メンバーのモチベーションはマネジメントできる?──やる気を引き出すシンプルな方法
チームや部門の生産性を高めるには、メンバー一人ひとりのモチベーションを良い状態に保つことが重要です。しかし、マネージャーから見ると、メンバーにやる気や積極性が感じられず、お困りの方もいらっしゃるかもしれません。
そこで、メンバーのモチベーションを高めるマネジメントの方法について考察します。
モチベーションとは何か
そもそも、「モチベーション」とはどういう意味があるのでしょうか。
実用日本語表現辞典によると「行動を起こす契機となる刺激や意欲」と書かれています。ビジネスの場面では「仕事をする上での原動力」だとも言えるでしょう。
また、リクルートマネジメントソリューションズの「外発的動機付けとは」によれば、モチベーションには、大きく2種類あると言われています。
心理学の考え方で、動機付けには「外発的動機付け」と「内発的動機付け」の二つがあるとされている。外発的動機付けは行動の要因が評価・賞罰・強制などの人為的な刺激によるものであるという考え方に対し、内発的動機づけは行動要因が内面に湧き起こった興味・関心や意欲によるものであるという考え方である。
一般的には、外発的動機付けの効果は一時的であり、人格的成長には必ずしもつながらないという見解があるが、外発的動機付けによって行動をしているうちに、次第に興味・関心が生まれ内発的動機付けへと変化していくこともあると言われる。
引用:外発的動機付けとは | リクルートマネジメントソリューションズ
たとえば、「外発的動機づけ」の場合、報酬や地位向上を目的にすることで、やる気を引き出すことが期待できます。「営業成績を頑張れば、冬のボーナスが上がるぞ!」といった目標で頑張れるタイプのメンバーの場合は、望みがある限りやる気を維持してくれるかもしれません。
しかし、外発的動機づけの場合、経済の環境や自社の状況など、外的要因に影響される部分もあり、モチベーションをマネジメントする上では限界も予想されます。
そこで、外的要因に左右されにくい日々のモチベーション向上を考え、「内発的動機づけ」に視点をおくのはいかがでしょうか。
まずは、メンバーの「理想の状態」を知る
「内発的動機づけ」=「内側から沸き起こる意欲」を引き出すにはどうすればよいのでしょうか。
まずは、メンバー一人ひとりの「理想の状態(その人の目標)」を知ることが大切です。たとえば、「どのような人材になりたいのか?」「今のチームで何を提供できるようになりたいのか?」などあります。
必ずしも、あなた自身の想いと一致するとは限りませんが、まずは、メンバーの想いを大切にしましょう。
ひょっとしたら、なかには「目指したい理想がわからない」というメンバーもいらっしゃることと思います。むしろ大多数かもしれません。そこで後半は、メンバーのモチベーションをマネジメントする上で有効なステップを紹介します。この方法を用いながら話し合い、少しずつ理想を描いていくことで、メンバーのモチベーションは向上します。
モチベーションをマネジメントする3つのステップ
メンバーのモチベーションをマネジメントするためには、「"できること"を知る」「"やるべきこと"と突き合わせる」「"やりたいこと"を認識する」の3つのステップがあります。サイボウズではこれを、「モチベーション創造メソッド」という方法論に整理しています。
それぞれについて、具体的に見ていきます。
STEP➀「できること」を知る
「できること」とは、スキルのことです。どんな人にも、いくつものスキルがあります。メンバーが得意なことを聞いてみましょう。Excelが得意、フランス語が得意、といったビジネス的なスキルだけではありません。「発想が豊か」「やさしい」など、性格・性質に基づくものもあるでしょう。「毎日ランニングを欠かさない」など、その人の生活に由来したものもあるかもしれません。
「できること」の良い点は、どんどん増やしていくことができることです。次に述べる「やるべきこと」と突き合わせた時、必要なスキルを補強することで、増やしていくことが可能です。
STEP②「やるべきこと」と突き合わせる
「やるべきこと」は、業務上必要なことです。これは無数にあります。例えば、お客様に何かを提案する場合、「お客様の要望を引き出す」「アイディアを出す」「実現可能性を検証する」「データを整理する」「企画書にまとめる」「関係者の意思疎通を図る」など、さまざまな側面があります。
数々の「やるべき業務」の中で、メンバーの「できること」を発揮できる環境を、まずは一つでも良いから用意するのです。
「やるべきこと」が「できる」と、周囲から感謝をされる機会が増え、モチベーションが高まる大きな要因となります。決して目立つ事柄である必要はありません。小さなことからはじめ、自信を強くし、モチベーションを育てていくのが良いでしょう。
STEP③「やりたいこと」を認識する
「できること」→「やるべきこと」→「できることの追加」→「やるべきことの追加」......これを繰り返していくと選択肢や経験値が増えていきます。様々な「できること」を活用できる環境になったとき、「やりたいこと」を認識することができます。
マネジメントに必要なのは、関係づくりと場づくり
ここまで、メンバーのモチベーションをマネジメントする方法をお伝えしました。
一般的に難しいといわれるモチベーションのマネジメントですが、「できること」「やるべきこと」を整理し、行動を繰り返していくことによって、「やりたいこと」が見えてきます。「やりたいこと」とは、つまり、理想です。メンバーが理想を持つことができれば、自然と内発的動機づけにつながります。
最も大切なことは、一人ひとりを良く知る事です。そのために、メンバーが安心して本音で話せる環境をいかに提供できるのか。日頃から、1on1などメンバーの想いを共有する機会を設け、話してもらえる関係づくりをしていくのがよさそうです。
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著者プロフィール
三宅 雪子
チームワーク総研研究員・編集員。組織におけるチームワークを探求。働く人の強み・魅力を引き出し、人と人との関わりをチームの生産性へつなぐ道すじを探る。