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その「もやもや」で、チームはもっと進化する──サイボウズ流「もやもや共有メソッド」

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働く人であれば誰もが、仕事絡みで心が「もやもや」した経験をお持ちのことでしょう。しかし、この「もやもや」、仕事でありがちな感情であるにも関わらず、心にフタをして、忘れるまでやり過ごすケースが多いのではないでしょうか。

しかし、「もやもや」には、扱い方次第では、チームにプラスの影響をもたらす可能性があります。

人事やリーダー、マネージャーの方の中には、ひょっとしたら「もやもやなんて、飲み会で発散しているから大丈夫!」という方もいらっしゃるかもしれません。しかし、「もやもや」への対処には、飲み会での発散以外にも方法があるのです。

この記事では、チームに役立つ「もやもや」との向き合い方、活かし方についてお話しします。

「もやもや」の正体は、ぼんやりとした問題意識

まず、この記事でいう「もやもや」とは、仕事で感じた小さな違和感や困りごとを差します。次のような例は、ことさら周囲に伝えるほどでもなく、なんとなく「もやもや」してしまいますよね。

もやもや例1)給湯室が、いつ行っても汚れている...

もやもや例2)プロジェクト開始したのに、メンバーの動きが悪い...

もやもや例3)この定例会議、参加者が黙りがち...

このように「もやもや」はポジティブではない性質のものですが、心にフタをして放置するとどうなるのでしょうか。仕事への不安増や、他メンバーへの信頼低下など、仕事へのモチベーション減少につながるかもしれません。こうした事態は避けたいところですね。

ところで、「もやもや」はなぜ生じるのでしょうか。それは、背景に「本来こうあってほしい」という理想があるからだと考えます。理想そのものは言語化されておらず、本人に自覚されていない状態であることも多いです。

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いま目の前にある現実と、背景にある理想との間にギャップがある際、「なんか違うなあ・・」という違和感が、「もやもや」として生じます。

そのため「もやもや」を、理想に近づくための「ぼんやりとした問題意識」と捉えることもできます。そう考えると「もやもや」は、「今よりももっと良い状態」を考えていくための糸口となりうるのです。

言おうか、言うまいか...言い出しにくい「もやもや」

「もやもや」は、個人の胸のうちに生まれる感情です。表に出すことができずに、フタをしてしまいがちな「もやもや」に対応するには、どうすれば良いのでしょうか。

1つは、「溜めずに手放す」こと。もう1つは、「もやもやの正体を知る」ことです。そのためには、メンバー個人に生じた「もやもや」を、チームのメンバーで共有することが有効です。

「もやもやの共有」には、次のメリットがあります。

メリット1)メンバーに聞いてもらうことで、スッキリする

メリット2)対話から「もやもや」の正体を言語化し、認識できる→チームで取り組むべき問題が見つかることがある

メリット3)メンバー同士の相互理解が進む

こうしたメリットを得るには、共有のための対話がポイントです。対話を通じて、本人の気持ちが整理されたり、「自分だけではなかった」「思い込みだった」という気づきが生まれたりします。

また対話から、「実は自分も、もやもやしていた」といった共感が、周囲のメンバーに生じることがあります。共感により「もやもや」を自分事として捉えやすくなり、共通の問題だと気づくことができるのです。

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しかし、職場の人に「仕事で、もやもやしていることを聞かせて」と言われて、すぐに話せる人は少ないものです。「こんなことを言ったらどう思われるか」「話すことで、誰かが気を悪くしないか」など、不安要素は絶えません。また、こうした話しにくさがあるからこそ「もやもや」する、という側面もあります。そもそも原因を認識しておらず、伝えにくい場合もあります。

しかし、「もやもや」を放置することは、個人のモチベーション低下や、チームのカイゼン機会を失うことにもつながります。

そこでサイボウズでは、「もやもや」を共有するメソッドをつくり、社内で随時行うようになりました。

「もやもや」の共有方法:もやもや共有メソッド

「もやもや共有メソッド」は、メンバーの「もやもや(問題意識)」を、チームで互いに知る方法論です。「もやもや」の奥にある「理想の明確化」や、「チーム問題の早期発見」「メンバー同士の相互理解による関係づくり」などを目的に行います。

「もやもや共有メソッド」は、次の4つのステップで取り組みます。

  1. もやもや共有シートに、各自が「もやもや」を記載
  2. 「もやもや」を共有
  3. 共有された「もやもや」へコメント
  4. 1人ずつ順番に、2.3.を実施

1.もやもや共有シートに、各自が「もやもや」を記載

共通ワークシートを使い、「もやもや」の言語化や、共有の際の目線合わせに役立てます。

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「もやもや(問題意識)」の認識
・「もやもや」のタイトル(「もやもや」を一言で言うと)
・「もやもや」のスタンス(ただ聞いてほしい、解決したい など)
・「もやもや」について感じていること

現実の認識
・「もやもや」を持った背景やきっかけ

理想の認識
・「もやもや」が、いつまでにどうなってほしいか

2. 「もやもや」を共有

1人ずつ、ワークシートの内容を、メンバー全員に話します。思うように書けなかった場合は、「よくわからなかったので一緒に考えてほしい」といった伝え方で十分です。

また、「もやもやの奥には、理想がある」「理想としてどうなれば、もやもやしなくなるか」など、「理想の明確化」を意識した共有をすると良いでしょう。それにより、後ろ向きに愚痴をこぼすといった時間にせず、前向きにより良い状態につながる時間にします。

3. 共有された「もやもや」へコメント

話したメンバーの「もやもや」のスタンス(聞いてほしい、解決したい など)に沿って、聞いたメンバーが助言をします。批判的、否定的なコメントは厳禁です。相手の理解につとめましょう。

4. 1人ずつ順番に、2.3.を実施

あくまで、「もやもや」を「共有」することが目的のため、「問題を洗い出さなければならない」「今すぐ解決しなくてはならない」と気負う必要はまったくありません。参加したメンバー一人ひとりがスッキリしたり、チームの相互理解が進んだりすることを大切にしましょう。

もやもや共有を経て、チームで取り組むべき問題を発見した場合には、解決に向け、サイボウズ流問題解決メソッドを活用することもできます。

チームづくりに関わる、もやもや共有メソッド

最後に、もやもや共有メソッドがどのような場面で使われているのかをご紹介します。

オンボーディング(サイボウズ)

新入社員など新しくチームに参加した人が、「もやもや」した気持ちを抱えながら、誰にも相談できずに戸惑うことはよくあります。「もやもや」をチームで共有する機会を作ることで、「もやもや」の解消だけではなく、既存メンバーが気づいていなかったチーム問題への気づきや、メンバー間の相互理解に役立てています。

働き方支援(サイボウズ)

育休からの復帰者を対象に、職場環境や、仕事と育児の両立についてなど、日頃感じている「もやもや」共有を行ったケースです。勤務中なかなか口にしにくい内容であっても、当事者同士という関係性の中で対話をすることで、悩み解決に向けたステップとして活用することができました。

組織・風土改革(外部企業研修)

チームワーク総研では、外部の企業様から、組織改革や風土改革のご相談をよくいただきます。当事者である社員一人ひとりが、組織や風土に関わる現状をどう感じているのかについて、日頃知り合う機会は少ないものです。そこで、メンバー同士がテーマに関わる「もやもや」を共有することで、現状を認識し、改革への糸口を探る際に利用しています。

こうしたテーマごとの活用の他、日常的なチームでの活用もおすすめです。メンバーのコンディションを高め、チームが進化するきっかけとして、お試しください。


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著者プロフィール

三宅 雪子

チームワーク総研研究員・編集員。組織におけるチームワークを探求。働く人の強み・魅力を引き出し、人と人との関わりをチームの生産性へつなぐ道すじを探る。