U35世代の思いから生まれた9チームは、社会をどう変えていく?――第1回「次世代リーダー フューチャーセッション」
※ベストチーム・オブ・ザ・イヤーのサイトから移設しました
ベストチーム・オブ・ザ・イヤー実行委員会が主催する「社会を変えるチームを創造。次世代リーダーフューチャーセッション」が、イトーキ東京イノベーションセンター「SYNQA」(東京・中央区)で11月30日に開催。熱い想いを胸に秘めた"U35"(35歳以下)の男女約40名が集まりました。
フューチャーセッションでは、社会を変えたいとの想いを持ったメンバーにチームビルディングのノウハウを共有し、実際にチームを創って活動するためのセッションを4回にわたって行います。今回は第1回目の模様をレポートします。
第1回フューチャーセッションの流れ
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周囲に変化を及ぼすチームを目指そう――チェックイン
冒頭のプログラム「チェックイン」では、ファシリテーターを務める野村恭彦さん(株式会社フューチャーセッションズ)が「存在するだけで周りのイマジネーションを喚起し、社会を外側から変えていくようなチームを目指しましょう」と呼びかけました。
チーム創りのポイントは、皆に応援してもらいながら皆で夢を実現すること。異なる意見をぶつけ合って相手を説得るのではなく、互いの違いを理解して応援し合うような関係を目指すこと。
全4回のセッション終了時における成功要件は3つあり、メンバーはこれらの要件を満たすために今日から活動をスタートします。
(1)チームのファンが1,000人以上いる
(2)ビジネスモデル仮説ができている
(3)イベント開催が決まっている
ここからは早速、実践を開始。まずは「最高のチーム経験」をテーマに隣合った参加者同士で1分半ずつ対話する中で、全員の緊張が徐々にほぐれていきます。
チーム作りのためのヒントをもらう――ゲストトーク
次のプログラム「ゲストトーク」では、さまざまな業界で活躍するゲストからチームに関連する問いに答える形で話を伺いました。各ゲストが7分話した後、隣同士で3分感想を話し合います。
東京ワーキングママ大学 大洲早生李さん
一人目は、ママたちが子連れで参加できるビジネススクールを主宰し、女性の働き方を支援する活動を行う大洲早生李さん(東京ワーキングママ大学)。
「社会を変えるチームはどのように始まる?」との問いに対し、ワーキングマザーの環境を変えたいと思い立ったころの経験を元に話しました。
「想いを持つ人の問いからチームは始まると思います。シンプルなひとつの問いで、どれだけ多くの人にメッセージを伝えられるかが大切。本質的な課題は何でどう解決するか、チームの強みは何か、どうすることで人の心に残りたいか、利益を生む商品やサービスを作り持続可能な組織にするためにはどうするべきかを丁寧に考えて」
大洲さん自身、現在「ゴレンジャー」と名づけた女性チームを結成していますが、過去にチーム創りで失敗した苦い経験もあるのだそう。「ゴレンジャーはひとつの例ですが、メンバーそれぞれの個性や強みを分析して、それぞれに合う役割を担ってもらうことが大切です」とアドバイスしました。
日本唐揚協会 安久鉃兵さん
二人目は、「唐揚げを通じて世界平和を目指す」をスローガンに掲げて活動を続ける安久鉃兵さん(日本唐揚協会)。
「どうしたら存在するだけで社会を変えるチームができる?」との問いに対し、自らが主宰を務める日本唐揚協会設立時の体験を元に語りました。
「チームが社会に与えるインパクトは重要です。『嬉しい・楽しい・大好き』の要素を意識するのはもちろん、チーム名のインパクトも大事だと思い『何それ?』と言われるような名称にしました。もちろん名前だけでなく、数字のインパクトも欠かせません。会員を半年で1,000人集めたところで、大企業からオファーをいただけるようになりました」
イトーキ オフィス総合研究所 谷口政秀さん
三人目は、未来の働き方や働く場について研究を行う谷口政秀さん(株式会社イトーキ オフィス総合研究所 所長)。
「社会を変えるチームはどんなサポートを必要としているのか?」との問いに対し、企業内に存在する壁を例に語りました。
「会社では個人が任された範囲を超えた仕事をするのは難しいですよね。それは目に見える壁、目に見えない壁があるから。自立したメンバーがチーム単位で、自由かつ円滑に仕事を進めていくための新しい物理的な空間がますます重要になっています」
アイデアを形にするために仲間から引き出してもらう――プロアクションカフェ
次のプログラム「プロアクションカフェ」では、自分のアイデアを仲間に語り助言を得ながら、実現に向けて形にしていきます。まず全員が「自分が関わりたい社会を変えるチームのテーマ」をA4用紙に記載。野村さんが手を叩いた数に合わせてグループを作り、グループ内で自分の名前と一言を伝えます。
こうしてできた4人1組のグループ内でひとりがテーマオーナー(話し手/テーマ提起者)、ほかの全員が引き出し役となって、テーマオーナーに質問します。テーマオーナーに与えられた時間は15分。15分間で「本当にやりたい大切なこと」を語り、「社会を変えるチーム」として再定義し、A4用紙の裏面に「社会を変えるチーム名」と「その想い」を綴ります。何人かの掲げる想いを見てみましょう。
「世界ダチョウ化計画」を実現したいと話すのは加藤貴之さん。ダチョウは豚や牛などと比べて低コストで育てることができ、美味しくヘルシーなのだとか。しかしまだ普及しているとは言い難く、生産者を増やすためには食べる人を増やすことが必要で、そのためにまずは人の意識を変えていくことが大切だと加藤さんは主張します。
これに対しメンバーからは「『日本ダチョウ協会』を作ってみては?」との提案が寄せられます。一方で「広報チーム」「食の危機を救う」などのキーワードをチーム名に入れて、目的をわかりやすく伝えるのはどうかといった、先ほどのゲストトークを反映する意見も。加藤さんは「世界ダチョウ計画実行委員会」とチーム名を記載していました。
「シェアする社会」を実現したいと話すのはリユウさん(女性)。互いに所有しているモノやアイデアを共有し合うことで助け合いにつながるだけでなく、心も豊かになれる持続可能な社会を目指します。「なぜシェアをしたいと思ったか」の問いに対し、リユウさんは3.11をきっかけにマインドがリセットされたことを挙げていました。
その後の再定義では「シェアのファンをどう作っていくか」という話へ移行します。シェアの便利さや嬉しさを世に発信するチームを作り、シェアしたいと手をあげられる環境を作ろうといった意見や「シェアニスト」という名称の団体を作り、まずはインパクトを与えてみてはといった意見が飛び出しました。
熱い想いを発表しチームメンバーを集う――リーダー候補募集
次のプログラム「リーダー候補募集」では、「社会を変えるチーム」としてユニークな「領域テーマ」(編集注:~するためのXXといった機能的なテーマではなく「ワーキングママ」「唐揚げ」など具体的なキーワードが出てくるもの)が9つ募集されました。
自身が掲げるテーマを元にメンバーを集めたいリーダー候補者は約18人。皆の前でテーマ名と想いをプレゼンします。彼らの掲げるテーマをいくつか見てみましょう。
- 農業を通して生きる力を育む
- ユビキタスという指紋認証型の決済サービスを作る
- 食を通じてよい社会を作る
- 新学習指導要領をもとに画一化ではない教育を行う
- 世界ダチョウ化計画実行委員会
- すべての女性が元気な社会を創る
- ミュージカルで日常に感動を提供する
- モノを共有するシェアニスト集団をつくる
- 動物と幸せな生活をシェアする
- マルチワークプロジェクト
- 日本を時間生産性ナンバーワンチームにする
- スポーツを通じて未来を明るくする
- IT技術で経済活性化を目指す
ここから似たような領域テーマ同士でつながって、9つのチームにまとまることになりました。「テーマのジャンルが異なるチームでも一緒になってパワーアップできるチームがあれば合体しましょう」と野村さん。ただし、自分のテーマを安易に丸めるのではなく「加わったチームで一緒に活動できるか」を慎重に判断しながら、チーム探しをすることが大事だと話します。
このチーム探しはなかなか難しく、「教育」「働き方」に関するテーマを持った人達は、比較的スムーズにチーム結成できていましたが、「ミュージカル」など少数派寄りなテーマを掲げるチームはやや苦戦しているようでした。
一方でリーダー候補として登場した「食」「ダチョウ」は、食という共通テーマでまとまったところに、「メディアを作りたい」という機能テーマを出した人がつながって1つのチームになる事例も。食とダチョウはテーマが近接していますが、ここにメディアという異なるテーマが入ることで、大テーマである「食」を外側へ広げていく役割を果たしてくれそうです。
9つのチームで形を発表――プロトタイピング/プレゼンテーション
次のプログラム「プロトタイピング」では、各チームに分かれ模造紙に3つの枠を作り、(1)チーム名、(2)どんなステークホルダーに参加してほしいか、(3)社会を変えるチームが起こしたいことを書き出します。
以下の9チームに分かれ、各チーム2分間で(1)~(3)を発表して本日は終了。
- 未来の働き方/働く選択肢を増やす(R30世代のワークデザイン)
- 教育/学びの機会を増やして好きを見つける
- エンタメ/Musical Life Cafe
- ワクワクを創る/ねぇねぇ今日sparkいこうよ(スポーツ×教育spark)
- 動物/保健所をおもしろくする「Share Life Project」
- IT/チームを加速させるためのあらゆる支援をする アラシエプロジェクト【araciel】
- 食/食の見える化推進プロジェクト 日本ベジ&ミート協会
- マルチワーク/アシュラワーク
- 地域/シェアビレッジ
このなかから世界を変えるようなチームに育つ集団はあるでしょうか。次回以降に期待です!(第1回フューチャーセッション終了後、新たにチーム「~きづく×つくる×つなぐ~カフェプロジェクト」が立ち上がりました)
みんなの感想は?――チェックアウト
閉会前の事務局からのお知らせでは、今後の課題提出や事務連絡に「サイボウズLive」を使うことが発表されました。スムーズな情報共有がチームを強く、厚みのあるものにしていくはずです。
野村さんからは、次回までに各チームでFacebookページを作り『いいね!』数を100ゲットし、新メンバーを2名ずつ連れてくることといったミッションが出されました。
ゲストも「皆さんの思いや熱さをいろいろと聞けて感動しました」(安久さん)、「熱気を感じる1日でした。各ステージでチームを具体化していくなかで日本を楽しくするチームを生み出していきましょう」(大洲さん)と最後に言葉を寄せました。
参加者数人に本日の感想を聞いてみました。「教育/学びの機会を増やして好きを見つける」チームのオカケンさん(男性)は「時間の長さを感じさせない熱気があり、新しいものが生まれてくる手応えを感じます」と語ります。一方で「チーム内でそれぞれの想いを言葉で共有するのが大変でした。丁寧に話し合いを進めながら皆で共通言語を蓄積していきたいです」。
「未来の働き方/働く選択肢を増やす」チームのヨシナガ(ナカムラ)さん(女性)は「『日本を時間生産性ナンバーワンの国にしたい』という目標を掲げていたので、それに向かっていける活動ができることを嬉しく思います。皆すてきなアイデアをたくさん持っているので勇気をもらえました」と話していました。
現在ひとりのチームとして活動する「イケてる人のミュージカル」のナラさん(女性)は、比較的マイノリティなテーマを掲げていたため、チームを創ることは難しいのではと感じていたそう。とはいえ、自分の想いを曲げてほかのチームに入ることはしたくない......。そんななか、野村さんから「最初はひとりチームでもいいよ。徐々に仲間を増やしていけばいい」と助言があり、思いきって単独チームを立ち上げました。
「ミュージカルに興味がない人をどう巻き込むかを徹底して考えたいです。いろんな方と話をすることで、できないことはないと前向きになれました。形にしていくためには仲間集めのときにゴールを伝えること、方向性を詰めていくこと、内側と外側でファンを増やしていくことが大事だと思いました」
バラバラだった「個」が9つのチームを創り出した4時間となりました。
第2回フューチャーセッション 参加者募集!
本フューチャーセッションは全4回。第2回目は2014年1月18日(土)に開催されます。上記のチームの活動に興味を持った方、できたチームに参加してみたい方向けに、追加で参加者を募集しています。こちらの「申込みフォーム」よりご応募ください。
著者プロフィール
ベストチーム・オブ・ザ・イヤー
ベストチーム・オブ・ザ・イヤーは、2008~2016年の間、最もチームワークを発揮し、顕著な実績を残したチームを、毎年「いいチーム(11/26)の日」に表彰したアワードです。