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「FCバルセロナのように攻め続け、爆速で突っ込む」「メディア界の人材輩出企業に」――東洋経済オンライン、"ぼろ負け"からの大逆転

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※ベストチーム・オブ・ザ・イヤーのサイトから移設しました

競合にぼろ負けだったWebメディアが、わずか4カ月間で日本一に----「東洋経済オンライン」が快進撃を続けている。短期間で実績を出せた秘訣は、編集長の佐々木紀彦さんが発揮する"モンスターエンジン"ばりのリーダーシップとメンバーである編集部員の自主性にあった。『「マネジメントしない」チームで勝ち取った日本一 東洋経済オンライン、ぼろ負けからの大逆転【前編】』に続き、チームで大きな目標を達成するための秘訣について聞いた。

リーダーは「爆速で突っ込むモンスターエンジン」

「佐々木さんは何事にも真っ先に爆速で突っ込んでいくモンスターエンジン」だと編集部の伊藤崇浩さんは評する。「下の人間は『俺も続くぞ』という気になるし、上の人もフォローしたいと思うようだ」(伊藤さん)

佐々木さんは米スタンフォード大大学院で修士号を取得(国際政治経済専攻)。スタンフォードのグループワークで「みんなの意見を聞きながらも、最後はリーダーが独断でまとめ、ガンガン決める」リーダーシップを学び、チーム運営にも生かしているという。

東洋経済オンラインの"モンスターエンジン" 佐々木紀彦編集長
東洋経済オンラインの"モンスターエンジン" 佐々木紀彦編集長

例えば、自分に決裁権がないことでも強引に決めてしまい、決めた後に担当部署と相談する。「決裁が下りないときもありますが(笑)。FCバルセロナのサッカーのように常に攻め続ける。攻撃が最大の防御」(佐々木さん)

朝令暮改を恐れないのがモットーだ。失敗を恐れずスピーディに動き、トライアンドエラーを繰り返して修正していく。「佐々木さんはよく『これダメだった!』とすぐにやり方を変える。意地を張って偉そうにしたりはしない」(伊藤さん)

佐々木さんは「人に嫌われるのがまったく怖くない」とも。「相手の意見が間違っていると思ったら年上でもばんばん言う。"ほうれんそう"(報告・連絡・相談)はあまりやらない」

モンスターエンジンの暴走でチームがバラバラにならないよう、チーム全体に目を配る役割は伊藤さんが引き受ける。「ムードメーカーになってほしいと言われているので、明るくいいチームにしたいなと」(伊藤さん)

"問題児"が成果を出せる新しいフィールドに

東洋経済オンライン編集部の伊藤崇浩さん
東洋経済オンライン編集部の伊藤崇浩さん

東洋経済オンラインの編集部員は、自ら記事を書く記者としての仕事より、ライターを探して執筆を依頼し、原稿を取ってくるという編集者としての仕事の比重が大きい。「オンライン編集部は、書籍編集を除くと初めて生まれた、本格的な編集者の仕事」でもある。

佐々木さんは記者職も経験しているが、「人の良いところを見つけるのが得意で、いろんな人とコラボしながら企画を出したり、ものを作るのが好き。記者より編集者に向いている」と自認。「編集者の才能が評価される場所ができ、いままで評価されなかった人が評価されるようになった」と実感している。

伊藤さんも実は、以前の部署では"問題児"。「入ってくる前は悪い評判しか聞かなかった」と佐々木さんは振り返る。「同期はもっと優秀で。『なんで東洋経済にいるの?』って言われていた」と本人もその見立てに同意するが、オンラインの編集者の仕事は「性分に合っていた」(伊藤さん)ようで、今では「金持ちドクターと貧乏ドクター」や「注目の中高一貫校 校長が語る我が校のDNA」など、ヒット連載を複数かかえる敏腕編集者だ。

読者の評価が手応えに 「ヤフトピ」もモチベーション

常に記事の反応を見る

Web媒体の良さは「人の評価が多様になること」だ。週刊東洋経済など紙メディアの場合、記者や編集部員同士で良い記事を評価したり、大きな特集記事ならば読者から反響をもらうこともあるが、短い企業記事などは反響を確かめる術がなかった。

Webの場合はページビューがすぐ分かる上、TwitterやFacebookなどソーシャルメディアで反響を確かめることもできる。Yahoo!ニュースなど外部サイトへの記事配信を積極的に行っており、Yahoo!JAPANトップページの「トピックス」(ヤフトピ)に記事が掲載されることもある。

ヤフトピへの掲載は「革命的だった」と佐々木さんは言う。ヤフトピに載ると数十万、数百万単位のページビューが獲得でき、編集部員と同世代の20〜30代も読んでいるため、「テレビに出るような効果があり、記者冥利に尽きる」。編集部員同士でも「お前きょう日本のメディアを動かしたな」などと話題になるという。

「日本経済新聞の記者は、1面の記事を書いて世論を生み出したり企業を動かす感覚を肌で知っているが、東洋経済の記者はそれを味わう機会があまりなかった。ヤフトピは日経新聞に出る以上の効果があり、世の中にインパクトを与えられる」(佐々木さん)

伊藤さんは「びっくりさせたい」がモチベーションだと話す。「みんな、急にすっげー面白い連載を始めるんですよ。それを見ていいなぁと思うし、自分もやりたい、面白いと言わせたいと思う。これからも『面白いな』って感じることをやり続けたい

チームの前に個人あり 「メディア界の人材輩出企業になりたい」

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デスク横のスペースでの雑談から企画が生まれる

編集者や著者が個々に独立して判断し、その集積で成果をあげている東洋経済オンライン。編集委員や論説委員など"お偉いさん"以外は、誌面のテイストに合わせて個性を押し殺した記事を書くケースも多い旧来の新聞や雑誌とは一線を画している。

今後は「カリスマ記者やカリスマ編集者をどんどん作りたい」と佐々木さん。Webでは名前と顔と"フェチ"を発揮し、個人をブランディングしていくことが大事と考えているためだ。「これから動画も始めるし、イベントビジネスも拡大する。編集者や記者は、顔を出してインタビューワーやコメンテーターになったり、イベントのモデレーターもできるようにしたい」

メディア激動の時代。オンライン編集部からは「どこに行っても1人でやっていけるプロデューサー」を輩出したいという。「1人立ちして東洋経済を辞めてもいいと思う。メディア界の人材を輩出するリクルートみたいになりたい」

日本一になった「東洋経済オンライン」の成り立ちをまとめた前編『「マネジメントしない」チームで勝ち取った日本一 東洋経済オンライン、ぼろ負けからの大逆転』も併せてどうぞ。

(取材・執筆:岡田有花/撮影:橋本直己/企画編集:藤村能光)

著者プロフィール

ベストチーム・オブ・ザ・イヤー

ベストチーム・オブ・ザ・イヤーは、2008~2016年の間、最もチームワークを発揮し、顕著な実績を残したチームを、毎年「いいチーム(11/26)の日」に表彰したアワードです。