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「格好つけなくていい。頼ればいい」昭和のおじさんが元気になれば、日本は元気になる――シニアコンサルタント 松川隆

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銀行員、広告企画、プロテニスコーチ、ITと異色のキャリアを持つ、サイボウズチームワーク総研シニアコンサルタントの松川隆。体育会出身ならではの"熱さ"が持ち味です。

松川は、さまざまな企業と関わる中で「ベテラン世代も苦しんでいるのではないか」「おじさんがずっこけても変われるよ」と言います。その真意を聞きました。

「進んでいる」より「変わっている」会社、サイボウズ

――松川さんが入社されたのは2012年とのことですが、その頃のサイボウズはどんな感じだったんですか?

普通の会社に「毛が生えた感じ」ですね。普通って言うのは、いわゆるガチガチの会社ではなくて、「少し、働き方に柔軟」みたいな。

いまでこそ、サイボウズは「進んでいる」って感じですけど、その当時はまだ、いまのような「働き方」や「会社の雰囲気」に注目する企業はほとんどなかったと思っていて。だから、「進んでいる」という概念すらなかったような気がします。

サイボウズも「進んでいる」というよりは、「変わっている」という感じ。

――変わっている?

「進んでいる」っていうのは、進むべき理想があって、前に向かっている感じじゃないですか。というよりは、ほかの会社とは「ちょっと違うな」みたいな、「ベンチャーって、こういうもんだよね」みたいな雰囲気でした。

銀行員、広告代理店、テニスコーチを経てサイボウズに

――松川さんはもともと、銀行で働いていらっしゃったそうですが、2012年にサイボウズへ入社したとき、カルチャーショックはありましたか?

カルチャーショックはなかったですね。僕の場合、銀行の次に小さな広告代理店を経由しているんですが、広告代理店は15人ぐらいの会社で、カチっとした組織でもない感じだったので。そこからすると「まとも」みたいな。

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その後、テニススクールもやりましたが、1人経営者、1人テニスコーチ、1人販促担当という感じでしたし。

――そこから、サイボウズにはどんな経緯で?

一言でいうとテニスコーチは不安定だったんですよね。でも、キャリアがめちゃくちゃになっちゃっているから「どうしようかな」と思って。そこで、連絡をとったのが、銀行員時代の先輩だった副社長の山田さんです。

だから、サイボウズに入る前は、働き方とか興味なかったんですよ。というか、IT企業も全然興味なかったんです。むしろ、避けていたぐらい。

でも、山田さんから、サイボウズの理想や働き方について詳しく話を聞いて、「先進的な働き方っていうのもいいな」と思ったんです。

ITが苦手、紙のノートが手放せない昭和のおじさん

――IT企業を避けていたということは、ITは......

苦手です(笑)

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サイボウズに入社して最初は営業だったんですが......僕、紙のノートが手放せなかったんですよ。サイボウズはグループウェアを作っている会社なのに、スケジュールもノートに書いて。

あと、ささいなことですが、若い社員と営業に行くとおもむろにパソコンを開くんです。視線がお客さんじゃなくてパソコンにあるっていうのは、昭和のおじさんは「それ、ちょっと失礼だよ」とか、思っちゃうわけですよ。

でも、あるとき、僕と同じように体育会出身の社員と営業に行くことがあったんです。「失礼な後輩とか、マジしめてましたよ」みたいな(笑)

だけど、生い立ちは同じタイプなのに、キーボードを「ダーー!」と叩きながら商談するんです。しかも、お客さんからの質問に対しては、サポートの社員とテレビ会議でつないで、的確に答えている......という。

これを目の当たりにしたとき、「これはスゲー!」と思ったんです。

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さらに、重要な商談だったので、「業務記録書いておいてくれない?」と頼んだら、「もう終わっています」って言われたんですよ。僕らがオフィスに戻るまでに、もう、商談の内容が伝わっているんですもん。部長に。

銀行員時代も業務記録は書きました。その書き方は、難しい言葉や、読めない漢字、文章の作法など言葉遣いに気を使いました。上司との間を何度も往復します。一種の「作品」みたいな感じですよね。

それと比較すると、サイボウズでやりとりされている文章は、やや軽いのでビジネスシーンでそのまま使ってもよいのかなって少し心配になるくらい。でも、スピードが圧倒的に早いんですよ。銀行員時代の業務記録の書き方を思うと、「そういうの、どうでも良かったな」って。

あとは、チャンスの与えられ方や、失敗に寛容なところは違いました。

サイボウズの場合は、入社して1、2年でも1人で商談に行くし、前に立ってプレゼンもする。「だから、若い社員のプレゼンがこんなに上手なんだな」と思って。銀行員のときは、何かが「できるようになった」と記憶にあるのは、何年も経ってのことでしたから。

そして、思ったんですよ。「こっちのほうが、なんかいいな」って。

オンライン、熱く語って大炎上

――紙からオンラインのコミュニケーションに変えていく中で、思ったように意図が伝わらなかったみたいな失敗談はありますか?

たくさんありますよ(笑)

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話せばキリがないんですが、もっとも思い出深いのは、営業から人事に異動して、新入社員研修の事務局をやったときのことです。

ある時、昼休みの時間の使い方について、グループウェア上に書いたことがあるんです。

それまでの僕の価値観では、新入社員が成長するためには、物事を突き詰めたり、苦しい思いをしたり、迷い込んだところの先に、ものすごい晴れやかな状態が待っていると思っていたんです。そのためには、一度集中して、「ウォー!」って邁進するのがいいなって。

だから、新入社員には研修期間中、耳や鼻からいろんなものが出てくるくらい「ウォー!」と邁進して欲しかったんです。

でも、新入社員は次の配属や仕事が気になるじゃないですか。そういうところに意識が行っているのか、研修に集中して欲しいんだけど、集中していないように見えて。それがちょっと許せなかったんですよね。「がっかりだな」と思って。

その気持ちを、ちょっときつめのトーンで、グループウェアに書いたんです。

それがまあ、大炎上しまして(笑)。「昼休みの時間をどういうふうに使おうが個人の勝手だ」みたいな。しかもその発言に「いいね」がかなりの数ついている......。それはもう、援護射撃がなにもない状態で、「あれやばいよね」みたいな空気で。

「僕が言ったことは、受け入れられなかったんだ」と、ショックでした。

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トイレで用を足していたら、ある社員が小声で言ってきたんです。「松川さん、僕はどっちかっていうと松川さんの味方です」と。「あのさ、うれしいよ。うれしいけど、それ、掲示板に書いてよ」みたいな(笑)

――痛い思い、ずいぶんしてきたんですね

「押し付けがましい態度が嫌なんだな」と思いました。

それからは、押し付けがましくない議論を意識しました。すると、人が近寄ってくれました。また、僕の考えを押し付けるのではなく、みんなの願いを叶える方向にしていったら、みんな歓迎してくれるようになって。

「ああ、なるほど!こういうことなんだ」と気づきました。でも、こういう失敗体験が、企業で研修をする上ですごく役立っています。

企業で起こりがちな「思考停止のスパイラル」

――銀行員時代も、いろいろ議論をすることがあったと思いますが、一般的な企業とサイボウズの「議論の仕方の違い」って、何だと思いますか?

主体性ですかね。一方的に決めたものを押し付けるのではなく、個人が主体というか、社員側にやる気、モチベーションがあるというか。

銀行員のときは、それがポジティブなことであれ、ネガティブなことであれ、上が決めたことには意見は持たない、「やらされてる」って感じでした。受動的というか。

でも、それでは何も起きないと思うんですよね。

――チームワーク総研の講師もいろんな人がいる中で、旧来型の働き方と、サイボウズの働き方の両方がわかるのが松川さんだと思います。旧来型の働き方の常識を変えていくには、何が必要なのでしょうか?

「常識を変える」......最近ホントね、難しいなって思っているんですよ。

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先日、新卒からベテランまで、いろんな世代が集まる飲み会があったんです。みんな、名だたる企業で働いています。

すると、何が起こるかというと、「昔、俺はすごかったんだ」みたいな、昭和のおじさんが武勇伝を延々と話すんですよ。若い人たちは、「なるほどー、すごいですねー」と聞く。この状況を見ながら思ったんです。「これ、思考停止のスパイラルだな。話を聞いている若い子も、20年後、同じことをやってはしないか」って。

「上の人が発言する。若い人はそれに従う」というのは、物事が早く決まるし、統制が取れている感じがするんだけど、上の人が言ったことを盲目的に聞く形だと、思考停止のスパイラルに入ってしまう。しかも、若い人は思考停止を悪いことだと気づかずに、思考停止してしまう。

上の人が決めたことに、下の人は全力で向いていく。そういう組織があっても、僕は別に構わないと思っています。だけど、僕はもう、そういう方向には行きたくないなと思っています。

格好つけなくていい。頼ればいい

――今後もさまざまな企業研修に携わっていくと思います。どんな会社を増やしていきたいですか?

一人ひとりが考え、自立できるような会社を創っていきたいな、阻害要因があったら外してあげたいな、気づきをあげたいなと思っています。

一人ひとりがいろいろと考えたり、質問したりするのは、とても面倒くさいものです。でもそれがあると新しい回転、新しいイノベーションが始まるじゃないですか。

「おじさん」というと、頭が硬いとか、いろんなイメージがあるとは思うんですけど、「今更、言えない何か」が多分たくさんあって、おじさんはおじさんで苦しんでいるんだと思うんですよね。「いままでのやり方は通用しないような気がする。でも、何を変えればいいかわかんない」......みたいな。

肩肘を張っているところも、あるような気がするんです。若い人の手本にならなきゃいけないと思い過ぎちゃったりして。

だけど、別に格好つけなくても、頼るものは頼っちゃえばいいと思うんですよね。

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僕は昭和47年生まれ、第二次ベビーブームの後ろの方ですが、日本の人口構造の中で、昭和45年前後くらいの人たちはとても多い。つまり、日本はおじさん、おばさんが多いんです。

ということは、おじさん、おばさんが元気になれば、日本も元気になっていくっていうことだと思うんです。

だから、真面目に......って言うよりは、一人ひとりのキャラクターを生かしつつ、ちょっとしたユーモアと笑いを交えながら、新しい未来のことを考えて、いいおじさん、おばさんになっていく......そんなことを、みんなといっしょにやれたらいいなと思います。

インタビュー:三木佳世子 撮影:尾木 司 企画・文・編集:竹内義晴

著者プロフィール

竹内義晴

チームワーク総研とサイボウズ式編集部の兼務。新潟でNPO法人しごとのみらいを経営しながらサイボウズで複業しています。コミュニケーションの専門家。