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日本のベストチームに学ぶ、本当に成果を出せるチームワークの築き方

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※ベストチーム・オブ・ザ・イヤーのサイトから移設しました

第6回目を迎えた「ベストチーム・オブ・ザ・イヤー」。11月26日の"いいチームの日"を記念して開催されるこのアワードでは、「チームが生み出した実績」「組織力」「チーム内外の満足度」の3要素を総合的に評価し、社会的・経済的に顕著な実績を残した "ベストチーム"に賞が贈られます。

年々メディアの注目度が高まる中、2013年は審査委員長に明治大学教授の齋藤孝さんを迎え、審査員兼当アワード総合プロデューサーのおちまさとさんとともに、優秀賞にノミネートした4つのチームの中から、最優秀賞が発表されました。チームジャパンが考える「本物のチームワーク」に迫ります。

「目標設定、役割分担、情報共有を備えたチームが、日本で求められている」齋藤孝さん

「ベストチーム・チーム・オブ・ザ・イヤーは、強い個を持ちながらも、チームとして、さらなるプラスαの成果を生み出したチームを表彰するものです。チームは集団とは違います。『目標・明確な役割分担・情報共有』、この3つの基本要素を備えた"クリエイティブなチーム"が、これからの日本社会に求められているのです」

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著書を出版された齋藤教授は、「『使命感=ミッション』『くじけない情熱=パッション』『元気に明るく=ハイテンション』がチームには重要で、日本にもっと良いチームを作っていこうという機運になってもらえれば」と、開会のあいさつを述べました。

「強い個が集まることで、強いチームワークは生まれる」おちまさとさん

「サッカーのワールドカップ進出が決まった際に、本田圭佑選手が『日本はチームワークが強いけれど、もっと個が強くなって、チームを高めていかなければならない』という言葉を残したり、東京オリンピック・パラリンピックの開催が決まった際の『勝因はチームワークである』という言葉が世間をにぎわしたりして、まさに今『チームワーク』という概念が、再度見直されていると思います」

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「2013年の受賞チームも、強い個が集まって強いチームワークを生み、個だけでは作ることのできなかったパワーによって、大きな成果をあげたチームが選ばれております。今日は各チームの強みを披露してもらおうと思っておりますので、どうぞお楽しみください」

ベストチーム・オブ・ザ・イヤー2013 優秀賞はJoiTech、パズドラ、下町ボブスレー

まずは優秀賞の3チームが発表され、齋藤さんより表彰楯が、おちまさとさんより花束が贈呈されました。

ロボカップ2013世界大会ヒューマノイド部門 優勝 JoiTechチーム

世界数十カ国が参加する「ロボカップ」の世界大会で、優勝という栄冠を手に入れたJoiTechチーム。大阪大学と大阪工業大学という、異なる大学の学生たちが力を合わせて目標を達成したチームワークが評価されました(ロボカップ大会で世界一、阪大・大工大の学生チームを頂点に押し上げた「技術力を超えるチーム力」)。

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「2013年の初めからチームが走り出し、がむしゃらにやって世界大会で優勝できただけでなく、チームとしてこのような賞をいただけて、本当にうれしいです」(大阪大学 大嶋悠司さん)

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「パズル&ドラゴンズ」プロジェクトチーム

2100万という驚異のダウンロード数に達した「パズル&ドラゴンズ」は、"パズドラブーム"を巻き起こす、新感覚のパズルRPG。ゲーム業界の常識を覆しながら、世界に向けて新たな価値を作り出した点が評価されました(パズドラ 大ヒットの裏にあった神運営――大好きすぎてチーム全員が自腹で遊ぶ? 飽くなきゲーム作りへの思い)。

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「スタッフの数は開発初期の頃に比べると、10倍以上に増えているのですが、今でも少数精鋭でひとり欠けても成り立たないくらいの素晴らしいチームです。このような素晴らしい賞を受賞できて、スタッフ一同、本当にうれしく思っております」(ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社 執行役員 パズドラスタジオプロデューサー 山本大介さん)

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下町ボブスレーネットワークプロジェクトチーム

東京都大田区の町工場の技術職人を中心に、組織を超えたさまざまな人々が集まった「下町ボブスレーネットワークプロジェクト」チーム。氷上のF1と呼ばれる「ボブスレー」で、日本代表が使用する公式マシンを制作した ソチ五輪出場に向けて取り組んだチームワークが評価されました(大田区の町工場が結集、下町ボブスレープロジェクトは「モノづくりのシリコンバレー」に)。

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「チームワークを評価されたということは、ぼくが一番目指している"地域の連携"にもつながることだと思います。これからもチームワークを続けることで、大田区の製造業を活性化していきたいと思います。このたびは本当にありがとうございました」(細貝淳一さん)

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ベストチーム・オブ・ザ・イヤー2013 最優秀賞は?

そして改めて、齋藤孝委員長より、最優秀賞の発表です。

最優秀賞は「2020年東京オリンピック・パラリンピック招致チーム」

オリンピック・パラリンピックを東京に招致するという目標に向けて設立された「招致委員会」では、さまざまな能力や役割を担った大勢のプレイヤーが協同し、見事に目標を達成。そのチームワークが、高く評価されました(東京五輪 招致委員会に学ぶ、土壇場で負けないチームの作り方と誰もができるリーダーのふるまい)。

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「私たちは2011年9月7日に招致委員会を編成して以来、『日本を元気にしたい』というモットーをみんなで共有しながら、『未来をつかもう、明日をつかもう。今の日本には夢の力が必要だ』と、チーム一丸となって"オールジャパン"で臨んできました。その招致チームが、ベストチームとして表彰を受けることを、心より感謝申し上げます」(招致委員会副理事長・専務理事 水野正人さん)

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特別ゲストとして、ブエノスアイレスで開かれたIOC総会で最終プレゼンテーターを務められた女子陸上選手 佐藤真海さんと、フリーアナウンサーの滝川クリステルさんが登場。心に残る感動的なプレゼンテーションをされたお二人の登場に、会場が一段と華やぎました。

「普段、私は走り幅跳びという個人スポーツをやっているので、今回初めてチームとして闘わせていただき、チーム力の強さというものを本当に感じました。私たちプレゼンテーターだけでなく、裏方のスタッフもプロフェッショナルなので、私自身の最大限の力を引き出していただいたと思います。今日こうしてチームとして表彰してもらえることが、とてもうれしく、光栄に思います」(女子陸上選手 佐藤真海さん)

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「今日も本当はみんなで来たかったんですけど、裏方で本当に多くの人に助けてもらってきました。あんなに緊迫した中で思いを共有しながら1つの目標に向かえたのは、私にとって宝物、最高の時間でした。そんなチームジャパンがこのように評価されて、本当にうれしく思っています。ありがとうございました」(フリーアナウンサー 滝川クリステルさん)

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優秀賞3チームが語る「本物のチーム」とは?

次に、優秀賞を受賞された3チームの方に再度ご登壇いただき、「チームとは?」というお題でトークセッションが行われました。

良いチームの秘訣は「ボケとツッコミ」?

おち:みなさんにとって、チームとは?

パスドラ:チームとは「ボケとツッコミ」です。パズドラでは、漫才のように、ただひたすらおもしろいものを作りたいという思いがあります。ボケとツッコミの関係性のように、お互いを信頼しながら、言いたいことを言い合える仲の良さが、サービスを良くする秘訣かなと。

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おち:現場が楽しそうですもんね。

パズドラ:はい、すごく楽しいです。本当にみんなパズドラが大好きなので、話しているとゲームクリエイターと一般ユーザーの両面からの発言が出てくるので。

齋藤:仕事の本筋じゃないところを話せる「雑談」って、大事ですよね。話の量が多くないと情報共有ができないし、アイデアが生まれにくいと思うんです。

おち:JoiTechチームはどうですか?

JoiTech:チームとは「ロボット」です。ロボットっていうのは、たくさんの部品の集まりなんです。最高の部品を集めて、最高の配置を考えて、最高のパフォーマンスが出るように設計することで、初めて最高のロボットになる。

チームも同じなんですよね。優秀な人材がいることは前提ですが、どうやって有機的に結びついて役割分担していくかというのも、とても大事だと思います。

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齋藤:問題が起きたときは、どうしていましたか?

JoiTech:どうしても想定外のことは起こるので、ぼくはリーダーとしてどっしり構えて、はっきり方向性を示すようにしていました。普段から話していると、その人が何をしているのかがわかるので、それを踏まえた上で原因を追究していました。

おち:お互いよくわかりあっていることが大事なんですね。ではボブスレーチーム、お願いします。

ボブスレー:チームとは「」です。この枠からはみ出ているところがポイントで、"枠に捕われない"志ということなんです。

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齋藤&おち:なるほど(笑)

ボブスレー:このプロジェクトは、メンバーがみんな経営者なんです。社長をまとめるのは大変な作業なのですが、高い志を持つことで志の中に気配りが出てきて、お互いを思いやれたことが、プロジェクトが成功した秘訣だったのかなと思っています。

おち:プロジェクトを進めるには、経験も必要ですしね。何かチーム力を上げるコツって、あるんでしょうか?

齋藤:仕事だけじゃなくてプライベート感を出した飲み会をするとかね。昭和なやり方もいいかなと思います。そうやって知り合っておくと、ミスしても許せるんですよね。そういう関係性を作ることは大事だと思います。あとは身体系で、ハイタッチみたいなので盛り上がるのもいいんじゃないでしょうか。

パズドラ、JoiTech、下町ボブスレー、それぞれの今後

おち:では最後に、みなさんのこれからの展望をお聞かせください。

パズドラ山本:何かやるとたくさんのリアクションが返ってくるので、それに対して、ひとつひとつ丁寧に、みなさんの期待に応えながら、これからもおもしろいものを提供していきたいです。

JoiTech:今回はサッカーでしたが、また違うフィールドを視野に入れながら、もっとチャレンジングなことをやっていきたいです。次に繋ぐことができてこそ最高のチームだと思うので、後輩にうまく引き継ぐことが、今の課題ではあります。

ボブスレー:ぼくたちは女子でスタートしたのですが、年明けからは男子チームにも協力してもらって、切磋琢磨して行こうと思っています。ぼくたちの下町が作ったボブスレーを、必ず世界戦のオリンピックに出したいという展望を強く持っています。

最優秀賞オリンピックチームが発揮した「本物のチームワーク」とは?

最後は、最優秀賞を受賞した2020年東京オリンピック・パラリンピック招致チームのみなさんによるトークセッションです。

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チームジャパンが「本物のチーム」だった理由とは?

おち:では、みなさんにも「チームとは?」を書いてきていただきましたので、発表していただけますか?

水野:チームとは「心ひとつでBACK UP!」。招致活動ではプレゼンテーターだけでなく、表に見えない人たちの大変なバックアップがありました。夜も寝られないほど、一生懸命やってくれた。

チームはみんな役割分担です。自分がやるべきことをはっきりさせて、目標に向かってやるんだけど、人間は完璧じゃない。いろんなミスがあります。忘れることもあるし。そのときに、しっかりバックアップすることで、全体がうまくいくんです。そういうバックアップのしくみをしっかりと組み込んでおく必要があるんですよね。

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佐藤:チームとは「Dynamics」です。私は普段アスリートとして個人なので、今回は初めてチームとして闘うことで、チームのダイナミズム、迫力を感じさせてもらいました。それによって、個の力も引き出されたんだと思います。

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滝川:チームとは「化学反応」です。チームは個性の集合。本当に個性の強い、いろんな個が集まって、でもそれぞれの個を認めあって尊敬しあうのが、チームですよね。そうして生み出された化学反応によって、ぶつかることもあるんですけど、それが最大限の力となって、リボーンする。チームとして、それがないとダメだなと思いました。

おち:滝川さんが化学反応を感じたエピソードはありますか?

滝川:あります。チームだからこそ言える注意や小競り合いとか。「水野さん、そのフランス語、ちょっと発音が...」とか(笑)チームじゃないと、そんな偉そうなこと、言えませんよね。でもチームだから、横のつながりで言い合えるんです。

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おち:チームだからこそ起こる化学反応が、個の才能を引き出すことって、やっぱりあるんですか?

齋藤:ひとりでいたら、自分の力って、わからないですからね。他の人からつついてもらわないと。これからは異質性がぶつかり合うことが、ポイントになってくるんじゃないですかね。

「お・も・て・な・し」のプレゼンテーションに込めた真意

おち:最終プレゼンテーションのときの緊張感って、やはりすごいものなんですよね?

水野:2年間、本当にいろいろな仕事を積み重ねた集大成ですから、それはもちろん緊張はあります。でも、それまで積み上げてきたものをみんな信じていましたから。

おち:2年間のモチーベーションの維持やチームワークのコントロールはどのようにされていたのでしょうか。

水野:いつも目標をしっかり見据えて、このためにやっているんだから、細かいことはどうでもいいと。

おち:水野さんの日本人離れしたコミュニケーション能力も大きかったのでは?

滝川:最初から最後まで、水野さんはずーっと笑顔でしたよね。

おち:最終プレゼンでトップバッターだった佐藤さんにハートを奪われたんですが、あのときどんな心境だったんですか?

佐藤:初めてリハーサルしたときは足がガクガクして、『ここで話せるのかな』と、すごく不安になりました。リハーサルで失敗したので、本番の前の日に最後の特訓をして、後はスッキリとしていましたね。

齋藤:最終プレゼンまでのプロセスの中でチーム力を感じたことは、ありましたか?

佐藤:ありました。私は最後だけだったのですが、これまでみなさんが積み上げてきたものを台無しにできないプレッシャーもありましたし...。

水野:真海ちゃんは何分間のスピーチでしたか?

佐藤:4分間。

水野:No, No, No, No! みんなそれぞれの持ち時間があるけど、自分の持ち時間だけじゃなくて、日本の持ち時間のトータル45分間が私のプレゼンテーション。今日は真海ちゃんも緊張しちゃってるから、間違っちゃったんだよね。

佐藤:あぁ、そうだった! あんなにみんなで言ってたのに!

おち:滝川さんのあのポーズはどうやって決まったんですか?

滝川:あれはプロの講師の方が考えてくださったんですけど、海外、特にフランスでは、プレゼンで強調するときによく使うんです。"確か"で"確実"で"強い"かつ"ソフト"な、意味のあるジェスチャー。ちゃんと海外のIOCの方にゆっくり伝えて、耳に残してもらいたかったので。まさか流行語にまでなるとは、ほんとに...(笑)

おち:最後に手を開くのは、どうしてですか?

滝川:あれは自分でやりやすかっただけで、自然にやっていたことなんです。ナチュラルに笑顔で解き放せる。あれがないとダメだったんですね。手をあわせるのは、日本もアジアのひとつだという意味も込めていました。落ち着くし、プレゼンの中でいったん空気を変えられるタイミングだったんですよね。

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東京五輪の成功に向けた今後の展望

おち:では最後に、みなさんの今後の展望をお聞かせください。

水野:私たちは取ってくるお役目を成功することができました。今度は、いよいよ2020年に素晴らしいオリンピック・パラリンピックを開催しなければいけないし、その後、2020年の後にどのような社会作りをして、いろいろなレガシーを残していくかというのが私たちに課された責任です。それに向かって、今度はまたオールジャパンのチームワークで成功させるべきだと思っています。

佐藤:招致活動を通じて、「自分自身を救ってくれたスポーツの力を、日本中、世界中に広めたい」「パラリンピックをオリンピックのように認知を広めたい」「東北出身なので7年かけてもっと前向きに復興を推し進めたい」という思いでやってきました。2020年の招致が成功したことでみんなで目指す夢ができたので、これからも微力ながら、自分自身ができることを探しながらやっていきたいと思っています。

滝川:これからがスタート。7年後には、本当に世界中からリスペクトされる日本であってほしい。おもてなしの心のように、みなさんが改めて自信を持って、日本人として前に進める時だと思います。それに、いろんな面で成熟した社会を作れるチャンスなので、花が咲く日を夢見て、私も力添えしていきたいと思っています。

最後に

受賞したチームのみなさんによるチームマネジメントの秘訣は、いかがでしたでしょうか。2014年も日本に多くの素晴らしいチームが生まれることを、実行委員会一同、心より楽しみにしております。

(執筆:野本纏花/撮影:谷川真紀子/編集:藤村能光)

著者プロフィール

ベストチーム・オブ・ザ・イヤー

ベストチーム・オブ・ザ・イヤーは、2008~2016年の間、最もチームワークを発揮し、顕著な実績を残したチームを、毎年「いいチーム(11/26)の日」に表彰したアワードです。