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ノウハウ共有、推進はITツールを入れただけじゃだめ──不安をなくす「場づくり」のポイント

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ノウハウやナレッジの社内共有は、多くの企業で関心を持たれているテーマです。この記事をご覧になっている皆さんのなかにも、関わっている方がいらっしゃることと思います。

ノウハウの社内共有には、ITツールやルールなど仕組みを整えることが大切ですね。

でも、ITツールは導入したし、ルールや仕組みも作ったし、簡単に共有できる環境は整っているのに、「なかなか共有が進まない」「書き込んでも反応してくれない」とお悩みのマネージャーも多いようです。一体、なぜなのでしょうか?

この記事では、社内でノウハウ共有を進める際の「意外な盲点」について考察します。

業務効率だけではない、ノウハウ共有のメリット

ところで、ノウハウを共有すると、どのような「よいこと」があるのでしょうか。

ひとつは「業務推進上のメリット」です。他メンバーのノウハウを学ぶことで業務を効率化でき、空いた時間を有効活用できます。また、実践課程で得たノウハウをさらに共有する、といったサイクルを繰り返すと、業務の質的向上も期待できます。新メンバー加入の際には、業務を知ってもらう点でも役立つでしょう。

もうひとつは、「チーム全体の成長」です。ノウハウを学び高めることでメンバーの自主性を後押しできたり、共有する過程での質問や謝辞といった交流により、お互いの理解が深まったりすることが考えられます。

このようなメリットについて、共有を推進したい側は理解していらっしゃると思います。一方で、そのメリットはメンバー側に伝わっているでしょうか。ノウハウ共有を進める目的やメリットがメンバーに浸透していないのは、よくある盲点です。

ノウハウ共有がすすまない裏にある「メンバーの不安」

メンバーに、ノウハウを共有するメリットを伝えたにも関わらず、共有がすすまないのだとしたら、どのような理由が考えられるでしょう?

例えば、参加する側の立場で見ると、「共有することへの不安」があるかもしれません。

  • 自分が共有することで、人のノウハウをいいとこどりしたと思われないか
  • 自分の培ったノウハウを明かすと、自分の強みが薄れてしまうのではないか
  • 共有の結果、誰かがそのノウハウを参考にして失敗した場合気まずそう
  • アイデアを提案したら、結局、自分がやることになってしまわないか
  • そもそも、どこにどんな風に書いたらいいのか分からない
  • 共有しようかな......とは思うけれど、正直に書いたら変な風に思われないだろうか
  • 共有したにも関わらず、何もレスポンスがないのは、さみしいし不安

などなど。尽きない心の声が想像できます。人間、不安がある時には、なかなか積極的にはなれませんね。

また、誰かに情報を提供するという行為には、少なからず労力がかかります。たとえ短いテキストにまとめてアナウンスするだけの作業であっても、忙しいメンバーには負担となる場合もあるでしょう。

ノウハウ共有のポイントは「安心と思える場づくり」

では、どうすればノウハウ共有が進むのでしょうか。ポイントは、メンバーの不安を減らすことです。そのためには、マネージャーの方々の役割が大変重要です。

  • ノウハウ共有への共感を得られるよう、メンバー自身やチームへのメリットを何度でも伝える
  • マネージャー自身が率先して共有し「共有が自然なことだよ」という雰囲気をつくる
  • 共有をしたメンバーへ「あれは良いね」「私も試したよ」などポジティブな声かけや、積極的なレスポンスをする
  • 「いいね」といった機能があれば、積極的に押す
  • 不安や疑問があれば、遠慮なく相談するよう伝えておく
  • 1on1のような場で、不安や疑問がないか確認する

「気軽に共有していいんだ」という認識づくりも有効です。社内や部門内のことですから、わざわざ立派なスライドを作る必要はないし、小さな共有でかまわないですよね。

まとめ

大切なのは、活用するメンバー自身が、「やってみたい」「やっても大丈夫だな」と感じる環境をつくることです。少しずつでも共有がすすめば、メリットを実感する機会も徐々に増えるでしょう。個人のノウハウがチームのノウハウとして広がることは、チーム力の向上となるのです。

著者プロフィール

三宅 雪子

チームワーク総研研究員・編集員。組織におけるチームワークを探求。働く人の強み・魅力を引き出し、人と人との関わりをチームの生産性へつなぐ道すじを探る。