サイボウズ流「チームワークあふれる会社にするコミュニケーション」とは?
これをお読みの多くの方は、「会社のチームワークをよくしたい!」と思われているのではないかと思います。
では、「チームワークをよくするためには、どうすればいいと思う?」という問いに、どうお答えになりますか?多くの方は「コミュニケーションをよくする」と答えるのではないでしょうか。
「コミュニケーションをよくするためには」で思い浮かべることと言えば......やはり、「飲みニケーション」でしょうか。上司や同僚と軽くお酒を飲みながら、本音で語り合うことも、ときには大切かもしれません。
けれども、実際のところは「会社の愚痴ばかり」とか、アルコールの勢いでその場は盛り上がっても、翌日会社に行くと今までと同じ......というご経験をされたことはありませんか。
「なんだよ、結局変わらないじゃないかよ」......みたいな。
「コミュニケーションが大切なことは分かる。けれども、具体的にどうしたらいいのか分からない」と、お悩みかもしれません。
そこで、この記事では、サイボウズ流のチームワークにおけるコミュニケーションの役割と、社内で実際に取り組んでいる「コミュニケーションを活発にする方法」についてお話します。
サイボウズ流「チームワークとコミュニケーション」の位置づけ
コミュニケーションのお話をする前に、サイボウズで考えている「チームワークあふれる会社にするために必要なこと」について、簡単にお話させてください。
サイボウズでは、「チームワークあふれる会社」にするためには、「5つのプロセス」があると考えています。
次の5つです。
- 理想を創る
- 役割分担する
- コミュニケーションする
- ノウハウを蓄積する
- モチベーションを上げる
「コミュニケーション」はチームワークあふれる会社を創るための、一つの要素である......というわけですね。
では、「コミュニケーション」をよくするためには、何があればいいのでしょうか。
例えば、会社の中で行われる一般的なコミュニケーションの場に「会議」があります。会議は、「かたい雰囲気」で「仕事の話」をする場ですよね。
一方、話す側とすれば、もう少し「ゆるい雰囲気」で「仕事の話」をしたいときもありますし、育児や介護など、「仕事以外(プライベート)の話」を、まじめに(かたい雰囲気で)話したいこともあります。
また、「仕事以外(プライベート)の話」を「ゆるい雰囲気」で話すことで、仲間との関係がよくなることもあるでしょう。
そこで、サイボウズではコミュニケーションを四つの事象に分けて、それぞれをメソッドとして制度化。社員同士のコミュニケーションがやりやすいようにしています。
仕事Bar
「仕事Bar」は、リラックスした雰囲気の中、真面目に仕事の話をする「場(Bar)」に、飲食費を支援する制度です。「飲食を活用して業務上のコミュニケーションの質と量を高める」ことが目的です
5人以上の会が対象で、一人あたり1,500円を補助しています。
例えば、新しい人事制度を作るような場合、一般的な企業では人事部門で制度を作ったのち、「新しい人事制度を作ったので、今後はこのようにしてください」と社内に告知することが多いでしょう。
しかし、それを聞いた社員は、制度ができるまでのいきさつが分からないため、「なんでそんな制度が必要なんだ」「一方的すぎる」「無駄なことをしやがって」といった反発が起こりがちです。
「仕事Bar」では、飲食(時間外ならアルコールもOK)しながら、「ゆるい雰囲気で仕事の話をする」ことができます。
「仕事Bar」を開催するときは、グループウエアを通じて全社に告知します。開催は誰でもできますし、議論に参加したい人も自由に参加できます。
例えば、サイボウズでは2018年、「100人いれば100通りの働き方」を目指して、働き方を自由に宣言できる「新・働き方宣言制度」ができました。
この制度ができる前、人事では「仕事Bar」を企画し、「こんな制度にしたいんだけど、みんなどう思う?」といった議論の場を作りました。
仕事Barにはのべ80名ほどの社員が参加。制度の内容やあり方について議論しました。
仕事Barを開催した後は開催報告を掲載します。これも、全社員が見ることができます。意見があればグループウエア上に自由にコメントすることができます。
このように、仕事Barを開催し、議論した内容を全社に公開することで、「一方的な感じ」ではなくなり、社員一人ひとりが「自分ごと」として捉えられるようになっています。
ザツダン
「ザツダン」は、上司との定期的な1対1の面談の場です。表現も「雑談」ではなく「ザツダン」とし、柔らかい雰囲気にしています。「仕事の話はもちろんのこと、プライベートの状況など、何でも自由に話せます。
たとえば、筆者は2週間に1回程度、上司とザツダンの機会を作っています。こちらが話したいときに、話したいタイミングで、上司のスケジュールにザツダンの時間を登録します。
ザツダンでは、仕事の進捗を伝えたり、仕事以外にも、思っていることや感じていること、困りごとなどを話したりしています。ザツダンの時間があることで、不安を解消し、モチベーションを保ちながら仕事ができています。
「ザツダン」という言葉の響きに「ザツダンなんかしている時間はないよ」とお感じになるかもしれません。また、「毎週部下と話していたら、自分の仕事ができないよ」とお思いになるかもしれません。
私の上長であるコーポレートブランディング部部長の大槻幸夫は、ザツダンについて次のように言っています。
「ザツダンで一人一人の状況を確認できるから、あとは勝手に自立して業務を進めてもらうことができるのです」
部活動
部活動は、本部をまたぎ5人以上集まれば自由に作ることができます。部員一人当たり年間10,000円を補助しています。
たとえば、部活動には「野球部」「フットサル部」「テニス部」などのスポーツから、「釣り部」「ボードゲーム部」「カフェ部」「スイーツ部」「ジェルネイル部」など、趣味が主体のものもあります。
プライベートの趣味や興味を通じて、ゆるくコミュニケーションを行う仕組みです。
筆者は普段、新潟でリモートワークしているのですが、普段、直接的なコミュニケーションを行う機会が限られます。そこで、先日「カフェ部」に参加しました。
部活に参加することで、業務と直接関係のない社員と話すことができ、横のつながりができていいなと思っています。
制度は機能してこそ意味がある
ここまでご紹介した「仕事Bar」や「ザツダン」「部活動」は、それほど複雑な制度ではありません。はじめようと思えば、どの会社でもはじめられるのではないでしょうか。
特に「ザツダン」は、予定を合わせて話をすれば、すぐに始められそうです。
一方、「ザツダンしよう」といって、上司がこんこんと説教しているのでは意味がありませんよね。
チームワークあふれる会社を創るためには、コミュニケーションがしやすい制度がある。加えて、「多様な個性を尊重する」「公明正大(嘘をつかない)である」「議論を大切にする」など、話しやすい「風土」がある......。
このような、「コミュニケーションの仕組みづくり」が大切なのかもしれませんね。
文・編集:竹内義晴
著者プロフィール
竹内義晴
チームワーク総研とサイボウズ式編集部の兼務。新潟でNPO法人しごとのみらいを経営しながらサイボウズで複業しています。「2拠点ワーク」「週2日社員」「フルリモート」というこれからの働き方を実践しています。