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「45歳定年制」について、アラフィフのおじさん2人が本音を話してみた

45歳定年制」がまことしやかに叫ばれる中、「単なるリストラだろう」「45歳で転職できる人はごく少数」「給料を抑えたいだけ」といった声が多く聞かれます。一方で、45歳前後の方々にとっては、「この先、自分は大丈夫なのかな」と、戦々恐々とされた方も多いのではないでしょうか。

そこで、本人たちがまさに「当事者」である、サイボウズチームワーク総研 シニアコンサルタントの松川隆と、研究員の竹内義晴が、45歳定年制に対する「本音」を語り合いました。

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松川隆(まつかわ・たかし) サイボウズ株式会社チームワーク総研シニアコンサルタント。 人事部経験を活かし、様々な組織の風土改革や社員の意識改革を支援している。 金融、広告、自らの起業など多様な業界経験をもつ。

竹内:「45年定年制」が話題になりましたね。

松川:なりましたね。ボクらの世代にとっては他人ごとじゃないよね。竹内さんって、いくつでしたっけ? ボクは49歳だけど。

竹内:わたしは50歳ですね。45年定年制について、「定年」という言葉を使ったのはまずかったかもしれませんが、「引き際は自分で考えないと」という問題提起は、ドキッとしますよね。

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竹内義晴(たけうち・よしはる) チームワーク総研とサイボウズ式編集部の兼務。 新潟でNPO法人しごとのみらいを経営しながらサイボウズで複業。場所にとらわれない多様な働き方を実践している。

実は......50歳になったからってわけでもないんでしょうけど、わたしも最近、これからの身の振り方について考えることが増えました。「社内での、オレの役割って何かな?」と。

「オレが!オレが!」みたいに気合を入れてガツガツ前に出ていくのは、「なんか違うよな」って思うんです。本当は、若いみなさんが前向きに、楽しく仕事ができるような支援をしたい。でも、わたしは週2日複業社員という働き方もあって、マネージャーみたいな肩書があるわけではありません。それが直接的な仕事じゃないから、若いみなさんの支援をしても、業務の評価にはつながらないような気がして。

50代になると役職定年をむかえる人もいますけど、こういう悩みを抱えている人って、多いんじゃないかな? って思いますね。

松川:そうですよね。

竹内:いままでの価値観だったら、定年まで何ごともなく、温和に過ごすことができればOK、みたいなところがあったと思うんです。でも、人生100年時代「それも違うよなー」って思っていて。

「定年」が与える弊害

松川:定年がなければ、そこまで「区切り」を考えないけれど、定年があることで「会社に支配される」みたいな感じになることがありますよね。

定年になるまでは、右肩あがりの給与体系があって、「定年までは会社が守ってあげる」みたいな、一定の安心感はありますが、その代わりに「会社の決定には基本的には従います」みたいな感じというか。

最初から定年が無ければ、働き方やキャリアは自分で選択するんでしょうけど、定年になった瞬間に「あとは、自分で生きてくださいね」ってなる。「浮き輪はずして泳いでごらん?」みたいに言われる。でも、その経験がないから、「え? ちょっと初めてなんですけどソレ」「いや、溺れるんですけど」みたいな。

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竹内:全然安全じゃないですよね。少し前みたいに、もらった退職金で余生が生きられればいいんでしょうけど、いまはそうじゃないですもんね。

先日、10歳ぐらい年上の知り合いが、定年の話をしていたんですよ。いままでは、定年にそれほどリアリティを感じていなかったんですけど、親しい人たちが定年の話をしているのを聞いて、すごく自分ごとのように感じて。

松川:わかる。

竹内:知人の話を聞きながら「これからの長い人生、どう生きたらいいんだろう?」って思ったんですよね。サイボウズには定年がありませんが、「定年がないから安心」ってわけでもないなと思っていて。

松川:ほんと、そうですよね。

「緩やかな離陸」をするには?

松川:ボクは、3年前からほかの会社で複業をしています。「緩やかな離陸」みたいなことを身をもって試せているから、50歳になっても「こういう働き口はありそうだな」とか、イメージできるんですよね。でも、前職は銀行にいたんですけど、銀行にいたらイメージできなかったんじゃないかと思うんです。

というのも、前職の同僚の中には、出向している人も多いんです。でも、いままで銀行で培ってきた経験が、役に立つかどうかも分からない環境や役割で仕事することもあるようなんですよね。

そうすると、心の中には「本当に役に立っているのかな?」「やりがいのある仕事ができているのかな?」みたいなところがあるから、そこに向き合いはじめちゃうと、モヤモヤするし、苦しくなるみたいなんです。

その結果、「この程度の給料だったら、他にいいところがあるんじゃない?」と、心のモヤモヤをかき消せなくなっている同僚が、結構いるんですよ。

竹内:へぇー

松川:それならば、お金は多少減るかもしれないけれど、「実は、こういうの好きなんだよね」みたいな働き方もあるわけじゃないですか。

人生の中に「グラデーション」をつくる

竹内:でも、そういうふうになるためには、ある程度自分のやりたいことや、楽しいと思うことを知らないと難しいですよね。

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松川:しかも、ボクらの世代は、私生活も含めて会社にかなり捧げていますからね。

それなのに、急に「右肩上がりは無理です」「もう、みなさんのことを面倒みきれません」「自立してください」って世の中になっちゃったんです。つまり、働き方のルールが変わったって話じゃないですか。さっきまで立っていた地面に地殻変動が起きて、どうなるか分からないところに立たされそうになっているのと、同じだと思うんですよね。

竹内:つらいなぁ。

松川:この「変化している」という事実を理解した上で、これからのキャリアや人生を考えなければいけないんじゃないですかね。もちろん、自分だけじゃ考えられないんでしょうけど。

だから、会社側もいきなり100%から0%みたいにするんじゃなくて、複業を認めたりして、ゆるやかに、グラデーションをかけるような感じになっていくといいんでしょうね。

竹内:松川さんもわたしも、複業をしています。でも、わたしたちの場合は「運よく」というか、偶然、ほんと偶然、いまのような働き方ができたんじゃないかと思っていて。

というのも、複業が禁止の会社もあるわけじゃないですか。というより、そっちのほうがたぶん多い。

松川:そうですよね。

竹内:もし仮に、複業していなかった場合、「オレの今後のキャリア、どうすればいいのかな?」って、思うんです。いままで「これが正しい生き方」と信じていたものが、急に正しくなくなっちゃって、「え、いまから?」っていう。

これって、わたしたちの世代が抱える課題だと思うんですけど、どうすればいいんだろう?

「社会に出る」──会社にいたまま、できること

松川:ボクは、チームワークに関する講演をする機会が多いんですけど、いただいた感想に「社外の話を聞いたことがないので、大変勉強になりました」っていうのがとても多いんですよ。ボクも銀行員のとき、そうだったから分かるんです。「ほかの会社の話なんて、耳にしたことがない」と。

そういう意味では、まずは、外の空気を吸いに行く、触れに行くことが大事なんじゃないかと思います。本を読むとか、社外のワークショップに出てみるとか。そういうものなら、行こうと思ったら行けるじゃないですか。

いきなり「あなたも一歩踏み出しましょう」「あなたも複業やってみましょう」ではないと思うんですよね。それは、できる人とできない人がいるし、ペースはそれぞれなので。

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でも、外の世界を知ることなら、できると思います。地殻変動が起こっていることを知る意味もあるし、「俺、あそこ行ったら立てるわ」みたいな状況を、理解する意味もあります。

竹内:お話を聞いて、2つ質問したくなっちゃったんですけど、1つは、「社内でできることはないか?」。外に目を向けることで、自分の立ち位置は分かると思うんですけど、社内でできることはないんですかね? 社内で悶々としていていいのかな?

もう1つは、そういったベテラン世代がいる中で、「会社にできることはないの?」ってこと。

これまで話してきたような課題は、今後、いろんな会社で起きてくると思うんです。いや、もう起こっているかもしれません。しかも、日本の人口でいうと、団塊ジュニアであるわたしたちの世代が一番多い。そう考えた時に、会社としても、いまからできることを真剣に考えなくちゃいけないんじゃないかな。

それなのに、いま、多くの企業で行っているのは早期退職じゃないですか。「退職金を少し多めにしたので、早めに退職してくださいね。いままでありがとう。さようなら」みたいな「体のいいリストラ」は、ちょっと乱暴だと思うんです。会社としても、もうちょっとなにか、できることがあるんじゃないかなって。

松川:なんだろうなあ? ベテラン世代の人たちって、いろんな経験があるわけじゃないですか。これ、会社の資産なんだと思うんですよね。そこに着目したいなって思ったんです。たとえば、マニュアルに書いていないような専門的な技術とか、たまに起きるエラーに、「こんなふうに対処するといいよ」みたいな。そういう資産を継承する役割がありますよね。

あとは、企業の理念やカルチャーみたいなものって、いままで構成してきたメンバーの行動や想いで作られていると思うんですよね。そういったものが、チームの強さを作りだしていることもあるし、会社の業績に影響していることもある。

その、数値化されない「想い」みたいなものも、企業にとっては大切だから、ベテラン世代の人に語ってもらうとか、それを言語化して若い人たちに伝えるとか、そういうことって大切なんじゃないかな。

ベテラン世代が理由で「組織のアップデート」を止めない

竹内:今回は、45歳定年制の話をきっかけに、おじさん2人が、今後のベテラン世代について話してきました。松川さんは企業研修を行っていますけれど、今後、関わっていきたい方向って、どのあたりですか?

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松川:1つは、いままでさまざまな経験を重ねてきたのに、会社の中で元気がなくなっている人たちに、「まだ、全然いけるよ」っていうことを伝えていきたいんですよね。「会社の役に立つ」という意味でもそうだし、「あなたの人生」という意味でも、元気を与えたいなって思っています。

もう1つは、ベテラン世代の人たちが元気が出せないせいで、組織のアップデートを妨害しているという側面もあると思っているんですよね。たとえば、「この仕事、システム化しましょう」って若手社員がいったときに、「システム、苦手なんで」の一言で済ませちゃうみたいな。この一言だけでも、組織のアップデートをすいぶん阻害していると思うんです。

逆に、わたしたちの世代ががんばって「新しいシステム、どんな感じ?」ってなったら、もっと違う感じになるじゃないですか。

この組織の進化やアップデートを、会社として早めなければいけない。アップデートができるようになると、たとえば、リモートワークがもっとできるようになるとか、生産性が高まるとか、そのような形になっていくと思うんです。とくに、わたしたちおじさん世代がボリュームゾーンになっているので。

でも、社会の地殻変動に対処するのが難しいのは、本人だけの問題とは言い切れない。きっと組織にも原因がある。自分ではどうにもできない、正解のない渦の中に放り込まれているのですから、人と組織のアップデートはいっしょに取り組んでいきたいなと。

じゃないと、失われた20年どころの騒ぎじゃないものが次の世代にやってくるから、組織と本人のセットで、アップデートできればいいなと思っています。

これからのチームを創る「対話の時間」

竹内:そのためには、何ができるんだろう?

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松川:先日『ダイアローグ 対話する組織』(ダイヤモンド社)っていう本を読んだんですよ。一言で言えば「話すだけでいい」って書いてあるんですけど、すごい共感したんです。

ボクらはよく、「結論があって、意思決定して、新しいプランを決めました」みたいなロジカルシンキングをすることがよくあると思うんですよね。でも、そのずいぶん手前のところで、「あ、そう考えるんだ。ふーん」っていうのがあるわけじゃないですか。

結論を急がない。答えはたくさんあるから、あらゆる選択肢を探してみるっていうか。過去に前例がない、不確実な社会を過ごしているいま、なおのこと結論はあせらない。いろんな世代とか、いろんな属性をもった人たちに加わってもらえるような対話の場っていうのができたほうが、多分いいんだろうなって思うんですよね。

これからのチームを創る「対話の時間」を大切にしたいなと。そんな活動をしていきたいんですよね。

竹内:一方で、本当は対話をした方がいいとは思うけれど、つい「それは違う」「〇〇すべき」みたいな一言を言ってしまったりして、対話にならないケースもあるなと思って。対話をするために、わたしたちの世代は、どんなふうに接してしていけばいいのかな。

松川:ポジティブに行きたいですよね。ボクらはややもするとすぐAかBかみたいな話をしがちです。自分と違うと「やれ、それは違うぞ」って、言ってしまいがちですから。

竹内:ほかの世代から見たときに、ちゃんと話を聞いてもらえる。そして、話ができる、「ダイアローグができるおじさん」になりたいですね。

著者プロフィール

竹内義晴

チームワーク総研とサイボウズ式編集部の兼務。新潟でNPO法人しごとのみらいを経営しながらサイボウズで複業しています。「2拠点ワーク」「週2日社員」「フルリモート」というこれからの働き方を実践しています。