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組織開発プロジェクト

「サイボウズかぶれ」と言われても取り組み続けた、K2プロジェクト2年の軌跡──パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社

パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社

サイボウズチームワーク総研では、パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社 組織・人材開発センター 組織開発推進室さまと、組織開発のプロジェクト「K2プロジェクト」をごいっしょさせていただいております。

2020年には、「サイボウズはできるけど、うちはね」は禁句。パナソニック流の変革を実践したい──パナソニック株式会社にて、A Better Workstyle編集局(当時)さまで取り組んでいる組織改革・文化創造「K2プロジェクト」のお話を伺いました。

この記事は、その後の実践における変化についてお伝えします。そこにあったのは、「サイボウズかぶれ」と言われながらも挫折せずに取り組んだ、ある女性の「物語」でした。


「サイボウズかぶれ」と言われる日々

チームワーク総研:2020年2月、サイボウズのインターンが終わりました。その後、社内ではどんな過ごし方をされていらっしゃったのですか?

礒貝さん:まず、報告会を開催しました。何を持ち帰って、社内でどういうふうに活かしたいかを発表したんです。


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礒貝あずさ(いそがい・あずさ)さん。パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社 組織・人材開発センター 組織開発推進室(2022/4より現所属)にて組織開発担当。SEや監査の業務経験を経て入社、2018年10月からA Better Workstyle編集局に自ら手を挙げて異動。組織開発に携わる

チームワーク総研:反応はいかがでしたか?

礒貝さん:わたしのやる気と、社内のテンションにギャップを感じましたね。いまもそうですが、サイボウズで学んだ説明責任や質問責任、オープンな情報共有とかを、本当に熱く語っちゃうんですよ。「サイボウズではこんなよい仕組みがあるよ!」と。まるまる真似をしたいわけじゃないけれど、エッセンスを取り入れたい。

でも、社内はそこまで熱くなっていないから、「またサイボウズのこと言ってるよ」「サイボウズかぶれ」って言われたりとか(笑)。あと「そんなの、サイボウズだからできるんだよね」みたいにも言われましたね。


チームワーク総研:前回の記事でも、「サイボウズはできるけど、うちはね」は禁句にしたかったとおっしゃっていました。

礒貝さん:業種も、業態も、規模も、サイボウズとパナソニックでは全然違うことは、もちろんわかっているんです。だけど「サイボウズではできるけど、パナソニックではできない」っていう言い訳はしたくなかったんです。「エッセンスは絶対に取り入れられるはずだ」っていうのを、ずっと言い続けました



それでも、挫折させなかったもの

チームワーク総研:そんなとき、挫折したくなることもあったんじゃないかと思います。礒貝さんを挫折させなかったものって、何ですか?

礒貝さん:正直に言うと......ホントは、いまも日々くじけています。日々嫌になっていて、日々投げ出したいです。それなのに、なぜ辞めないのか? 誰に頼まれたわけでもないのに、なぜやるのか? それは、我ながら不思議です。

ただ、単純に「必要だ!」と思っているんですよね。サイボウズで学んだことが、この会社にとっても必要だし、私にとっても、社会にとっても必要だと、やっぱり思うんです。


チームワーク総研:「会社にとって必要」って、たとえばどういうことですか?

礒貝さん:いいものを取り入れる柔軟さがあったらなぁと思うんですね。「うちは、サイボウズじゃないから......」で思考停止してしまうんじゃなくて、「それ、なんかいいね!」にしたい。

会社にそういう雰囲気があると、働きやすい会社になると思うんです。


チームワーク総研:「なんかいいね!」が、働きやすい環境を創るんだと。


「自分らしさを発揮できる」ことの大切さ

礒貝さん:そうですね。私は組織開発をやっているんですけど、社内の空気を変えたいと思ってきました。「文化創造」のK2では、大切なこととして「自分たちのことは自分たちで考える、自分たちで自分たちを変えていける」を掲げているのですが、それがまさに「それ、なんかいいね!」なんです。パナソニックをそういう会社にしたいんです。


チームワーク総研:自分たちで変えていけるって、ステキだなぁ。

礒貝さん:わたしたちは長い人生を、会社という組織に所属しながら過ごしています。だけど、組織の中で自分を発揮できず、黙って去っていく人もいます。また「どこに所属するか」によって変わる場合もあります。それって、もったいないことだと思うんです。

担当している職務はそれぞれ違う。けれども、自分を発揮できている。「みんな、すごくのびのびしてるなぁ。いきいきしてるなぁ」って状態を作りたいんですよね。


チームワーク総研:長い人生、自分を発揮してのびのびと働いてほしい、と。

礒貝さん:そうですね。ありのままの自分でいて、それを発揮できる。社員一人ひとり、その感覚が持てることが、わたしの願いなんです。



モヤモヤ感こそオープンに議論したい

礒貝さん:実はわたし、2020年の年末に体調を崩してしまったんですよ。そして、4ヶ月ほどお休みをいただくことになったんです。


チームワーク総研:もし、差し支えなければ......理由を教えていただいてもいいですか?

礒貝さん:一言で言うと、心労ですね。

サイボウズでインターンをさせていただいたときに、情報共有の大切さを実感しました。自分の意見や、自分らしさを、自分のペースで出せる。そういう場所が、パナソニックにもあるといいな、と。

そこで、いろんな意見や課題を、社内のグループウェアで積極的に発信していたんです。「これってどう思いますか?」みたいな。

でも、わたしが投稿した意見に対して「反応しちゃいけない」みたいな空気があって。見ている人がたくさんいるのは、なんとなくわかったんですけどね。対面であった時に「あれ、実はね、私も思ってたんです」って言ってくる人もいましたから。

でも、いいねが付くのは、わたしの投稿ではないほうなんです。


チームワーク総研:それはつらいですね。

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礒貝さん:そのとき思ったんです。「思うことはたくさんあっても、表では言えない人が多いんだな」と。

ただ、「顔は見えないのに、壁の向こうの誰かからそっと見られているような怖さ」が、だんだんしんどくなってしまって。その結果、体調を崩してしまいました。もちろん、物理的に頑張りすぎたこともあるんですが。

本当は、こういったモヤモヤ感こそオープンに議論したいし、意見を言えるようにしたい。「思いを持っている人たちが、もっとたくさん声を出せるようにするにはどうしたらいいんだろう?」って、悩みました。


チームワーク総研:ご自身の体験を通じて、意見が言える大切さを実感されたんですね。

礒貝さん:そうなんですよ。仕事って、色々とぶつかることもあるじゃないですか。そんなに簡単じゃない。そう、葛藤することもありますよね。

でも、我慢して出さないのでなく、むしろ開いていくことができるといいな、と思って。K2では、大切なこととして「Will」「オープン」「共創」の3つを掲げているんです。その中でも特にオープン、お互いに開いていくことが鍵になる気がしています。


チームワーク総研:お互いを開いていくとは、思ったり感じたりしていることをオープンに伝えることで、お互いを理解し、モヤモヤがなくなっていく感じですね。

礒貝さん:いまは、ネガティブな気持ちもオープンにしていくことを意識しています。どれぐらいオープンにできるかは人にもよると思うんですけど、社内には「言いたいけど、言えない」人や、さまざまな事情を抱えている人がいると思うので、そこから何か、お互いの気づきにつながるといいな、と。



活動の広がりが実感できた「オンライン雑談」

チームワーク総研:オープンというお話がありましたが、K2では、ほかにどんな取り組みをされていたのですか?

礒貝さん:インターンが終わって、いろんなワークショップをやりたかったんですけど、コロナ禍になってしまったんですよね。対面のワークショップができなくなっちゃったんです。それが非常に残念で。

苦肉の策として「オンライン雑談」をはじめました。オンライン雑談とは、登壇者が話す中、チャットでわいわいやりながら意見を伝え合うイベントです。当時、在宅勤務がはじまったばかりの状態で、こういったイベントはほとんどなかったんですよね。

最初は、10人程度のこじんまりとした感じだったんですけど、徐々に人が増えていき、多いときは200人を越えました。

特に、当時社長だった津賀一宏さんをパネラーにお呼びしたときは盛り上がりましたね。5人のパネラーが津賀さんに質問しながらワイワイおしゃべりする。他の参加者はチャットで自由につぶやく。リアルイベントが中止になる中、当時としては画期的だったと思います。

こうしたイベントの回数を重ねていく中で、「K2の活動が広がってきたかな」という感覚を少しずつ抱いていきました。



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K2ラジオで「思いの火」は消さない

チームワーク総研:その他、どんな取り組みをされたんですか?

礒貝さん前回の記事では、K2を立ち上げた最大のパートナーだった大西達也さんとお話させていただきましたが、大西さん、実は退職されたんですよね。


チームワーク総研:はい、うかがっています。

礒貝さん:K2は大西さんと「パナソニックを変えたい!」という思いで立ち上げてきたので、「この火を消してはいけない!」と思いました。

ふと、社内の状況を観察したとき、みんなが在宅勤務で、オンライン疲れしているなと思ったんですよね。オンラインセミナーもいいけれど「もう疲れた」と。というより、わたし自身がそうだったんです。

「それならば、ラジオか!」と思いました。耳で聴くだけなら、いけるんじゃないかなと思って。そこではじめたのがK2ラジオです。大西さんが辞めるまでの間、合計64本を収録しました。その後も継続しており、現在88回まで公開しています。(※社内ラジオのためリンク先は一部の表示です)


チームワーク総研:どんな内容なんですか?

礒貝さん:1回5分~10分程度の短めのコンテンツです。パナソニックの文化や、K2で大切にしているWill、オープン、共創を元にした「いいチームの作り方」みたいな話をしたり。毎回、何かしらのテーマを決めて話したりするようにしています。


チームワーク総研:社内からの反応はいかがですか?

礒貝さん:それが、結構好評でして。ラジオを聴いて「自分はこう思った」っていう感想を返してくれる人もいます。気軽に聴けるのがいいみたいです。



ライトニングトークで「衆知を集める」

チームワーク総研:さまざまな活動をしていらっしゃるんですね。

礒貝さん:そうそう。あと、2022年3月に「衆知を集めるライトニングトーク」(以下LT)をはじめました。

「衆知を集める」とは、パナソニック創業者の松下幸之助の言葉ですが「多くの人の知恵を集める」ということ。そこでLTも「みんなの衆知を集めようじゃないか!」と。テーマは何でもアリ。5分の持ち時間で、みんなの前で話す形です。

イメージは「創業命知」ですね。創業者のエピソードで創業命知っていうのがあるんです。


チームワーク総研:創業命知......ですか?

礒貝さん:創業者が経営のあり方について悩んでいたある日、「自分の使命はこれだ!」と悟ったことがあったんだそうです。それを社員に伝えたところ、その話を聞いた社員が感動して、「我も我も」と手を挙げて所感を述べたらしいんですね。それが創業命知です。

そういった取り組みが、いま、必要だと思ったんですよ。

というのも、これまでK2でいろんな活動をしてきて、「自分からは、なかなか手をあげないな」って感じてきました。でも、「○○について、□□さんはどう思いますか?」と指名すると、みなさんめちゃめちゃ思いがあるし、めちゃめちゃ喋るんですよ。だから「思いがあるなら、手をあげようよ」って。


チームワーク総研:きっかけがあると、思いを話せるということですね。

礒貝さん:そこで、「ライトニングトークをやります!」と、全社に募集をかけました。1回目の登壇者はパパッと手が上がり、8名の方に話していただきました。

LTのあとは対話の時間を設けてざっくばらんなおしゃべりをします。参加者は84名。小グループに分かれてみなさんに話していただいたのですが、すごく手応えを感じたんですよね。「みんなで話す場って、すごく大事だな」と。


チームワーク総研:まさに、現代の創業命知ですね。

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LTでは、テーマに対して好きなことを話す。 内容がざっくばらんで、とても楽しそう。チャット欄で参加者が自由に書き込めるようにしておくことで、場の雰囲気も明るくなる。「カジュアルなファシリテートを意識している」と礒貝さん。3回目のLTのテーマ「しくじり先生」のときは、参加者が240名集まった。サイボウズは、こうしたK2プロジェクトの運営の支援をしている。

「自分たちで考え、自分たちを変えていく」サイクルをまわす

チームワーク総研:K2プロジェクトは、今後どこに向かっていくんですか? K2の理想とは?

礒貝さん:わたしたちの取り組みに、いろんな意見がある人はいると思うんですよね。だけど、K2に参加しようという人は、オープンな活動や場が好きな人なんじゃないかと思っています。

K2って、プラットフォームなんですよね。社長も一般社員も関係なく、ここに来たら色んな情報を発信できるし、もらえる。いろんな情報のやり取りが行なわれているプラットフォームです。

「こんなことをやりたい!」を表明したり、行動したりしている人がどんどん生まれている状態。そして、人と人が出会い、それに触発されて「自分もやってみよう!」と思う人が増えている状態。起点は、やっぱり人なんですよね。


チームワーク総研:場があるからこそ、アイデアや行動がうまれるのですね。

礒貝さん:そうなんですよ。思いがあって、自分たちで考え、自分たちを変えていくということ。それが思いっきり表現されていたら、すごくいいサイクルが生まれると思う。

わたしの野望は、世界平和なんですよ(笑)。パナソニックって、まだまだ大きい会社ですし、影響力も残っていると思うんですよね。その影響力や存在感をうまいこと発揮すると世界平和につながるんじゃないかなとまじめに思っていて。

いきなり世界規模に行かなくても、例えば人事制度1つとっても、「パナソニックがやっているなら、うちもやってみようかな」みたいな、そういうところからも、影響力って発信できると思うんです。それが徐々に、世界全体に広がっていくと、いいなって思います。


チームワーク総研:ステキな理想ですね。

礒貝さん:最近、K2のコミュニティに集う人々が、少しずつ増えてきているんですよね。みんな楽しめる、温かいコミュニティとして成長している実感があります。育ってるんですよ、コミュニティが。


チームワーク総研:育ててるんじゃなくて、育っているんですね。

礒貝さん:そうなんですよ。育ってる。そこはすごく嬉しいですね。



K2プロジェクトについて動画でもご覧いただけます

コロナ禍においてのプロジェクトの変化、オンラインざつだんの取り組みなどをお話いただいております。

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