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制度が人を、人が制度を変える!?サイボウズの働き方制度ができるまで Vol.1

皆さんこんにちは。サイボウズ チームワーク総研の三宅です。2016年のキャリアママインターンをきっかけに中途入社しました。

当時サイボウズには、自分の働き方を、働く時間数と働く場所で分類した9タイプの中から選ぶ「選択型人事制度」がありました。前職で育児と仕事のバランスに悩んだ私には、とてもインパクトがあったことを覚えています。

ところが昨年、この制度は廃止されました。代わりに社員一人ひとりの希望に応じる『働き方宣言制度』に進化したのです。

人事制度2.png

それでもなお「まだまだ完成形ではなく発展途上」だと何人もの社員は言います。話を聞くと、働き方の制度については、これまでにも様々な変化やトライアルの歴史があることが分かってきました。どんな課題にぶつかり、どんな紆余曲折があったのでしょうか?

■ はじまりは『優秀な女性を採りたい』

今から10年以上前。離職率が28%にまで上がっていたサイボウズは、サイボウズ、ワーク・ライフ・バランス支援制度を改定~成果主義型に加え、新たに年功重視型の人事制度を導入~というリリース を出しました。

2007リリース2.png

これまで「成果重視型」1通りだった働き方に加え、「家庭やプライベートを重視する」時短の選択肢をつくる、という内容です。

その背景は「離職率よりも採用だった」と、当時人事をまとめていた山田理(現サイボウズ取締役副社長)は言います。「離職率は確かに高かったんだけど、それを下げたいということだけではなかったんですよ。当時は募集をかけても、応募してくれるのはソフトウェアのマニアのみで、とにかく人が来てくれなくて困りました。そこで、女性の採用に視野をひろげたんです。」

世の中を見ると、男性は職種や給与で厚遇されている一方、女性はそうではないケースが目につきました。その人たちに働きやすい環境を用意すればよいのではないかと。

当時、BtoB企業であるサイボウズは、女性どころか一般的にもほとんど知られていませんでした。学生対象の合同説明会では何とか気を惹こうと『サイボウズ麺』というカップ麺を配ったこともありました。

ボウズ麺4.png

そんな中「転勤が無い、早く帰れる、など働きやすい職場を用意すると、お金じゃないものを重要視している女性が来てくれるのではと思ったんです。」何より「優秀な女性が集まると、優秀な男性も集まるだろうと(笑)。会社の暗い雰囲気が、楽しそうだな!という雰囲気に明るく変わりますから。」(山田)

女性が働きやすい職場を用意するのに、お金はかかりませんでした・・・というよりも、実際のところはそこにかけられるお金もなく、それしか方法がなかったのです。人が全然来てくれなかったときに、制度を工夫することで、なんとか女性に活路を見出そうとしたのでした。

■フタを開けてみると...大反発が待っていた!

「成果重視型」と「家庭やプライベートを重視する」時短の働き方の2つの選べる制度は、一度選んだら終わりではなく、自分の都合で行き来できるものでした。また、ターゲットは女性が中心ではありながら男性も対象にし、取得理由も問わないとしました。つまり育児理由に限らず「大学で再勉強したい」などの理由も含め、男女年齢問わず誰でも選択できるものにしたのです。

しかし導入後にあがったのは、「どうしたらいいの?」という困惑の声声声。特にマネージャー層からは反発や怒りの声が大きく、現場は相当混乱しました。当時、制度担当だった 現チームワーク総研アドバイザーのなかむらアサミは、こう振り返ります。「やっているときはもう、どうなるかなんて全然わからない。現在のこういう形(働き方宣言制度)になるなんて想像もしていないし。見えない中、不安の中を進んでいきました。」

それから2年間、毎月合宿を行いました。本部長クラスから新人まで、様々な層のメンバーごとに集まり、たまったモヤモヤや疑問を話し合うのです。実際の合宿では人事制度だけではなく、様々な内容について話し合いました。

★合宿の様子

かつての研修.JPG

当時から社長だった青野、そして山田は、全ての合宿に参加して、徹底的に社員の話を聞きました。すると、社員の中に「新しい働き方自体に反対なのではない」「抜けた人の分を補う配置をどうすれば良いのか?」「遅くまで働く人が割をくってしまわないか」――そうしたモヤモヤ感を抱えていることが見えてきたのです。

「ひとつひとつ向き合って変えていくのが好きなんでしょうね。」と山田は言います。「一人ひとりに話を聞いていくと、結果として会社のことが全部わかってくるんです。何か社内に問題がある時は、実は同じニーズの人が必ずいるものなんですよ。講演などでこの話をすると『大変では?』と言われますけれど、急がば回れで、実はその方が早かったんですよね。 」

これを機にサイボウズでは、マネジメント合宿や研修を数多く重ねました。その後の議論を経て、労働時間をベースとした働き方はより実態に近い3タイプの分類へと変わり、さらに『働く場所』の概念を制度に取り込んでいきます。次回へ続きます。

著者プロフィール

三宅 雪子

チームワーク総研研究員・編集員。組織におけるチームワークを探求。働く人の強み・魅力を引き出し、人と人との関わりをチームの生産性へつなぐ道すじを探る。