サイボウズ チームワーク総研

CASE STUDY

  • TOP
  • 研修事例
  • 「サイボウズはできるけど、うちはね」は禁句。パナソニック流の変革を実践したい──パナソニック株式会社

組織開発プロジェクト

「サイボウズはできるけど、うちはね」は禁句。パナソニック流の変革を実践したい──パナソニック株式会社

パナソニック株式会社

表紙

チームワーク総研は、パナソニック株式会社 A Better Workstyle編集局さまと、組織開発のプロジェクト「K2プロジェクト」をごいっしょさせていただいております。

この記事では、組織開発をご担当されている大西達也さんと礒貝あずささんに、K2プロジェクトの概要と試み、サイボウズとの協働で起こった事例をお伺いしました。

──大西さんが組織開発の活動を立ち上げた理由は何ですか?何か、課題感があったとか?

真剣な大西さん
大西達也(おおにし・たつや) パナソニック株式会社 A Better Workstyle編集局 組織開発担当。携帯電話開発などの技術者を経て、「組織をよくするための活動が会社に必要だ」という想いから社長に直談判。2015年に人事で組織開発の活動を立ち上げる

大西:わたしは入社してから、技術開発をずっとやってきました。マネージャーにもなったんですが、ずっと思ってきたことがあったんです。それは「パナソニックには優秀な技術者がこれだけ揃っているのに、なぜ成果に繋がらないんだろう」ということ

「こういうのをやりたい!」って言っても通らなかったり、逆に「やりたい」って言えばいいのに言わなかったり。プロジェクトは立ち上がっても、よい成果に繋がらないことが多くて......。「本当はもっと力が出せるはずなのに」という思いがすごくあったんです。

──個々の技術者はみんな優秀なのに......。

礒貝:そうなんですよ。一人ひとりは力がある人たちなのに、チームだと上手くいかないなと。

K2プロジェクトで「個を活かす共創」を実現したい

──K2プロジェクトを立ち上げた目的は?

大西:危機感ですね。組織開発の活動を立ち上げてから、勉強会をはじめいろんな活動をやってきました。「組織を良くしたい」という社内での認知は、少しずつ拡がってはいました。

けれども、個人的にはまだ足りない軸があるような気がしていたんです。たとえば、「自分たちのことは、ちゃんと自分たちで考える」とか「自分たちで自分たちを変えていける」みたいな。

だけど、自立性や主体性を育てることって、すごく難しいんですよ。

礒貝:うん、「主体性を持て!」って言うてもね。

笑顔の礒貝さん
礒貝あずさ(いそがい・あずさ)パナソニック株式会社 A Better Workstyle編集局 組織開発担当。SEや監査の業務経験を経て入社、2018年10月からA Better Workstyle編集局に自ら手を挙げて異動。組織開発に携わる

──そうですよね。ところで、K2プロジェクトのネーミングには、どんな意味があるんですか?

大西:わたしたちの組織開発の定義は、「人と組織がもともと持っているポテンシャルを引き出すことにより、成果と自己実現を促進する活動」です。ポテンシャルがめいっぱい引き出された会社にすることが、わたしたちの活動の理念なんです。

そこで、以前から「個を活かす」とか「共創」という言葉を社内でよく使っていたんです。K2の1つ目の意味は「個(Ko)を活かす共創(Kyosou)」の頭文字ですね。

礒貝:あと、わたしはもともと山登りが好きなんですけど、K2という言葉を聞いて「K2って山、あったね」って話になったんです。K2はエベレストの次に高くて、登るのが世界で一番難しい山。「パナソニックを変えるなんて、それこそ難関や」と思ったので、K2ってすごくいいなって。それが2つ目の意味です。

大西:そのほかにも、わたしたちには、「自分たちのことは自分たちで考える会社」「自分たちで自分たちを変えていける会社」にしたいという想いがありました。そこで「考える」「変える」でK2としたり。その後も、いろんな意味を加えました。

──K2には、いろんな意味が込められているんですね。

サイボウズがやってきたことは、わたしたちが実現したいことと似ている

──サイボウズとは、どんなご縁があっていっしょにプロジェクトを進めることになったんですか?

大西さんと礒貝さん

大西:もともと2人とも、以前からサイボウズの活動には注目していたんです。

礒貝:本を読んだりとか、Webの記事を見たりとか。

大西:最初に、サイボウズに興味を抱いたのは「会社を、自分たちで変えてきた」ことです。時代に流されたわけでもなく、自分たちで「どうすればいいか」を考えて、実際にドラスティックに変えてきた。

礒貝:わたしは、2018年11月になかむらアサミさんの講演を聴く機会があったんです。そこで、「サイボウズがやってきたことは、わたしたちが実現したいことと似ているな」と思ったんですよ。

人と組織がもともと持っているポテンシャルを引き出す上で、組織開発の活動は絶対必要。アサミさんの話を伺って、「サイボウズといっしょに何かをやったら、絶対いいことが起きる」と思ったんです。

大西:そこで、わたしがまず、人事のいろんな人に「サイボウズと何かやりたい」と言って回ったんですよ。「サイボウズはわれわれにとって、いろんな知見を与えてくれる会社だ。われわれが変革していく上でメリットがある」と。

礒貝:実は、以前からうちのチームの中で「文化創造」というテーマを掲げたことがあったんです。組織開発は組織を支援する仕事ですが、組織の文化を考え続ける必要もあります。

でも、まだ、その必要性が会社の中でも認識されてないし、文化と言ってもなんとなく「こういう文化」みたいなのものはあっても、それをみんながどこまで明確に思っているかもわからへん。

いまの自分たちの組織文化がどういうものかを明確にしたいし、「文化を考え続け、文化を創り続けること」を担う部署になりたい、という話がもともとあったんです。

──「サイボウズといっしょに」との意見に、まわりのみなさんはどんな反応でしたか?

大西:サイボウズを知らない人はもちろんいません。でも、相手によっては「どうして、サイボウズなんですか?」って聞いてくるんですよ。

礒貝:そう、絶対言われる。でも、「なんでサイボウズなん?」っていう理由を説明するのがすごく難しくて。

──そこで、なんと?

大西:その先はあまり説明しませんでした(笑)

礒貝:「候補は何社かあります、それぞれの条件はこうです」みたいな交渉は、まったくやる気がなかったんですよ。

大西:そうそう。ほかの会社との比較をしても意味がない。

礒貝:サイボウズと同じことをしたいわけじゃない。けれども、変革のためのエッセンスは絶対にある。サイボウズがやってきたエッセンスを、わたしたちもパナソニック流にやりたい。いや、やる必要がある。サイボウズは、それを強烈にやって変革してきた会社だっていう説明をしました。

サイボウズの真似をしたいわけじゃない

真剣な礒貝さん

大西:いまでもずっと強調しているのは、「サイボウズの真似をするんじゃない」ということ。「サイボウズではできるけど、うちではね」っていうのは禁句にしたい、って言う話をしています。

礒貝:みんな、すぐ言うんですよ。「事業規模が」とか、「人数が」とか、「うちは製造のメンバーもいるから」とか。

「そんなん、わかっとんねん」と。

それでも、言い続けることができたのは、ごいっしょすればするほど、「この人たちは、ほんとにいつも実践しているんだ」ということが伝わってきたからだと思います。打ち合わせもそうだし、ワークショップもそう。本気でわたしたちのことをいっしょに考えてくれているのが伝わってきたし、実績もある。そこは全然不安がなかったんですよね。

大西:大きかったのは、サイボウズの場合はコンサルティングでほかの会社を助けたんじゃなくて、実業でそれをやっていることですね。

礒貝:離職率が28%から4%にさがったという、まさにその経験そのもの。それがもう強烈に伝わってくる。

──知識を与えられるだけではなく、「実際にやっている」ことが大きかったんですね。

K2プロジェクトで起こっている社内の変化

──K2プロジェクトがはじまってから現在に至るまで、どんな活動をされてきたんですか?

大西:「これからの人事を考えよう」っていう4時間半のワークショップを3回やりました。

礒貝:その3回のワークショップのほかに、「自分たちの働きがいを考えよう」っていう社内のイベントがあって。その最後に「自分たちを変えていける会社へ」というK2プロジェクトのセッションをやりました。そこにアサミさんと松川さんに来ていただきました。

そのセッションは、人事だけではなくて「みんなで、いっしょにやりましょう」ということを、全社員に初めて伝えるセッションだったんです。

──ワークショップやセッションでは、どんなことを期待してやってこられたのですか?

大西:「自分たちのことは自分たちで考える、変えていく」ということですね。自分たちで、自分たちを良くしていく行動を考える。そして、何か起こしてくれたらいいなと。

礒貝:そのために、まず、「思いを共有する場」を作ることに注力しましたね。人事の人たちは、「自分のこと」よりも「社員のこと」を意識することに慣れています。もちろん、それも大切ではあるんですけれど、「あなたは何したいんですか?」と言われたときに、なかなか自分に意識が向かない。

そこで、まずは「自分の思い」を出すところから考えてもらいたいと思いました。そして、行動につなげるにはどうしたらいいかを考えてほしいと。

──ワークショップを進めていく中で、意外だったことはありますか?

大西:1回目の時に、いろんなカテゴリに分かれて、やりたいことを妄想するというワークをやったんですが、妄想できない人が結構いたのには驚きました。

正面の大西さん

たとえば、「複業が自由にできたら何したい?」という話をする場で、「複業って言ってもなかなかできないよね」みたいな話になったり。

礒貝:自由に発想することに慣れていないんでしょうね。

大西:「これは、いろいろやっていかないといけないな」と思いましたね。

もう1つは、いろんな事業部から人事の社員が来るんですけども、「職場で〇〇したい」とワークショップで話し合っても、職場に戻るとそういう思いを持った人がいないので、一人で孤軍奮闘しないといけなくなってしまうこと。

そういう人たちを応援する仕組みを作りたいと思いましたね。

礒貝:その日は「良かったです」ってみんな帰って行くんですけど、職場に戻るとなにも起こらない、みたいな。「次のワークショップまでに実際やってみましょう、そして、次回持ち寄りましょう」っていう流れにしていきたかったんです。

──なるほど、次のアクションにつなげたいと思われたんですね。

大西:でも、「こういう場が欲しかった」といった、肯定的な感想は非常にたくさんいただいたんです。

礒貝:そうなんですよ、すごくいい反応だったんです。

大西:また、うちの会社は、社内の事業をそれぞれ独立した会社として扱うカンパニー制を取り入れていて、全部で7つカンパニーがあるんです。その中で、あるカンパニーの人事トップが1回目から参加してくれて、「うちのカンパニーでもワークショップをやりたい」って言ってくれて。

礒貝:そう、派生しているんです。

大西:その会社では、本社のK2とは別にワークショップを2回やったんですよ、その会社の人事のメンバーみんなが集まっているから、少なくとも孤軍奮闘にはならない。そこの拡がりは非常に嬉しかったですね。

礒貝:これからは、本社のK2と、カンパニーのK2とを、お互いに連携しあえるといいなと、いま、取り組んでいるところです。

制度を変えるのは難しい。だが、できることはある

──K2プロジェクトのゴールは、自立とか自分たちで考えて自分たちで変えることだとおっしゃっていました。今後は、どのようなことをやっていく予定ですか?

微笑む礒貝さん

大西:サイボウズのみなさんとやりとりさせていただいて、プロジェクトを進めていくうえですごく大切だと思ったことの1つは、情報共有です。

パナソニックの場合、秘密じゃないのになんとなく隠しているとか、公開はしているけど見つけにくい情報とかがあって、欲しい情報にたどり着きにくい。それをもうちょっと公開できないか、見つけやすくできないかと思っています。

制度を変えるって、なかなか手をつけられないじゃないですか。でも、情報をオープンにしていくことならならできると思います。実は、もともと経営者が「情報をオープンにしよう」と言っているんですよね、それを、実際に進めるところからやるのがいいのかなと。

礒貝:情報共有すべきだといったら、経営者は「そうや、そうや」って言うと思うんですよね。

大西:とはいえ、進めるためには時間がかかるので。急がず、長い目線でやっていきたい。

そして、「K2プロジェクトのおかげでこうなりましたよ」というのが目に見える成果を作りたいですね。グループウェアで「K2のひろば」みたいな場を作って、話したい人同士で情報共有するみたいなことはやりたいです。

あとは、人事の人たちにもう少し働きかけて、制度や、制度の運用をいっしょに変えてみたいです。風土を急に変えるのは難しい。でも、制度やツールで「何か変わったな」と思える結果を出すと、風土も変わってくかもしれないなと。

礒貝:いま、考えているのは、「K2をプラットフォームにする」ことです。いままでは、「どうやって経営層を巻き込むか」を考えてきましたが、すぐには難しいかもしれない。でも、グループウェアを使って、社員が本音をやり取りできる場を作れば、経営層にとってもありがたいのではないかと。

また、社員にとっても、その場に自分の考えを出していいことが分かれば、いままでぼんやり不透明だったものがクリアになる。そういうやり取りができる場があると認識されれば、「自分たちで自分たちの環境をよりよい形にしていく」という、わたしたちのやりたいことが実現できるんじゃないかと感じています。

──いままで言いたくても言いづらかったことが自由に発言できる場が、K2プラットフォームなんですね。

礒貝:そうです。みんな、モヤモヤを吐き出す場がないんですよね。モヤモヤのまま抱えて、いつの間にか会社を辞めてしまう。

最初は、モヤモヤを吐き出せる場をつくる。分からないことはやりとりして明らかにしていく。それが、FAQのようにたまっていく。そうすると、人事も段々、楽になっていくと思います。

──最後に、これからもさまざまな取り組みをされていくと思いますが、社員の方々から「こんな声が聞こえてきたら、K2プロジェクトはうまく動いているな」「嬉しいな」という声はありますか?

大西:一つは「やってみました」みたいな声ですね。

礒貝:ですね。「わたしもやってみました」みたいな。

大西:「言ってみました」でもいいですね。

礒貝:「K2があるおかげで言えました」みたいな。

大西:「行動を起こしました」みたいな。

──「K2があるおかげで......」とか言われたら、めっちゃ嬉しいですね。

礒貝:めっちゃ嬉しいですね。「K2があるおかげで、毎日会社に来るのが楽しくなりました!」って言われたら最高ですね。というか、ほんとにそれが願いなんですよね。

そうすれば、毎日ワクワクしながらいろんなことに取り組めると思うんです。やりがいがある。ちょっとしんどい時も力を注ぐことができる感、発揮できている感が持てる、そういうきっかけがK2でした......って言われたら、すごく嬉しいな。

笑う2人

大西:そして、「"自分ってすごい"って思いました」って言ってくれたらいいよね。

わたしはパナソニックの社風として「真面目なところ」が好きです。斜に構える人が少ない。わたしは、誠実が人生で一番大事だと思っているんですけど、それを実践しやすい社風だと思っています。

礒貝:わたしも誠実とか素直とか、それをすごく感じるんです。と、同時に、規模や人の多さも強みだと思っています。動きにくくて大変やけど、影響力は会社の中だけに留まらない。そこから生み出せるものがあるし、それだけの力を持っている。そういう集団がこんなにあるんだ、こんなにいっぱいいるんだっていうのは、もっと外に出していきたいわたしの好きなところです。

──ありがとうございました。それは、K2プロジェクトからはじまるんですね。

K2プロジェクトの模様を動画でご覧いただけます