ゼミの活動を効率的にするにはどうすればいい?──チーム運営に必要な基礎を学ぶ「チームワーク創造メソッド」
※ベストチーム・オブ・ザ・イヤーのサイトから移設しました
ベストチーム・オブ・ザ・イヤー実行委員会が、学生のために主催する「ビジネスチームワーク体験」プログラム。過去2回、高校生と、中学生に授業してまいりました。今回は、サイボウズ株式会社が大学生に行っている2日間の出張授業を取材してきました。
今回授業を受ける大学生は、法政大学社会学部メディア社会学科の藤代裕之研究室のゼミ生約25名です。2年生から4年生までの混成チーム5組に分かれ、"社会に出て求められるチームとは何か"について学びます。
学校でチームワークは学べない
まずはアイスブレイク。各チームで「好きなチーム」について話し合います。
大学生のみなさんは、"チーム"という言葉を聞いて、どんなチームをイメージするのでしょうか?
子どもの頃に見ていた"戦隊もの"です。色ごとにそれぞれの役割がハッキリしていてわかりやすいからです。
2007年の佐賀北高校の野球部です。その年、甲子園で優勝したんですが、県立の普通科が優勝するって、すごいことで。キャプテンを中心に、自分達の役割を考えながら勝ち上がって優勝したので、印象に残っています。
いろいろな意見が挙がるなか、サイボウズ株式会社の椋田亜砂美さんは「グループとチームの違いは何だと思いますか?」と投げかけます。
私のなかで、グループというとジャニーズのイメージ。ジャニーさんによって集められたっていう受け身な感じというか。チームは目的意識を持って、自分の意志で集まった人たちというイメージがあります。
これに対し、「確かに、スポーツは勝利することを目的として集まっているから、"サッカーグループ"とか"野球グループ"とは言いませんよね」と話し、「グループは、家族や地域社会といった『集団』のことを言いますが、『チーム』は、企業や部活動のような『目的を達成するための集団』のことを言います。」と定義について解説しました。
では、次に"チームワークが良い"という状態について考えてみましょう。
良いチームワークだったと言えるのは、「思った以上に得たものが多かった」など、想定以上の結果が出た時です。つまり、「1+1=2、またはそれ以上」の成果が出たときのことを指します。
社会人になると、上司・先輩・同僚など、初めて会ったメンバーでチームを組んで、目標を与えられます。でも、それまでの学生時代は、テストや受験勉強など、自分のことだけに集中してきているはず。文化祭など、みんなで何かをやるときも、プロジェクトの進め方を先生に教えてもらったことはなかったんじゃないでしょうか。
教育として、チームワークについて体系的に学ぶ機会はないために、社会に出て仕事のチームに入ると、なんとなく自分がどう振る舞っていいかわからなくなり、戸惑いを覚える新入社員が多いです。この2日間の体験を通して、少しでもチームワークや、チームでの動き方について学んでもらえたら、と思います。
その後、今回のポイントとなる「チームワークを発揮するために必要なこと」を紹介しました。
役割分担をするために、お互いのことをもっと知ろう
次に、サイボウズ株式会社 青野 誠さんをファシリテーターに迎え、いよいよ今回の本プログラムのスタートです。
この2日間の目的は「ゼミ生の相互理解・チームワークの向上」と「自分達で議論をして問題を解決できるようになる」こと。
ワークを通じて、1日目は「チームワーク創造メソッド」と「モチベーション創造メソッド」、2日目は「問題解決メソッド」を学んでいきます。
先ほど、チームとは「共通の目標(理想)を達成するために集まった複数のメンバー」のことであり、チームワークとは「チームのメンバーが目標(理想)を達成するために役割を分担し協同すること」であると学びました。
では、チームワークが良くなることで生まれる効果には、どんなものがあるでしょうか。
藤代ゼミで取り組んでいるオープンキャンパスプロジェクトを例に挙げながら、良いチームワークによって生まれる効果には、「効果・効率・満足・学習」の4つがあると説明しました。
1.効果...オープンキャンパスにたくさんの生徒が来る
2.効率...短時間、少人数で目標の来校者数を達成できる
3.満足...関わったメンバーが楽しい、一員になって良かったと思える
4.学習...メンバー自身が成長する、ノウハウが貯まる
さらに、チームワークを高めるためには、以下の5つのプロセスが必要だと説きます。
こうしてチームワークについて学んだあとは、チームの中で役割分担をするために、お互いのことを知り合うワークを実施しました。
「チームメイトの強み、得意そうなこと、頼りになるところをできるだけ多く出してください。本人の意見はいりません」というお題のもと、3分間でチームのメンバーに対するイメージを付箋に書き出します。
ひとりずつ発表してみると、「おもしろい・楽しそう・よくしゃべる」と言われる人がいれば、「根性がある・サバサバしてる・やる気がないときにモチベーションを上げてくれる」と言われる人もいたりして、自分のことを客観的に知りながら、お互いの個性を浮き彫りにすることができました。
次に、「自分の弱みをできるだけ多く書いてください。他人の意見はいりません」というお題にチャレンジ。3分間の制限時間が経ったら、チーム内で自分が書き出した弱みを共有します。「全然そんな風に見えないのに、弱みだと思ってたんだ!」と、相手の意外な一面が見えたりして、さらに理解は深まります。
最後は、「自分の弱みを1つ選んでください。また、その自分の弱みを補完してくれそうな強みのタイプを複数書いてください」ということで、最も自分がなんとかしたいと思っている弱みと、それとは真逆なタイプを書き出します。
例えば、「思ったことがすぐ顔に出る」が自分の弱みだと思っている人なら、「フォローがうまい人・回りを和ませる人」といった具合です。これをひとりずつ発表し、自分がその強みを持っていると思ったら、名乗り出ます。こうすることで、自分の弱みを補完してくれる人を見つけることができるんですね。
個人事業なら弱みを克服しなければいけませんが、チームなら強みを伸ばすことができます。自分の強みを言ってもらえると嬉しいですよね。人の強みを褒めてあげられるのも、ひとつの能力です。
逆に、弱みをさらけ出してみると、意外とすっきりするし「そう思っているなら助けてあげよう」という人も出てきます。「今のチームは強みを活かせているか?」と改めて考えて、強みを生かせる仕事の分担にしてみましょう。
モチベーションを高めるには?
この日の最後は、チームワークに必要なプロセスの1つにある「モチベーション」について学びます。
「これまでモチベーションが高かったときはどんなときですか?」という問いに対し、学生さんからは「入学したばかりのとき」「褒められたとき」「アイデアが浮かんだとき」などの答えが挙がり、「逆に、低かったときは?」という投げかけには「中高一貫校の中3」「怒られたとき」「アイデアが出ないとき」といった声が出ました。
これを受け、青野さんは「モチベーションとは『理想を実現するためのやる気』を指し、モチベーションを高めるには、『強いやる気を引き起こす理想を作り出すこと』が重要」と説き、モチベーションを高めるための3点セットを紹介しました。
仕事とは、やるべきこと(チームの理想)を実行すること。
「やるべきこと」で「できること」を実行すると、お金がもらえます。この重なりを"ハッピーセット"と呼んでいて、ここが「やりたいこと」に重なっていると最高です。
加えて、モチベーションとテンションの違いについて、テンションは一過性であるのに対し、モチベーションは継続性があると解説。
若いうちは、やりたいことがどんどん増えていく傾向にありますが、できることをまずは増やすことが大事。できることが多くなれば、認めてくれる人が多くなるので、選択肢が増えるし、自立した人になります。できることを増やすことは難しくはなく、今からできることなので、ぜひトライしてもらえれば。
最後に「自分のこと、学校(ゼミ)のことについて、それぞれ最低3つずつ、解決したい問題を考えてくる」という宿題が出されました。学生のみなさんは、どんな問題を抱えているのでしょうか?
2日目の模様は後編へ続きます。更新をお楽しみに!
著者プロフィール
ベストチーム・オブ・ザ・イヤー
ベストチーム・オブ・ザ・イヤーは、2008~2016年の間、最もチームワークを発揮し、顕著な実績を残したチームを、毎年「いいチーム(11/26)の日」に表彰したアワードです。