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男性育児休業期間の理想と現実、 上司と取得希望者で大きなギャップ

企業や組織へ、チームワークや働き方改革のメソッドを提供するサイボウズ チームワーク総研では、上司2000人を対象に「男性育休」についての意識調査を行いました。同時に、将来、育児休業取得意向のある男性正社員/公務員の声も調べ、必要箇所で比較をしました。*図表中の設問文について:育休取得希望者本人のみへ向けた設問は青で記載

《 調査概要 》

◆調査目的:男性の育児休業取得や育児参加について、本人・職場ともに良い形を模索するうえで有効な視点を探る

◆調査対象:
・部下に男性正社員/公務員をもつ上司(課長職相当~経営者):2,000名
・将来、育児休業取得意向のある男性正社員/公務員:1,000名
  *エリア :全国
  *割付条件:就業実態に寄せるため、勤務先の従業員数で割付
        - 総務省統計局「平成26年経済センサス-基礎調査」参照

◆調査期間:2022年4月15日(金)~20日(水)
◆調査方法:パネルを活用したインターネット調査


育児休業期間の理想と現実、上司の理想「1週間未満」20%に対して取得希望者5%
現実期間「1週間未満」では、上司20%に対して取得希望者36%

男性育児休業について「理想的」な取得期間をきいたところ、上司層では男性部下に「許容したい理想期間」として「1週間未満」が20.8%で最多、「1か月未満」を合算すると58%となりました。一方、育休取得希望者層では「1週間未満」は5%、「1か月未満」合算は30.4%に留まりました。1ヶ月以上を理想とする声は約70%、中でも「半年~1年未満」は30%を超えました【図表1】。

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続いて「現実的」な取得期間をきいたところ、上司層の「職場として許容できる現実期間」としては「1週間未満」が20.5%、「1か月未満」合算では61.1%となり、「理想的」な期間と同様の傾向となりました。育休取得希望者層では「1週間未満」が36.9%と最も多く、「1か月未満」合算では70%を超え、現実期間を上司層よりも短期にとらえています【図表2】。育休取得希望者層では上司層と異なり、「理想」との大きな差がみられました。

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育児休業期間、長くなるほど「本音では歓迎できない」仕事や他社員への影響を危惧

男性部下の育児休業を「歓迎できるかどうか」を、「男性部下の育休取得希望期間」ごとにききました。「歓迎できる」とした人は「1週間」では80.9%ですが長期間になるほどスコアが下がり、「3か月間」以降では「本音では歓迎できない」が過半数となりました【図表3】。

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「1か月間」について、歓迎度合いの理由を自由回答でききました。「歓迎できる」理由では「育児に関わるのは良いこと」「1か月なら業務をカバーできる」「当然の権利 / 時代の流れ」など容認する意見がみられ、「本音では歓迎できない」理由では「仕事に支障」「周囲への負担」といった業務や職場への影響を危惧する声がきかれました【図表4】。

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男性部下の育児休業への懸念は、業務を維持できるかどうか

上司層に対し「男性部下の育児休業への懸念」を、取得希望期間ごとに聞きました。「1週間」では「特に懸念がない」が1位でしたが、「1か月」を超えると「代替え要員の確保」「同僚の業務負担増」「業務タスクの引継ぎ・調整」が上位になり、実業務の維持・対応が懸念材料となっています。「3か月」「半年」では「代替え要員の確保」が半数を超えました【図表5-1】。

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一方、育休取得希望者層の「育児休業への懸念」では、4期間とも「代替え要員の確保」が1位となり、上位には上司層と同様「同僚の業務負担増」「業務タスクの引継ぎ・調整」があがるなか、「3か月」「半年」では「自身の収入」が上位となり4割程度になりました【図表5-2】。※【図表5-1】の選択肢「育成計画の見直し」「会社への忠誠心の低下」は、育休取得希望層では提示せず

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育児中の男性社員の働き方として、上司の半数がフレックス制やテレワークを「あり」
柔軟な働き方を模索する時代へ

育休取得希望者層へ「育児がはじまったら希望する働き方」を聞いたところ、約半数が「育児休業を取得して、働き方も変更」と回答しました。「育児休業は取得せず、働き方を変更」とした23.5%と合わせると、70.8%が「働き方の変更」を希望する結果となりました【図表6】。

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具体的な働き方として、上司層では「フレックスタイム制」が半数を超え、次いで「テレワーク」「残業なし」となりました。育休取得希望者層では「週休3日(有給活用)」をはじめ、「テレワーク」「フレックスタイム制」「短時間勤務」が半数を超えました。両層ともに「あてはまるものはない」は1割程度にとどまり、複数の方法が「あり」と見なされています【図表7】。

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上司層の回答を従業員数別にみると、「フレックスタイム制」「テレワーク」「週休3日(有給活用)」で、大企業ほど高スコアとなりました【図表8】。

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「男性社員の育児参加のために、職場に必要なこと」を聞いたところ、上司層では「余力のある人員配置」が1位、次いで「経営層の理解」「フォローする同僚への配慮・評価」となりました【図表9】

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まとめ

今回の調査から、男性の育児休業期間として上司層と育休取得希望者層でギャップがあり、上司層の理想としては比較的短期間であることが見えてきました。同時に、長期が理想だけれど現実的には短期でという取得希望者層の姿も浮き彫りとなりました。

上司層が長期休業を歓迎しにくい背景には、休業という人員欠如にともなう、業務遂行への懸念がみられます。一人休むことでその分の仕事を誰が負担するのか、人員調整や引き継ぎができるのかといった、現実面での対応が大きな懸念要因となっているようです。人手不足が叫ばれる昨今、普段から人手に余裕のある職場ばかりではないことも、背景として推察されます。育休取得希望者層の育児休業への懸念点では、上司層と同じく業務面での懸念に加え、長期になるほど収入面がフォーカスされることが分かりました。

一方で、育児は女性の役目といった旧来的な役割意識は一定数見られるものの、上司層では育休取得希望者層ほど感じておらず、今の時代、男性の育児参加については、やむを得ないというニュアンスも含めて受容されているようです。

育児中男性の働き方としては、フレックスタイム制をはじめ複数の方法が「あり」とされました。テレワークや週休3日など、柔軟な働き方への抵抗感はそれほど無いように伺えます。育児休業取得に限らずとも、柔軟な働き方を支援することが、職場の戦力を維持しつつ男性の育児参加をかなえる一つの道筋かもしれません。

これからの時代、育児参加したい男性社員にとっても、業務を推進する職場メンバーにとっても、より望ましい環境整備への取り組みが期待されます。

サイボウズ チームワーク総研では、組織の働き方改革や問題解決にむけた「マネジメント研修」、業務改革や風土制度づくりを支援する「組織変革コンサルティング」など、多様な働き方の中で個人の幸福度とチームの生産性両方を高めるためのプログラムを、多数ご用意しています。今後もチームやチームワークを考える一環として、様々な調査を行い発信してまいります。


※引用について
本調査を引用いただく際は出所の明示をお願いいたします。
例)サイボウズチームワーク総研「男性育休」についての意識調査


【資料ダウンロード:くわしい提言付き】

著者プロフィール

三宅 雪子

チームワーク総研研究員・編集員。組織におけるチームワークを探求。働く人の強み・魅力を引き出し、人と人との関わりをチームの生産性へつなぐ道すじを探る。