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「わかり合いたい」だけで大丈夫。ベテラン世代の世代間ギャップ──シニアコンサルタント 松川隆

ベテラン世代や人事担当者の、最近の悩みのタネ「世代間ギャップ」。前回の記事では、その世代間ギャップが生まれる背景や、解消することで組織にもたらす効果について、サイボウズ チームワーク総研シニアコンサルタント松川隆に聞きました。

世代間ギャップを解消するには、「まずは話し合う」こと。言葉にするとシンプルですが、「この『まずは話し合おう』が難しいんですよね......」と松川は言います。自らも若手とのコミュニケーションで「炎上」体験を持つ松川は、どうやって若手社員と話し合い、わかり合おうとしてきたのでしょうか? また、ほかの企業ではどう実践しているのでしょうか? 後編では、世代間ギャップを解消するためのアプローチについて聞きました。

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松川隆(まつかわ・たかし) サイボウズ株式会社チームワーク総研シニアコンサルタント。人事部経験を活かし、さまざまな組織の風土改革や社員の意識改革を支援している。自らの意識変革「おじさんの苦悩」を題材にしたセミナーが好評。金融、広告、自らの起業など多様な業界経験をもつ。

「話してみる」がこれほどまでに難しい?

チームワーク総研前回の「世代間ギャップ」をテーマにお話を伺う中で、「関係の質」というキーワードが出ました。「関係の質」を高めるために、まずはたわいもない会話でもいいので若手社員と話してみよう、そのための時間を意識的につくってみよう、ということですね?

松川:そうですね、言葉にするとそうなりますね。ただ、その「話してみよう」が難しいんですよね。

僕も研修や講演を通じて「話してみましょうよ」とメッセージを送っているつもりですが、受ける人の立場になって考えてみると、研修が終わって職場に戻ると待っているのは「いつもの空気」なわけです。

その中で「たわいのない話でもしましょうよ」と言ったところで「は? 何言ってんの」となってしまう。


チームワーク総研:「いつもの空気」に気圧されてしまって、なかなか行動に移せない。

松川:以前に、こんなことがありました。ある企業で、約2,500人のミドルマネジメント層を対象とした研修を、数回に分けて実施しました。

その数か月後に、同じ受講者を対象に、フォローアップを兼ねてちょっとした「おしゃべりの場」を設けてみました。「研修の後、それぞれ現場に戻って実践してみたこと、気づいたことをシェアしてみましょう」という程度のゆるーい、座談会的な企画です。

ところが、呼びかけてみたらトータルで30人くらいしか集まらなかった。


チームワーク総研:え......1パーセントちょっと?

松川:1パーセントちょっと。


チームワーク総研:企画した側としては、ショックですね。

松川:うーん、その時はショックでした(笑)。でも、今振り返ると「そうかもしれないよな」って思っています。

おそらく、目的のない、上下関係もよくわからない、ゆるーいおしゃべりの場、というものにとまどったんでしょうね。普段の仕事で「アジェンダは?」「今日のゴールは?」という会議に慣れ過ぎていて。


チームワーク総研:目的や役割がはっきりしていないと、何を話したらいいのかわからない。

松川:そう。たとえるなら、僕、学生時代はバリバリの体育会テニス部にいたのですが、その時はテニスサークルのフラットな、和気あいあいとした雰囲気がちょっと苦手だった(笑)。それだけ、「アジェンダ会議」に慣れている人にとっては「なんでも話していいんですよ」というおしゃべりの場、というのが「異文化」に映って、居心地が悪かったと思うんですよね。


掲示板の書き込みで「大炎上」した過去

チームワーク総研:「まずは話し合おう」と、言葉にすると簡単なことですが、なかなか高いハードルですね......。

そう、難しいんですよ。リモートの座談会でミュート解除することすら難しい。こちらは「いや、ボタン1つですよね?」と思っていても、これまでの「いつもの空気」があるから。

僕も研修講師の経験を重ねるうちに、だんだんと受講者の方の「心の声」が聞こえるようになってきた気がします。「『話してみよう』と言われても、ウチの会社じゃね......」とか「どうやって時間を確保したらいいかわからないんだよね......」とか。

難しいけど、自分も相手もお互いに尊重する、その先にどういう世界があるのか、っていうことを体感すれば、自ずと変わってくるはずだ。そう思いながら研修を行っていますね。


チームワーク総研:そんな松川さんご自身は、どうやって「話してみよう」と一歩を踏み出せたのですか?

松川サイボウズに来てからは、それはもう失敗ばかりでしたよ(笑)

人事部門の研修担当だった時に、新人研修での受講態度がちょっと気になって、社内の掲示板に「君たち、もっとちゃんとやったほうがいいんじゃない? 研修の時間なんだから」的なことを書き込んでみた。そしたら、受講者の一人から「いや、それはおかしくないですか?」と反論のコメントが書き込まれて、そっちに大量の「いいね!」がついたんです。



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チームワーク総研:わかりやすく炎上してしまいましたね(笑)

松川:その時は腹の中で「コノヤロー!」と思った(笑)。だけど、相手の言っていることがなまじ正論だから何も言えない。でも、「おじさん」の体育会的な考えでは「物事にはイエスとノーの間の"三遊間"みたいなものがあるだろ!」と言いたい。それもまた、見る人によっては正しい。


チームワーク総研:どちらも正義。明確に判定が出ないだけに、モヤつきますね。

松川:すごくモヤつきました(笑)。その後も、いろんな仕事の場面で、たびたび若手社員と衝突しては炎上して、を繰り返していましたね。僕も簡単には引けない性分なので。周りからも「松川さん、やるねー」なんて言われたりして。


「松川さん、変わりましたね」と言われた日

チームワーク総研:すっかり、社内の炎上キャラに......。

松川:でも、内心「コノヤロー!」と思いながらも、「アイツ、なんであんなふうに言ってくるんだろう?」って理解しようとしていたのかな。言葉のチョイスを変えてみたり、発言のタイミングを一歩遅らせたり。自分では気づかない微妙なコミュニケーションの変化があったのかもしれません。

というのは、ある時、若いメンバーと飲んでいる時に「松川さん、最近変わりましたね」って言われたんです。「もちろんいい意味で、ですよ」って。


チームワーク総研:まさかの、"敵"から褒められた。

松川:「以前は自分の『~すべき』を押し付けていたけど、いまはまず相手の『~したい』を聞いてくれますよね」なんて言われて。自分では変化に気づいていなかったけど、周りから見ると「すごく変わった」というくらいの変化があったんでしょうね。しかも、それを伝えてくれたことが嬉しくて。気持ちがすごく楽になりましたね。


チームワーク総研:世代間ギャップの壁が崩れた瞬間ですね。

松川:まさにそう。自分の前に築いていた壁は一切なくなって、「晴れた......」という感覚。同時に「しまった、壁をつくっていたのはオレのほうだったんだ」と気づけたんです。

今こうしてベテラン世代や人事担当の方々に向けた研修や講演ができているのも、その「松川さん、変わりましたね」の一言があったからなんですよね。「若いヤツは何もわかっていない」ではなく、「いや、何もわかっていないのはおじさんのほうだよね。ゴメンね......」と、堂々と"ボケられる"ようになったんです。


「大丈夫」という感覚が大事

チームワーク総研:松川さんのように、自分と若手世代とを隔てている壁が取り払われるような体験を、世代間ギャップに悩むベテラン世代の皆さんが実践するにはどうすればよいでしょうか?

松川:そうですよね。しかも、できることなら僕みたいに炎上しないようにね(笑)

自分の体験から思うのは、「大丈夫」という感覚。「オレは大丈夫だ」って安心感を持てることが、行動を起こす上では大事だと思うんです。


チームワーク総研:大丈夫、ですか?

松川:逆に「大丈夫じゃない」状態をイメージしてみましょう。昨今は「ダイバーシティ&インクルージョン」だ、「多様性の時代」だと言われていて、世のおじさんたちは「多様性だぞ、気をつけろよ」「個性を尊重するんだぞ」と耳タコで言われている。

そのことでがんじがらめになっちゃって、「オレがこんなこと言ったら相手はどう思うかな?」「パワハラだ、モラハラだって言われちゃうんじゃないかな?」と、もう不安で仕方がない。これが「大丈夫じゃない」状態。


チームワーク総研:若手社員の前に地雷がたくさん埋まっているように見えて、どう足を踏み入れたらいいかわからない。

松川:そこを、「いや、地雷なんて埋まっていませんよ」「安全ですから、話しかけてみてくださいね」と言ってあげる。これが「大丈夫」ということです。いわば、「おじさんにとっての心理的安全性」かな。


チームワーク総研:若手にとっての「心理的安全性」も大事ですが、おじさんにとっての「心理的安全性」も大事だと。

松川:そうなんです。そのためには、まずおじさんの側が、率先して「ゴメン! 地雷がどこに埋まっているかわからなくて......」「ハラスメント研修も受けているし、頑張ってはいるんだけど、踏んじゃうかもしれない。その時は教えてね」って表明する。

そして、部下のほうも「大丈夫です。踏みそうになったら『それ地雷です』と伝えますから」と言ってあげる。そのように、お互いの心理的安全性を確保することによって「大丈夫」の空気が醸成されていくと思うんです。


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勇気ある「ムダ話」で社員の「顔」が見えるようになった

チームワーク総研:そう考えると、目的のない、たわいもないムダ話が、「大丈夫」の空気をつくるためにいかに必要かがわかりますね。

松川:そうなんですよ! 「アジェンダ」や「ゴール」なんてなくていい。ただ「話した」だけ。「あなたのことがわかった」だけ。それでいいんですよね。

こういう例があります。サイボウズに2週間のインターンに来ていたあるメーカーの社員が、自社に戻ってから、会社のチャットツールを使って仕事とぜんぜん関係ない話題をつぶやいてみた。誰でも知っている、日本を代表する大企業ですよ。


チームワーク総研:ガチガチの大企業の中で、勇気を出して「ムダ話」をチャットに公開した。

松川:そしたら、「なんか面白そうだね」と、彼らに続いて「ムダ話」をつぶやく社員が一人、また一人と増えていった。そのうち、ある部長が乗っかって、「今日の刺さった一言」と、ポエムみたいなつぶやきを。


チームワーク総研:部長ポエム(笑)

松川:そう、部長ポエム(笑)。で、「何かあったんですか?」と別の部長がツッコんで、「いや、元気ですよ」「そうですか。寂しいのかな、と思って......」というほのぼのしたやり取りが続いて、若手社員から「部長たち、仲よくて草」みたいなコメントが入るという(笑)


チームワーク総研:面白いですね! でも、これも「大丈夫」のきっかけをつくった一例ですね。

松川:この勇気ある「ムダ話」がきっかけで、それまでリモートワークでまったく見えなかった社員どうしの「顔」が見えるようになったそうです。

そう考えると、「成功の循環モデル」のグッドサイクルって本当に言いえて妙だなって思うけど、その一つ手前には「いま、手を止める勇気」があるんでしょうね。仕事の手を止めて、ムダ話をしてみる勇気。

たとえば最近、「1on1ミーティング」が流行っていますよね。でも、気づいたら「仕事の進捗は?」「最近困ったことはない?」とか、ぜんぶ仕事の話聞いてしまいがちになる。


チームワーク総研:取り調べみたいになっちゃって。部下も緊張しますよね。

松川:そこをぐっと我慢して、「先週の運動会、お子さんどうだった?」「見た? 昨日のサッカー」と、仕事の話を一切せずに終わる。それでいいんですよ。「ただ、あなたのことを知る時間」でいいんですよね。

そのように、わざわざ時間を確保しようとしなくても、1on1、チャットツール、あるいは昼食の時間などチャンスはあちこちに転がっているんですよね。そのチャンスを活かして、まずは「仕事じゃない話」をしてみる。それが、グッドサイクルを回すためには必要なのかもしれませんね。


まずは自分が「わかり合いたい」と口にしよう

チームワーク総研:ここまで、「世代間ギャップ」についていろいろお話を伺ってきました。最後に、世代間ギャップに悩んでいるベテラン世代の読者の方が「大丈夫」と思えるようなメッセージを頂けますか?

松川:僕自身も、現在進行形で悩んでいるので、自分自身へのメッセージだと思って言いますね(笑)

縁あってこの記事をここまで読んでくれている方は、おそらくその時点で職場の「世代間ギャップ」、ひいては「世代間」にかぎらない「ギャップ」をどうにかしたい、わかり合いたいと思っているわけですよね。その「わかり合いたい」思い自体はめちゃくちゃ"尊い"ことじゃないですか。


チームワーク総研:めちゃくちゃ"尊い"ですよね!

松川:だから、その時点で「大丈夫」だと思うんです。大半の人が気づいていないことに気づいていて、「わかり合いたい」と思っているんだから。その時点でファーストステージをクリアしているようなものです。

だから、セカンドステージではその「わかり合いたい」という思いを声に出してみる、伝えてみる、ということではないでしょうか。「わかり合いたいんです」と言って怒る人はまずいないので。


チームワーク総研:まずは、ためらわずに「わかり合いたいんです」と言ってみる。

松川:ただ、その時に気をつけなければいけないのは「わからせてやろう」、つまり他人を変えようとしないこと。「まず、自分自身が変わろう」ですね。

他人は絶対に変えられません。相手をコントロールしよう、変えよう、という意識を捨てること。僕もかつてそれで「炎上」していますから。

講演をさせていただくと、「いや~、ウチのおじさん達にも松川さんの話、聞かせてやりたいですよ」「アイツ、なんとかさせたくて......」などと言われることがあります。その時は「わかり合いたい、と思っているのはあなたですよね? だから、あなたがやるんですよ」と伝えています。


チームワーク総研:あくまで変わらなければいけないのは「自分」なんですね。

松川:自分が変わろうとすることは面倒だし、勇気もいるけど、その結果として世代間ギャップがなくなれば、チームの「関係の質」が高まり、協力的になって、仕事も楽しくなる。いいことが待っているんです。

だから、まずは「わかり合いたいんだよね」と照れずに言ってみる。パソコンのキーを叩く手を止めてみる。それが「自分が変わる」第一歩ですね。


執筆:堀尾大悟 / 企画・編集:竹内義晴、三宅雪子(サイボウズ)


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著者プロフィール

三宅 雪子

チームワーク総研研究員・編集員。組織におけるチームワークを探求。働く人の強み・魅力を引き出し、人と人との関わりをチームの生産性へつなぐ道すじを探る。