なぜ、IT企業のサイボウズがチームワーク研修を始めたのか
チームワーク総研 コンテンツエディターの竹内です。
「チームワークの研修」というと、どのようなイメージをお持ちでしょうか。
「チームワークとは何か」といった定義の座学から始まり、「1人が欠けても仕事は上手くいかないんだ」「そのためには、コミュニケーションが大切だ」みたいなことを教わる......みたいな、「研修会社のスキル研修」のようなイメージをお持ちかもしれません。
サイボウズは「グループウエア」という、会社のスケジュール管理やドキュメントの共有など、主に情報を共有するためのツールを作っているIT企業ですが、2017年にチームワーク総研を立ち上げ、研修をはじめました。
IT企業ですから、「グループウエアの導入方法」や「効果的な使い方」など、ITに関する研修やセミナーを開催するのなら分かります。けれども、「IT企業なのに、なんでチームワークの研修をはじめたの?」という疑問をお持ちかもしれません。
そこで、今回は「なぜ、サイボウズがチームワーク研修をはじめたのか」について、お話させてください。
グループウエアは「チームワークあふれる会社」を作るためのツール
サイボウズの理念は「チームワークあふれる社会/会社を創る」です。
グループウエアが商品なのに、理念でうたっているのはチームワーク。なぜでしょうか。「優れたグループウエアは、チームワークあふれる社会を創るための手段」だからです。
また、どんなに優れたグループウエアがあっても、情報が共有されていなかったり、ネガティブな批判で埋め尽くされていたりしたら、グループウエアの目的を果たしていませんし、チームワークが良いとは言えませんよね。
チームワークあふれる社会/会社を創るためには、優れたグループウエアと、チームワークを強化するメソッドの両輪で取り組む必要があった......というわけです。
サイボウズも以前は「ブラック企業」だった
とはいえ、これだけでは「なぜ、サイボウズがチームワーク研修をはじめたのか」という問いの答えにはなっていないかもしれません。「なんでIT企業がチームワークの研修なのさ」と思われるのも、不思議ではありません。
今でこそワークスタイル関連でさまざまな受賞歴があるサイボウズ。けれども、2005年当時、離職率は28%を超え「ブラック企業」と揶揄されてもおかしくない会社でした。
サイボウズ社長 青野慶久の著書『チームのことだけ考えた』には、当時の様子が次のように記されています。
私が社長になった2005年、社員の離職率は28%に達した。その年が始まるときに在籍していた83人の正社員のうち、実に23人がいなかった。翌年もさらに16人がサイボウズを去った。
離職率が28%という状況がどんな感じかと言うと、「毎週送別会が行われているような感じだった」と、当時人事に在籍し、現在は「チームワークを教える旅人」として講師をしているなかむらアサミはいいます。
人が入ってもどんどん辞めていく......どんな状況かなんとなく想像できますよね。
社員が退職する原因の一つは労働環境でした。平日は終電まで働く人が多く、土日に出社すれば必ず誰かがいる。でも、楽しそうに働いている社員はいない......それが「ITベンチャーとしてフツウの姿だと思っていた」と、青野は前出の書籍でつづっています。
つまり、サイボウズは最初から働きやすい会社ではなかったし、むしろ、その逆だったのです。
私が入社したのは2017年。当時じゃなくて本当によかった!(笑)
チームワーク研修で「楽しく働ける会社」を増やしたい
このような状況を踏まえ、青野は「楽しく働ける会社にしたい」と思ったそう。
そこで、まずはサイボウズ自体が「チームワークあふれる会社」を目指して、10年以上の歳月をかけて、さまざまな制度を作り、風土がよくなる取り組みをしてきました。
サイボウズの研修は、いわゆる、一般的な研修会社が行っているような「スキル」や「ノウハウ」というよりも、実際にサイボウズ社内で実践し、作り上げてきたものです。
チームワーク研修について、実は、チームワーク総研を立ち上げる前から、「チームワークについて教えてほしい」というお問い合わせやご要望をさまざまな企業さまや団体さまよりいただいておりました。
しかし、非常にたくさんのお問い合わせをいただくようになり、都度対応するのが難しくなってきました。
それならば、私たちが経験してきた、チームワークを強化するメソッドを体系的にまとめ、広げることができたら、さらにチームワークがよく、はたらきやすい会社ができるのではないか......と考え、サイボウズ チームワーク総研を設立。研修やメソッド開発に取り組むようになりました。
今回は「なぜ、サイボウズがチームワーク研修をはじめたのか」について、お話しました。この記事をご覧いただいて、覚えておいて欲しいことがあるとしたら、「サイボウズもかつてはブラックだった。そこから、変わってきた」ということです。
もし今、あなたの会社がどんな状態でも、本気で変わろうとすればきっと変われると、私たちは信じています。
著者プロフィール
竹内義晴
チームワーク総研とサイボウズ式編集部の兼務。新潟でNPO法人しごとのみらいを経営しながらサイボウズで複業しています。「2拠点ワーク」「週2日社員」「フルリモート」というこれからの働き方を実践しています。