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テレワークに必要な「環境」と「範囲」──チェックリストから考える「テレワークの導入」

前回は、台風の例をもとにテレワークの意義についてお話ししました。今回は、「では具体的に何をすればいいか」をご紹介します。

はじめてのテレワーク(1)ハード面のチェック

まず、下記の表をみて、現在の環境でテレワークが可能か確認してみましょう。

無題.png

おおまかに分けると、PCやスマホ(ガラケーはNG)の貸与状況の有無、ネットワーク環境の有無、外部からの会議参加の有無の3つになります。これらが整っていればテレワークは基本的に可能でしょう(工場勤務など、物理的に難しい方もいらっしゃるとは思いますが)

さて、みなさんの環境はいかがでしょうか。取り急ぎは1~10が整っていると、安心、快適にテレワークができます。それぞれについて確認していきましょう。



1~4は、PCの支給についてです。私用PCを使用可としているところもあるかもしれませんが、セキュリティを考えると、私用PCより支給PCが効率的です。サイボウズでも以前は私用PCの使用を許可していましたが、セキュリティ確保のためカードリーダーを必須にするなど、煩雑な手順が必要でした。そこで、現在では在宅用のノートPCは会社支給としています。

スペックの関係でPCをリースではなく購入しているため、ほぼ全社員に在宅用のノートPCを支給しています。リースの場合だとスペックと照合しながら安価に抑えることも可能だと思います。



次にネットワーク環境です。8の「自宅Wi-Fi」は確認した方がよいでしょう。自宅Wi-Fiは予備であり、会社支給のスマホのテザリングでネット環境につなぐのがベストです。会社支給の携帯がガラケーNGであるのはこうした理由です。

自宅以外で仕事をする際に、一般的に公共のネットワークはセキュリティ面で安全性が低いことが多いです。テザリングを使用するのが便利で確実ですが、ハード面をシンクライアントにすることでセキュリティを担保し、利用OKにするといったことも可能です。どこでセキュリティを担保するかによりますが、回線でセキュリティを担保するよりは、暗号化でセキュリティ担保する方が確実です。構築できるハード面との照合が必要になるでしょう。



最後は、 外部からの会議参加の有無です。外部から会議に参加できないテレワークは、業務を限定します。様々な環境を整える際に一つひとつ順番に行いながらも、外部からの会議参加への環境構築は必ず実施しましょう。

事業継続計画(BCP)の面でも、リモートでの会議が可能と不可能では、まったく仕事効率が変わってきます。会社支給PCにおける4(PCのカメラとマイクの確認)も、会議参加のための確認です。

技術が発達し、「Skype」のほか「Zoom」や「appear.in」など様々なサービスが増えてきました。それらのサービスを法人として使えるようにするのがベストです。試したい場合は、無料で使える個人アカウントから使用を許可するとよいでしょう。先に挙げたウェブ会議サービスは、数回使えば難なく使用できるように設計されていますが、それでも初めての場合はハードルを高く感じるでしょう。使用する側だけでなく、受ける側(リアルで会議する側)も同様です。社内で何度かテストするなど"慣れ"を作っておくと安心です。



とはいえ、全社員に対して前述の1~10を整えるのは難しい、と考える方もいらっしゃるでしょう。もちろん、いきなり全社員に対してでなくても構いません。下記の図は、範囲と投資額を表したものです。

グラフ2 (1).png

「誰が」「どんな業務を」テレワークで可能にするのか、で環境への投資額は変わります。

「人」の範囲については、まずは、役員や緊急時に対応が必要な人から始める、本部長レベルから始めるなど「役職」から範囲を定める場合、必要または可能な部署から始めるといった「部署」で範囲を定める場合など、順を追った始め方が安心でしょう。

中途半端な環境は余計な不満が生まれるモト

実際にある企業から聞いたお悩みの声を紹介します。この企業はテレワークの準備を進められているところでした。テレワークのためにネットワーク環境について尋ねたところ、テザリングは可能だが実質難しいと言われました。

理由を伺うと、「一定以上の容量を使用すると情シスからアラートが来る」ため。また、テレワークをしようとした際に、支給されている会社携帯がガラケーの社員もいるため、その社員はそもそも公共か自宅のWi-Fiを使用とならざるを得ないので、テレワークを許可していないとのことでした。

また、「そもそも(すでに一部で導入している)在宅勤務している人が何をしているのか分からない」との声が上がっているとの意見もありました。



このお話には、まさにテレワークが失敗に陥りやすいポイントが2つあります。

1つ目は、環境面における制限があると、使う人が限られるだけでなく、そもそも「テレワークをしよう」という気持ちも起きなくなるため、テレワークが浸透しないこと。

2つ目は、行動が明確でない在宅勤務者に対して不信感があり、それが「自分も在宅勤務をしたらそう思われるのではないか」との気持ちを生み、同じくテレワークの浸透につながらないことです。

筆者も同様の環境だと、環境に制限がある面倒さを感じますし、不信感を持たれたくないので出社することを選ぶと思います(笑)。またこの例は、特定の企業だけでなく、多くの企業で見られる「あるある」ではないかと推測しています。

そもそも私たちは誰しも、自分の行動に制限がかかることを嫌い、それを避けようとします。環境に制限がかかることでその本心が働くのは明らかです。

コストではなく投資 ― テレワーク 助成金の活用も

PCやネットワークなど、環境を整えるのはお金がかかるので回避されがちです。しかし前回お伝えした通り、地震だけではなく、豪雨や台風などの局地的な被害もいつ我が身に起こるか分からない状況になりつつあるなか、「事業が継続できる」「働ける環境がある」といったことは、自分たちの生活に多くの安心感や未来への希望をもたらし、単なる事業継続対策以上となることは想像に難くありません。



また、技術の進歩のおかげで以前に比べるとハードはかなり安価になっており、使いやすい安全なソフトやクラウドシステムも増えています。事業に影響を及ぼすほどの費用にならなくなってきているのも事実です。「コスト」ではなく「投資」と考えを切り替えましょう。働き方改革としての投資、BCPとしての投資、と考えると各種助成金も使え、可能性が拡がります。

中途半端な環境で実施すると、かえって社員の不満を起こし、浸透にもつながりません。まずは「環境」(チェックリスト10項目)と「対象範囲」を確認しながら、自社でできることを1歩ずつ整えていくことをお勧めします。



次回は、先ほどの企業例ででてきた「在宅勤務者が何をしているのか分からない」への対処法と、サイボウズがどのように失敗や試行錯誤をしながらテレワークを可能にしてきたかをお伝えします。



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【関連する記事:この連載は全4回です】

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連載4/4(最終回):テレワーク浸透に大切な2つのポイント──活用を阻む意外な「あるある」

※この記事は、昨年TechRepublicに連載した記事を一部修正して掲載しております。

著者プロフィール

なかむらアサミ

チームワーク総研 シニアコンサルタント。様々な組織のチームワークを良くするためにチームの正しい定義を伝えています。