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テレワークとは ── テレワークの現状とメリットについて

なぜ、交通機関が乱れても「通勤する」のか

昨年、台風15号の際にも交通機関が乱れましたが、数時間かけて通勤された方も多かったように思います。マスメディアのニュースでは、駅で2時間缶詰になるなどの過酷な模様が伝えられ、想像するだけでうんざりしました。年々人混みが苦手になっている筆者は、おそらく体調不良となり、その日1日を棒に振ってしまうでしょう。ただ、たとえ人混みが苦でないとしても、相当ストレスフルな状況となってしまうのは同じではないでしょうか。

ビジネスパーソンによる通勤行列の報道は、もはや台風の恒例行事になっているといっても過言ではありません。もちろん病院や各種サービス業など、「現場に行く」ことが重要な職種の方もいるでしょう。しかし、行列に並んでいる全員がそうではないはずです。公共交通機関の混雑は誰しもが避けたいはず。なぜこのようなことが毎度起こるのでしょうか。

オリンピック期間中のテレワーク、リモートワークについて

昨年の7月にサイボウズチームワーク総研にて、テレワークに関する調査を行いました。

職場でのテレワーク導入状況を聞いたところ、「常時全社員がテレワークできる」企業は13%、「特定社員だけテレワークできる」企業は43%となりました。 企業の4割が「テレワーク可能」というのは、もしかしたら悪くない数値なのかもしれません。しかし、その内訳を見てみると愕然と差がありました。

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在宅ワーク・サテライトオフィス・モバイルワーク、いずれのテレワーク手法においても、従業員規模が1000人以上の大手企業での導入が進んでいます。一方、100人以下の企業での導入率はいずれも1割程度かそれ以下。かつ「不要」の声は約6割という結果でした。

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総務省統計局による平成26年の「経済センサス」によれば、日本の企業構造は100人以下の企業が約9割で、労働者の7割を占めています。つまり9割の企業ではテレワークの仕組みがなく、その半数以上は今後も含め「テレワークは不要」と言っていることになります。確かにこれでは大多数のビジネスパーソンには「通勤」の選択肢しか無さそうです。

平成29年版「情報通信白書」においても、「従業員数300人以下の企業でテレワークを既に導入している企業は3%、テレワーク導入可能群の企業が21.4%」とあります。サイボウズチームワーク総研の調査結果とほぼ同様といえそうです。

顔を合わせなければコミュニケーションできないは「幻想」

テレワークの推進に非協力的な方からは、「顔を合わせるのが大事」という言葉をよく聞きます。果たしてそれは本当でしょうか?

もちろん、顔を合わせたことのない人と仕事をするのは困難です。ミシガン大学で行われた「分散されたチームの業績低下の予防策を検証する実験」を紹介しましょう。

実験では、「A:全員が顔を合わせて作業をする」「B:いったん全員に顔を合わせてもらい、その後別々の場所で作業をする」「C:最初から別々の場所で作業をする」という3つのチームに分類、業績を比較したところ、結果はAのチームの業績が最も高く、BのチームはAと僅差、Cのチームはダントツの最下位という結果になったようです。

注目してほしい部分は、AとBの差が僅差、というところです。つまり、何度か顔を合わせてお互いをある程度知れば、あとは離れていても仕事に影響はない、ということです。Bはまさにテレワークの状態といえるのではないでしょうか。

日本の社会集団には「場」を強調する傾向があり顔を合わせた方がいい、という意見もありますが、実際に会社に出勤していても、部長は終日会議で顔を合わせない、という状況はよくあると伺います。「顔を合わせる」がどの頻度なのかは怪しく、大事な部分はその人を信頼できるかどうかといえるでしょう。「顔を合わせることが大事」は、とりあえず出てきた言い訳であり、「私は部下を信頼していません」と言っているようなものです。

BCP対策としてだけでなく、私たちの「幸福度」も高めるテレワーク

冒頭で話した台風による通勤行列は、自然災害の二次災害です。人的に避けようと思えば避けられる可能性のあるといえます。

ゲリラ豪雨や竜巻の増加、記録的な猛暑や豪雪など、様々な要因で自然環境が厳しく変化しています。それらに対する不安が根底にあるにも関わらず、さらに二次被害でストレスが倍増する状態はとても健康的とは言えないのではないでしょうか。生産性が落ちるのも明らかです。

地震だけではなく、豪雨や台風などの局地的な被害もいつ我が身に起こるか分からない状況になりつつあります。「事業が継続できる」「働ける環境がある」といったことは、自分たちの生活に多くの安心感や未来への希望をもたらします。

先週末にも、新型肺炎対策でテレワークを推奨する企業がニュースになりました。社員の「安心・安全」を確保すること、そしてそれが会社のイメージに影響することもあります。単なる事業継続計画(BCP)対策以上となることは想像に難くありません。

日々の活動、生活を守る、そしてストレスフルな環境を削減する一環として、改めてテレワーク、リモートワークを考えてみてはいかがでしょうか。

次回からは具体的な導入方法についてお話ししていこうと思います。

サイボウズチームワーク総研では、テレワーク、リモートワークのセミナーを行っています。宜しければお申込みください。

今回の新型肺炎対策を機に、無料の「【オンライン無料セミナー】リモートワークについて「ざつだん」しよう」も行います。

【関連する記事:この連載は全4回です】

連載2/4(次の記事):テレワークに必要な「環境」と「範囲」──チェックリストから考える「テレワークの導入」

連載3/4(3回目):サイボウズがテレワークをするまで──テレワークの運用は「信頼関係」が前提

連載4/4(最終回):テレワーク浸透に大切な2つのポイント──活用を阻む意外な「あるある」

※この記事は、昨年TechRepublicに連載した記事を一部修正して掲載しております。

著者プロフィール

なかむらアサミ

チームワーク総研 シニアコンサルタント。様々な組織のチームワークを良くするためにチームの正しい定義を伝えています。