側からすると「入れにくい時もあるかな?」と思って。逆に、僕から予定を入れると「急に何だろう?」と構えてしまい、なんだかんだとハードルがあるかもしれない。

そこで、定期的に話せる場を事前に設定しておいたら「話をしやすいかな」と。


チームワーク総研:ザツダンではどんな話をするんでしょうか?

和田:基本的には、メンバーが話したいことですね。

業務の相談を受けるときもありますし、体調を含めたコンディションや、働き方のいろいろ、チーム内外の人間関係などについて話すことが多いです。直接、業務に関係がない、たわいのない話もたくさんします。


気になるのは「その人らしいリズムで働けているか」

チームワーク総研:和田さんにとって、ザツダンを「こんな時間にしたい」というのはあるんですか?

和田:メンバーの「変化」を、気づけるなら気づきたい、という感じですかね。毎週定期的に予定を入れていますが、いつもは自ら話してくるタイプの人なのに、急に「今日、話したいことは無いです」みたいな感じだと、「ん?」と。

また、話し始める時の、「お疲れさまです」みたいなの、あるじゃないですか。そこから既に、なんとなく感じるものがあるんです。それで、「最近タスク詰まってます?」とか、「何かありました?」とか、想像するわけです。

変化に気づきたいので、メンバーの表情を見て、直接話すことを大切にしています。


チームワーク総研:言葉ではない情報からも、相手を知るわけですね。

和田メンバーの「リズムが崩れていないか」が、僕が一番気になるところです。健康で、リズムが安定して働ける状態っていうのが理想だと思っているんです。なので、その人の一定のリズムで仕事ができていれば、何も問題はないですね。


チームワーク総研:「ん?」と感じた時はどうするんですか。

和田:ザツダンの場で無理に解決しようとはしません。会議など別の機会に気にしたり、グループウェア上のさまざまな書き込みやコメントをみたりしながら対応を考えます。もし次のザツダンでいつもの感じに戻っていたら、「一週間で落ち着いたんだな」となる。



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観察で、いま必要なフォローをさぐる

チームワーク総研:和田さんにとって、ザツダンは観察の場ということですか?

和田:そうですね。観察しているかもしれないですね。1週間に1度というタイミングも、把握するのにいいペースなのかもしれません。

僕、毎朝レモン水飲むんですよ。飲んだ時のからだへの入り方っていうのかな、いつもとの違いで、「いま、疲れているのかな」とか見ているところがあって。それといっしょです(笑)

健康管理じゃないですけど、その人が安定したリズムで働けていないというのは、どこか調子が悪いということ。その結果、どこかでミスをしたり、コミュニケーションで揉めたりしてしまいます。そうすると、チーム全体としてのアウトプットに影響が出てくるわけです。


チームワーク総研:個人の状態が、チームの仕事面に影響するわけですね。

和田:たとえば、家族と喧嘩をして気持ちが安定していなかったら、仕事に影響が出るってあるあるだと思うんですよ。子どもが学校で何かあって、「さあどうする?」みたいなこととか。

逆に、一人ひとりが安定して雰囲気がよければ結果もよいことが多いです。

あくまで僕なりの経験則ですが、背景を知ることで、より気をつけてフォローしたい感じですね。だから、本当に雑談だけで「アハハハ!」で終わったとしても、それでいいんです。「今日も良好ですね!」と(笑)


チームワーク総研:メンバーの中には、いろいろな人がいると思うんですよ。その中で、心を開くといったら大げさかもしれませんが、なかなかそこまで行かずに......というパターンもありますか。

和田:もちろんあります。ザツダンをはじめた頃は特に、ぎこちなさを感じる時はありましたね。僕より年上の人だっていますし、いろいろな関係性がある。

相手の人のことをまだよく分かっていない時は、「どんなところでツボにはいる人なのか」とか、「一線を超えてはいけないラインはどこか」とか、話しながら人それぞれ距離感を測っていくんです。


チームワーク総研:なかなか高度なスキルが必要なんじゃないですか?

和田:いえいえ! 本当に何でも話していいし、「気楽にやりましょう」みたいな感じですよ。関係もすぐにできる訳ではないです。人によっては年単位とか、結構じっくりです。


チームワーク総研:一般的な1on1ミーティングでは、部下の成長支援を目的にするケースが多いと思います。その点はどうしていますか。

和田:定期的なザツダンとは場を分けていますね。毎週そういう話になると思うと、メンバーがしんどいかもしれない。

社内での新しい役割や担当の相談、もっとどうなると良さそうか、といった成長支援は、業務の振り返りのタイミングや、来期にむけての給与面談の場などで話しています。もちろんメンバーが望めば、ザツダンの場で話し合うこともあります。

ある程度の期間ザツダンを続けていると、メンバーの成長によって、チームでの役割が変化することがあります。そうすると、そのメンバーが普段関わる人間も変わってくる。場合によっては、1on1on1といいますか、あの人もザツダンに呼んでいっしょに話すといいなということも出てきます。

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一人ひとりとのザツダンが、チーム全体の未来につながる

チームワーク総研:個人だけを見ているわけではないのですね。

和田チーム全体のバランスも見ています。うまくいっていると思っていたメンバーに、ザツダンで話を聞くと「そうではないらしい?」となることがある。

単純に進め方の問題なのか、もっと根本の、その人たちの癖みたいなところが合っていないのか。テーマによって相性がハマるかも違ってきます。そういう時の調整といいますか、必要に応じて動くきっかけにもなります。


チームワーク総研:マネジメントですね。

和田:それをマネジメントかって言われると、そういう目的意識ではあんまりやってないです。何でしょうね、朝顔の観察をしているのと同じ感覚(笑)


チームワーク総研:毎週、メンバー一人ひとりを観察して様子をつかむって、結構疲れませんか?疲れた時はどうしているのでしょう。

和田:僕より5歳10歳年上の人も多いですし、僕の話も聞いてくれるんです。マネジャーとメンバーの関係ではあるけど、人生でいうと先輩と後輩の関係になる。ひとりの人として「悩みあったら言ってもいいんだよ」とか、「最近大変そうですね」みたいな。そこは本当に感謝しています。


チームワーク総研:「マネジャーはこうあらねば」みたいなのは無いんですか? 「リーダーは甘えちゃいけない」といった類の。

和田:僕の言うことを聞いてもらおうとか、管理しようみたいな気持ちはないですね。もともと「言っても聞いてくれないし」ぐらいに思っているので(笑)。逆に、「○○さんならどう思いますか?」って聞いたりします。

あとは、業務の話ももちろんしますけど、そればかりになるとどうしても、メンバー側にとっては「管理されている感」が出てきます。そうならないようには気をつけていますね。


チームワーク総研:どんなところに気をつけているんですか?

和田:もしですが、僕が業務寄りの1on1をやるんだったら、報告ではなくて相談の時間を多くしたいです。報告は終わったこと、相談は未来の話だと思うので、終わったことに時間をかけて説明してもらうよりは、「次どうする?」っていう話をしたほうが、明るいですし。

1on1というのも、いろいろな目的があると思うんですけど、多分、それぞれのマネジャーの方に合うスタイルがあると思うんですよ。僕の場合は、観察寄りにしておいた方が合っているんだと思っています。


チームワーク総研:目的は、マネジャーごとにあっていいんじゃないかってことですね。

和田:そう思いますね。僕の場合は「観察」ですが、マネジャーのみなさんそれぞれが1on1の目的を持ってされるのがいいと思いますし、そうされているのではないでしょうか。


チームワーク総研:逆に、メンバーにとっては、どんな時間だったら嬉しいですか。

和田相談したいことや聞いてもらいたいことを「ちゃんと話せる時間」でしょうか。メンバーが、自分の気持ちを話せる時間であり、その相手であると思ってくれていたらうれしいですね。

実際にはメンバー一人ひとりが、その人にとってのザツダンの意味を見出しているんじゃないかと想像します。


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チームワーク総研:いまのようなザツダンをしていなかったら、総研はどんなチームになっていたと思いますか?

和田:想像でしかありませんが、一人ひとりのメンバーと距離感が出ちゃう気がしますね。壁ができるというか。そうすると、チームの中のよどみを見つけられなくなって、誰かが怪我をしてから対応する、みたいな形になりかねません。

少なくとも、メンバーが困った時であっても、すぐの相談はされなくなるかもしれませんね。あとは、「この人、ふだん何をやっているんだろう」というふうに、僕自身が見られるようになるかもしれません。和田が何を考えているのかも、分かりにくくなってくるのかもしれない。


チームワーク総研:ミステリアスな感じがするかもしれませんね。

和田:他には、ザツダンで業務の話もしますから、それが無いとなると「やったことをちゃんと見てくれているのかな」「ちゃんと届いているかな」といった、不安感や不信感みたいなものが、ポコポコ生まれてきそうな感じがしますね。

それは組織の状態として、やっぱり良くないんじゃないかと。全員と距離ができると、僕自身も不安になりそうです。


チームワーク総研:さまざまな影響がありそうですね。

逆にザツダンがあることによって、チームワーク総研がどんなチームになっていくと嬉しいですか。

和田:ザツダンは、マネジャーとメンバーといったタテの関係だけではなく、同僚同士のヨコの関係でも誰とでもできることがよい点です。

ザツダンをすることによって、相手のことを想像できるようになっていきます。結果として、アイコンタクトで仕事ができる、1つひとつ言わなくても分かりあえて明日が回っていくような。そんな感じがいいですよ。

いろんなメンバーがお互いを知って、みんながいい距離感をつかんでいる。そういう状態がいいですね。

僕は学生時代サッカーをやっていたんですけど、ボールが外に出て試合が止まった時とかに、何人かで「こうしよう」と話すことがある。まとまった休憩時間の話ではなくて、常に状況が動いている中で、その時その時の細かいチューニングをするんです。そのイメージがザツダンに近い。

チューニングのために、コミュニケーションの接点は増やしておきたい。ザツダンはそのきっかけになるんじゃないかと思っています。



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著者プロフィール

三宅 雪子

チームワーク総研研究員・編集員。組織におけるチームワークを探求。働く人の強み・魅力を引き出し、人と人との関わりをチームの生産性へつなぐ道すじを探る。