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面従腹背なチームに足りないもの? 「思い」「共感」「コミュニケーション」の3つです――ライフネット生命 出口治明さんに聞く最強チームの作り方【後編】

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※ベストチーム・オブ・ザ・イヤーのサイトから移設しました

大企業から新進気鋭のベンチャー企業まで、大小さまざまな規模でチームを作り、引っ張ってきたライフネット生命保険株式会社 出口治明さんに聞く「最強チームの作り方」。

「チームの在り方」「マネジメントの本当の意味」について聞いた「「とにかく頑張れ」「名刺100枚もらってこい」なんて精神論、有害無益でしょう――ライフネット生命 出口治明さんに聞く、最強チームの作り方【前編】」に対し、後編はチームを作る出発点となる「リーダーシップ」を中心に話を聞きました。

「思い」「共感力」「コミュニケーション力」――本物のリーダーシップを考える

強いチームを作るためにリーダーシップが必要だと思います。改めて、出口さんはリーダーシップをどう定義していますか?

リーダーシップはトップに立つ人に必要な「資質」であり、「やりたいことがあるかどうか」という話です。「これだけはやりたい」という強い気持ちに、人はついていくものです。「東北を救いたい」とか「日本の若者の自殺を減らしたい」とか、はっきりとしたやりたいことがある人を、周りの人は応援したくなる。

ただお金儲けをしたい人に、人はついていくはずないですよね。上の人にやりたいことがあるから、下の人はついていくのです。「強い思い」をどれだけ持っているかということですし、「思い」はリーダーシップに不可欠です。

「何かをしたい」という思いを持つことがリーダーシップの根源にあり、すべてのスタートです。何かをやりたいと旗を上げた人の周りにチームはできていくものですし、思いの強い人がいなければ、チームはできません。トップに思いがないチームは、絶対にうまくいきません。まず思いがあり、それを具体化したのが、理念やビジョンなのです。

リーダーの「思い」だけでチームは機能するのでしょうか?

いくら強い思いを持っていても、言葉にしなければ(メンバーには)伝わりませんよね。下手な話し方だと共感は得られず、いつの間にかメンバーが面従腹背になってしまう。本当に強いチームを作るには、強い共感力が必要であり、それがあることでチームはできあがる。「思い」の次には、「共感」が来るのです。

思いを成し遂げるための仲間が「共感」でつながったら、次は旅です。いざ旅に出てみると、それは山あり谷ありです。メンバーが病気になったり、悪い局面になって動揺したりする。その時に「大丈夫」とていねいにコミュニケーションを取り、落伍者をなくしていかなければなりません。

この「コミュニケーション力」が3つ目のリーダーシップの素養です。「思い」「共感力」「コミュニケーション力」――この3つがあれば、雨が降ろうが嵐になろうが旅はできるものです。

この3つを持ちあわせたリーダーは多いのでしょうか?

すべてを持ちあわせている人は少ないですから、そこはチームメンバーみんなで補えばいいのです。もしリーダーが口下手であれば、「私が代わりにしゃべってあげよう」というメンバーがいればいい。女房役ですね。

限られたメンバーで思いを共有し、チームの力を最大化するにはどうすれば良いのでしょうか?

リーダーは、メンバーの「個性」を見抜かなければ話にならないのです。ですので、「人をよく見る」ことに尽きますよね。「メンバーはそれぞれどんな人なんだろう」という個性を見て、状況に応じて組み合わせていくしかありません。上げ潮の時に弱気な人を登用しても仕方ない。「この人は何が強くて弱いのか」といった得手不得手を見極め、マーケットの状況に併せてチームを作っていく。

困難な局面には我慢強い人を前に立てたほうがいい、あきらめやすい人を出すと「しんどい」となり、それはメンバーにも伝わってしまう。局面に応じて人を組み替えていくことですね。

どんな時に仕事が一番楽しいですか? 一番楽しいのは、上司が自分の特性を見極めて、特性に合った仕事に就かせてくれるときでしょう。「このボスは自分のことを分かっているな、やりたいことを与えられたのでめいっぱい頑張ろう」という気持ちになりますよね。

「思い」をどうすればメンバーに「共感」してもらえるのか?

ライフネット生命保険 出口治明さん

「好きなこと」「やりたいこと」がまずあって、会社という枠を超えてチームを作った人たちを、最近よく目にします。

やりたいことが一緒であれば、そのチームのマネジメントは簡単ですよね。思いをともにしていれば、最初は良い方向に進んでいくものです。

ただし、チームや組織が大きくなる過程では、マネジメントをきちんとやる必要が出てきます。Googleはロシア人とアメリカ人の若者が起業しましたが、二人ともマネジメントが分かっていなかったから、シュミットというマネジメントが分かる人を市場から買ってきた。そうして、組織というチームを機能させたわけです。

人間という動物には物理的な限界があって、1人の人間が常時コントロールできる人の数は10人~30人くらい。それを超えたら、自分の目が届かなくなりますから、きちんとチームや組織を作ってマネジメントをしなければ無理でしょう。それがチームや組織を作る根本要因ですよね。

最初からみんながリーダーシップを持っているわけではない。全員にリーダーシップを持ってもらうには何が必要でしょうか?

共感」が大事になります。仲間を集めるには「共感力」が必要なのです。強い思いは、共感にもつながりやすい。「あまり好きな人ではないけど、あそこまで思いつめているのなら、私が助けなければ」というメンバーが出てくる。人に影響力を出せるのは、強い思いによるものです。

「共感」のベースは、やりたいことや思いによるものです。人格力や人間力ではありません。この人物はいい人で大好きだけど、リーダーとしてはイマイチという人もいます。また「給料がもらえるから」とチームに加わったメンバーではいずれ面従腹背になりますよ。強い思いがなければ、チームは成り立ちません。

そのチームに思いが浸透すれば、後はメンバーが補えばいいのです。これは伊賀泰代さんの名著「採用基準」に書いてある通りで、メンバーもリーダーシップを持たなければいけません。全員が参加意欲――リーダーシップ――を持つ。リーダーだけにリーダーシップを求めると、チームは失敗するということです。

メンバーによって、思いの強さに違いがありそうです。

思いが小さければ小さいチーム、大きければ大きいチームができる。それだけのことですね。これは古今東西の歴史が証明していることです。夢が大きければ大きいほど、たくさんの人をひきつける。太鼓を強く叩けば大きく響く、弱くしか叩かなければ音は小さくなる。同じことですよね。

リーダーシップは訓練によって身につくものでしょうか?

そうです。そのためにはたくさんのケースを知っておく必要があります。「こういうピンチの時、人はこういう対応をしていた」と考えられますから。逆に、知らなければ何も手が打てないのです。

メンバーにもリーダーシップを持ってもらうには、ケースを知っていて、強い思いがあるということが不可欠。「共感」を呼び、「ケースを勉強させる仕組み」をリーダーが作り出せば、メンバーの気持ちは必ず動きます。

出口さんがおっしゃる「仕組み化」とは?

「仕組み化」とは社会や会社のルールから考えてみるといいでしょう。例えば英語を勉強させるには、「TOFEL100のスコアを持ってこなければ採用しません」とする。公務員の世界では、試験がないと昇進できませんよね。これも1つの仕組みです。管理者になりたい人は試験を受けてくださいという公平な仕組みですから、管理者になりたい人は猛勉強しますよね。

仕組みを作ることが、勉強することのインセンティブになります。「勉強しろ」といくら空念仏をとなえても、人は勉強しないものです。会社のチームでも同じです。「試験」をすればいいのではないでしょうか。楽天は英語の試験をしていますよね。試験は1つの例ですが、「メンバーがどうすれば働くのか」を考えることが必要です。

生き残るチームは「変化に対応できる」から。適材適所な楽しいチームを作ろう

ライフネット生命保険 出口治明さんが考える「チームワーク」

「機能しない」チームの特徴はあるのでしょうか?

変化に対応できないチームはいずれ滅びますよ。逆に、生き残るチームは強いからではなく、変化に適応できるからなんです。ダーウィンの進化論と一緒ですよね。世の中の変化に応じたシフトをしない限り、チームや組織は死んでしまいます。これは人類5000年の歴史が証明しています。

20世紀の日本経済はうまく行きすぎたから、変化できないチームが出てきているのでしょうね。テレビで成功した日本企業は、いまだにテレビ万能という考え方でしょう。一方GEは、米国で100年残っている企業の1つでかつては家電メーカーだったのが、今や家電の売り上げは数%です。自らが変わっていったのです。

最後に、強いチームを作るための一番のポイントは何でしょうか?

繰り返しになりますが、「適材適所」を考えることです。人間は自分の得意なことをやっている時が一番楽しいですので、それを生かせるチーム作りをすることです。あとは、楽しくなければイニシアティブは出てきませんので、楽しい毎日、楽しいチームを作ることですよね。

素敵な女性とデートの約束をして、店はお任せしますと言われたら、必死に考えるでしょう。なぜですか? 楽しいからですよね。ところが嫌な上司から飲みに誘われた時は、一生懸命考えないでしょう。近場の飲み屋でいいから、など。それは楽しくないからでしょう。

楽しいチームと面従腹背のチームでは、生産性は圧倒的に違います。人と社会の変化をよく見て、「適材適所」のチームを作り、変化に応じて人をメンテナンスすること。これが普遍的なチームの作り方ではないでしょうか。(談)

「チームの在り方」「マネジメントの本当の意味」「チームワークの真の意味」について聞いた「「とにかく頑張れ」「名刺100枚もらってこい」なんて精神論、有害無益でしょう――ライフネット生命 出口治明さんに聞く、最強チームの作り方【前編】」の記事も併せてどうぞ。

(取材・執筆:藤村能光、撮影:橋本直己

ベストチーム・オブ・ザ・イヤーからのお知らせ

ベストチーム・オブ・ザ・イヤーでは「「社会を変える、チームを創造する」フューチャーセッション」を2013年10月に開始します。「社会を変えたい」「日本を良くしたい」といった思いを持つ同士が集まってチームを作り、ワークショップを通じて解決策を考えるセッションです。全4回のセッションには無料でご参加いただけます。「最強チームの作り方」を実践してみたい方のご参加をお待ちしております。

著者プロフィール

ベストチーム・オブ・ザ・イヤー

ベストチーム・オブ・ザ・イヤーは、2008~2016年の間、最もチームワークを発揮し、顕著な実績を残したチームを、毎年「いいチーム(11/26)の日」に表彰したアワードです。