共感する仲間はどう集める? 想いを1つに全員が行動できる「ONEチーム」の作り方
※ベストチーム・オブ・ザ・イヤーのサイトから移設しました
2013年11月に始動した「社会を変えるチームを創造。次世代リーダーフューチャーセッション」。2014年1月18日にイトーキ東京イノベーションセンター「SYNQA」で第2回が開催され、男女約50名が集まりました。
フューチャーセッションでは、社会を変えたいとの想いを持ったメンバーにチームビルディングのノウハウを共有し、実際にチームを創って活動するためのセッションを4回にわたって行います。第2回目は自分の想いを伝え、共感してくれる仲間の集め方とチームの作り方をレポートします。
第2回フューチャーセッションの流れ
1.チェックイン
6.チェックアウト
フューチャーセッションの第1回のレポートもどうぞ。
「全員がワンチームになること」を意識する――チェックイン
存在するだけで日本にインパクトを与える、社会を変えるチームを創り出そう!
第2回フューチャーセッションの幕開けとなる「チェックイン」で、ファシリテーターを務める野村恭彦さんがこう呼び掛けました。「社会を変えるチームを創る」と聞くと、新たに組織や団体を結成するのは大変......と構えてしまうかも知れません。
しかし、野村さんは「チームの存在に共感する仲間を増やすことが大切」と力を込めます。チームに共感する仲間が多く集まれば、チームメンバーだけはできないことが実現でき、「社会を変える」という目標にも近づきやすくなるからです。
野村さんはそんなチームを「存在共感チーム」と名づけ、キーになるのは「仲間を集める力」だと続けます。
「各チームで仲間を2人以上連れてくること」「チームのFacebookページで100いいね!以上獲得すること」――。前回与えられたチームのミッションは、実は仲間集めの一環。セッションの1つ1つに、チーム作りの秘訣が散りばめられていました。
参加者全員が存在共感チームとして活動すること。野村さんはそれを「ONE存在共感チームの原則」として、以下の3点を掲げます。
【ONE存在共感チームの原則】
1.皆の力を使ってでも目標を達成する
2.サボタージュ(サボること)には厳しい、だが決して見捨てない
3.互いのビジョンに共感し、相互応援している
既存チームはブラッシュアップ、新チームも発足ーーチームビルディング
続いて「チームビルディング」です。参加者が2人1組になり、メンバー全員が存在共感チーム(ワンチーム)になるために大事なことを話し合いました。各ペアの発表内容は以下のものです。
- 共通の目的を持って意識する
- お互いのことを知ろうとする
- 「自分ゴト」として考えてみる
- よい社会のイメージを具体的に共有する
- まずは相手の話を「なるほど」と受け止めてみる
- 他チームの意見をポジティブに取り入れて"養分"にする
- お互いの価値観の違いを認め合う
参加者の意識や姿勢で目立ったものは「まずは相手のことを受け入れること」でした。これは、この場をともにする全員が1つにまとまるための重要なキーとなっています。
存在共感チームとして動く意識を共有した後は、「プロアクションカフェ」に進みます。各チームのリーダー、やりたいことをはっきりさせたい人がテーマオーナー(話し手/テーマ提起者)となり、思いの実現に向けて仲間と語り、助言を得ます。
進め方はこうです。テーマオーナーは「本当にやりたい大切なこと」を15分で語り、その他メンバーはその思いを引き出す役割に徹します。対話を通じて見えてきた「社会を変えるチーム」を再定義し、A4用紙の裏面に「社会を変えるチーム名」と「想い」をつづります。
「新しいチームが登場してもいい」と野村さんが話す通り、このプロアクションカフェを通じて新たに3つのチームが誕生しました。発展途上国を支援する「世界におんおくり」、地方から情報発信を行う「エリアル」、読み終わった本を共有する「シェア図書館プロジェクト『Shablio』(シェブリオ)」――です。
想いを振り返りながら"チームの形"を整えるーー存在共感チームの個性を創り出す
これまでのプロセスを通じて、11もの「存在共感チーム」ができあがりました。次はチームの「個性を創り出す」ステップです。具体的には、チームのビジョンやブランディング、アクションを起こしてほしい人を決める工程です。
存在共感チーム作りのヒントを探るため、新たに誕生した2チームを追いかけてみました。
チーム「シェア図書館プロジェクト「Shablio」(シェブリオ)」の場合
チーム発足の思いを語る
3.11の震災で仕事がストップしてしまい,お金の在り方について考えたことがきっかけで、シェア型図書館の構想を思いついたんです。
リーダーの加藤貴之さんは、Shablioを立ち上げた経緯をこう語ります。Shablioは2011年の5月からカフェを中心に、月に1〜2回の読書会を開いています。
参加者は読み終わった本のうち、ほかの人に読んでもらいたい本を持ち寄ります。会で参加者同士が持参した本を説明し、全員がその場で気になった本を1〜2時間読み、各自が欲しい本を持ち帰るというスタイルです。
第1回目の参加者はわずか6人でしたが、その活動内容が口コミで広がり、30人以上になることも。次第にカフェでは開催しきれないほどの大所帯となり、開催日を月2回に増やしたそうです。
共感してくれる新しい仲間を集う
参加者の森川さんはShablioのビジョンに共感、チームに新たに参加しました。シェアハウス住まいの経験がある森川さんは「シェアハウスにもシェアライブラリーのような本棚があった」と述懐。ここに共感した加藤さんが「本棚は最もミニマムな形の図書館だと思うんです」と声をかけ、お互いが賛同し合いました。
共感存在チームの絆は、個人の経験やちょっとした思いが重なりあうことで、より強固になっていくのかもしれません。
チーム「30歳からの働き方Reデザイン」の場合
自分が感じた問題意識から、チームを作っていく
長時間労働で疲れているし、余裕もない。もしかしたら働く大人世代が幸せではないのかも?
リーダーの山野宏子さんは出産後、ほかの働くママたちとかかわる中でこんな問題意識を持つようになりました。近年、場所や時間から自由になる"ノマド"な働き方が提唱されていますが、「皆が実現可能な働き方とはいえないかもしれない」(山野さん)。
「まずはキャリアを見直す場や仲間が必要。幸せに働くために、学び続けることも欠かせない」――。この山野さんの思いを原点に、チームのビジョンを「場所のREデザイン」「自分らしく幸せに働く30代を増やす」といった形に磨き上げていきました。
ブランディングを考え、チームの個性を見いだす
30歳からの働き方Reデザインは、チームの個性を見いだすために、ブランディング(チームのキャラ立ち)に関する議論を進めました。まずはメンバーがチームに参加した思いを振り返り、「メンバーの組織やキャリアがバラバラで、目指す道もひとつではない」「働き方本を読んでもそこに登場する人と自分の間には乖離(スキマ)があるように感じる」といった意見を出し合います。
「ニーズが多様化している」「スキマにニーズがあるのでは?」といった議論が起こり、「土の中に"根"が張り巡り、草が生え、花が生え......と成長していくイメージが私たちにはぴったりなのでは?」というように、チームの個性を定義していきました。
「誰にどうなってほしいか」を具体化するーーチームの存在共感ストーリー作成
存在共感チームの個性を定義した後は、ストーリーを作成します。チームの働き掛けを届け、行動を変えたい対象者を洗い出し、ペルソナ設定を行います。ここでは、シェアを通じて地方を元気にするチーム「シェアビレッジ」のペルソナ作りを見てみましょう。
「シェアビレッジ」の場合
シェアビレッジの活動を誰に届ける? 最初のペルソナ設計
シェアビレッジのメンバー全員の共有認識は「都会でモヤモヤしている若者」に「行動を変えてもらいたい」ということ。チームで話し合いをする中で新たに「おばあちゃん」というキーワードが出てきました。
この「おばあちゃん」というキーワードを原点に、「地方を元気にするために、おばあちゃんと若者をどうつなげよう?」といった問いが生まれ、「その若者」は具体的にどんな人かを定めていきました。「都会に居場所がないと感じている」「行き詰まっているかもと感じている」など、若者のペルソナが具体的に見えてきました。
【議論から生まれたペルソナ像】
- 仕事はそこそこ頑張っている
- このままでいいのかとモヤモヤしている
- 今までとは違う自分に憧れている
- 年1回は帰省する
- アウトドアや自然に興味がある
これらの議論やブレストを経て決定したペルソナは、「都会に住む25歳の若者"25歳都会ちゃん"」――です。
25歳都会ちゃんにリーチするには? 発信手段を考える
25歳都会ちゃんにシェアビレッジの取り組みを共感してもらうには? 次は発信手段の検討です。「コミュニティが必要なのでは?」といった意見から始まり、コミュニティに積極的に参加できない人を想定。「まずはシェアビレッジの自分たちが働きかけよう」と話が進んでいきます。
ここでも「モヤモヤ」がキーワードに。「仕事・キャリアに悩む人が参加する転職/自分探しイベントが狙い目では?」といった意見に、メンバーがうなずきます。同イベントへの露出を増やすことで、コミュニティに参加してもらえる機会が増えるという結論になりました。
11チームによる本日のまとめを発表ーープレゼンテーション
フューチャーセッション開始からすでに数時間が経過し、全11チームが活発な議論を進めました。プログラム「プレゼンテーション」では、今日定めたチームの活動方針を宣言し合いました。それぞれのチームが社会をどう変えていくか、見てみましょう。
シェア図書館プロジェクト「Shablio」
Share(シェア)+Bibliotheque(図書館)=Shablioです。本と人とをつなげるハブを目指します。新メンバーも集まったので2月から活動を開始します。
baby step cafe(元「~きづく×つくる×つなぐ~カフェプロジェクト」)
ファシリテーターが1杯のコーヒーを通じて、モヤモヤした人とその人の悩みを解決する人を結びつける場を作ります
Share Life Project
人と動物が幸せに過ごせる社会を目指し、猫と暮らせる街づくり『ハローキティプロジェクト』を進めていきます
ねぇねぇ、今日Spark行こうよ
スポーツを通じて子どもに希望を与えるチームです。3月までに1度50人規模のイベントを行います
アシュラワーク
自分の強みや弱みがわからない人向けに、「誰でも得意なことを生かせるんだ」という気付きを与えるイベントを開催します
30歳からの働き方Reデザイン
働く30代向けのワークショップを3月までに開きます。親和性のあるチームと一緒になって活動するのもよいと考えています
シェアビレッジ
『おばあちゃんの若者が都会と田舎の自分を好きになる』をチームビジョンに掲げ、田舎で自身が輝ける体験や発見をしてもらい、周りの人に田舎の魅力を伝えてもらう活動をします
アラシエ(元「チームを加速させるためのあらゆる支援をする」)
他チームの活動のヒントになるよう、チームの体験談や失敗事例を集め、あらゆる体験が誰かの役に立つような場を作ります
学びの機会を増やして好きを見つける
悩める20〜30代向けにワークショップ『作家の時間&ブッククラブ』を提供し、価値観を広げてもらうことを目標にします
世界におんおくり
まずは想いに共感する人を集め、その国が求めていること、僕らができることをブラッシュアップして初回のイベントにつなげます
エリアル
IターンやUターンをして町で暮らす人が、都会に暮らす人向けにリアル中継を行います。映像を流す人に実収入が生まれる仕組みを作ります
新たに誕生したチームも含め、それぞれが日本の社会を変えていくようなチームにどう育っていくか、その活動に期待が集まります!
2回目の感想と次回のステージは?ーーチェックアウト
第3回フューチャーセッションはビジネスモデルを考えます!
最後のチェックアウトで野村さんから力強い宣言がありました。チームを作って終わりではなく、やりたいことを実現するための道標を決める。それがビジネスモデルの策定の狙いです。チームの活動内容がより具体的になり始めたのか、参加者の皆さんの表情がほころび、ワクワクしているように見えたのが印象的でした。
「どうすればさらにチームが面白くなるか、仲間が集まるかを、リアルやオンラインの場で話し合ってください。次回までにFacebookページの『いいね!』を200集めて、2人まで仲間を増やしていきましょう」――チームのミッションも提示されました。
フューチャーセッションに参加してぶっちゃけどう?――懇親会より
最後は懇親会です。所属チームを超えて皆が語り合い、「存在共感チーム」の意識を高めていきます。参加者に本セッションの感想を聞いてみました。
普段話せない業種・業界の方と情報交換をして、東京に住む方も地方の情報を欲していることがわかり、大きな収穫でした。地方で暮らす働く若者の映像をコンテンツとして提供する目標を、必ず叶えたいです。
こう話すのは、今回が初参加でチーム「エリアル」を立ち上げた東信史さん。この日のために関西から上京するなど、思いは人一倍。チームの議論を経て、志を新たにしていました。
自分を含めてチームの仲間たちがまさにペルソナなんです。私たちが自分ゴトとして実現したいことだからこそ、目標を見据えやすく、スムーズに設定できたと思います
「30歳からの働き方Reデザイン」の吉永さんは、ペルソナ設定を振り返りながらこう話してくれました。また、チームリーダーの山野さんは存在共感チームについてこうまとめてくれました。
今回『全体でワンチームであること』を意識できました。初回のセッションでは他チームの活動をあまり見られませんでしたが、今回はお互いに応援し合いながら、視野を広げられた。これからもチーム同士、良い刺激を与え合いたいです(山野さん)
少しずつ形を整えながら個性を生み出し、再び始動した11のチーム。フューチャーセッションは残すところあと2回。果たして各チームはどんな進化を見せてくれるのでしょうか。
第3回フューチャーセッション 参加者募集!
本フューチャーセッションは全4回。第3回目は2014年2月22日(土)に開催されます。上記のチームの活動に興味を持った方、できたチームに参加してみたい方向けに、追加で参加者を募集しています。特設ページの「申込みフォーム」よりご応募ください。
著者プロフィール
ベストチーム・オブ・ザ・イヤー
ベストチーム・オブ・ザ・イヤーは、2008~2016年の間、最もチームワークを発揮し、顕著な実績を残したチームを、毎年「いいチーム(11/26)の日」に表彰したアワードです。