『サイボウズ流 テレワークの教科書』を出版──強いチームをつくるテレワークのノウハウを凝縮
このたび、総合法令出版から『サイボウズ流 テレワークの教科書』を出版しました。
本書は、サイボウズが約10年に渡り試行錯誤し実践してきたテレワークのノウハウをまとめた書籍になります。
チームワーク総研の講師陣が、テレワーク導入で生じやすい問題を「ICT・勤務環境」「コミュニケーション」「マネジメント」の3つの観点から整理し、これらの問題を解決する方法を紹介しています。
特に2020年はテレワーク対応が急速に拡がり、コミュニケーションやマネジメントをはじめ、在宅での環境整備や各ツールの使いこなし方、さらには不安や孤独感の解消など幅広くご相談をいただきました。
それらを解決すべくノウハウを凝縮した一冊となっています。テレワークの導入や運用で悩まれている全ての方が、明日から自分のチームで実践できる内容です。
ここに、「おわりに」を公開します。
おわりに
「もし、この本が、新型コロナウイルス感染症が発生する前に発刊されていたとしたら、どんな内容になっていただろう」――この本が形になった今、そのようなことを考えます。
サイボウズはITのサービスを提供している企業です。ひょっとしたら、「グループウエアの活用方法」など、もう少しIT寄りの内容になっていたかもしれません。あるいは、サイボウズの理念は「チームワークあふれる社会を創る」です。ひょっとしたら、もう少し制度や風土に寄った内容になっていたかもしれません。
新型コロナウイルス感染症の拡がりによって、いわば強制的に対応しなければならなくなったテレワーク。大変なご苦労をなさった方も多かったのではないかと思います。特に、人事制度や労務管理を担当していらっしゃる方や、情報システムに関係する仕事をされていらっしゃる方、マネジメント層の方などは、てんてこ舞いだったのではないでしょうか。
そして、この本を手に取っておられるあなたも、そのお一人だったのではないかと思います。在宅勤務によって、生活の中に突如、仕事を持ち込まなければならなくなりました。仕事環境やコミュニケーションはもちろんのこと、プライベートとの折り合いのつけ方などをはじめ、ご苦労が多くあったのではないかと思います。ひょっとしたら今も、現在進行形かもしれません。
一方で、今回のような出来事がなければ、テレワークがここまで広がることはなかったのではないかと思っています。コロナ禍前は、2020オリンピック・パラリンピックが一つの契機と捉えられていました。しかし、オリンピック・パラリンピックだけでは、ここまでは広がらなかったでしょう。現在のようになるまでには、あと10年は掛かっていたかもしれません。
そういう意味でコロナ禍は、私たちの働き方に対する考え方や価値観を根底から、しかも急激に覆すきっかけになったことは間違いなさそうです。
この本をまとめるにあたり、サイボウズチームワーク総研では、「どういった内容にすれば、読者のみなさまに役立つか」という議論を重ねました。テレワークが想定外に、強制的に広がったからこそ「真に役立つ内容にしたい」――そのような思いで取り組み始めました。そうしてできたのが、この本です。
さて、数年前から、ビジネスシーンでは「VUCA」(ブーカ)という言葉を見聞きするようになりました。VUCAとは、「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字をとったもので、一言でいえば、「不確実で、正解がない」という意味です。
かつての右肩上がりの時代とは異なり、現代の日本社会は経済は成熟し、先の見通しが立てにくくなっています。また、少子高齢化による労働力人口の減少など、社会的な問題も山積です。さらに近年は、かつての常識では予想できないぐらいの大規模な自然災害も多発しています。それに加え、今回の新型コロナウイルス感染症です。まさに、一寸先は闇。「不確実で、正解がない」時代です。
しかし、そのような中でも、私たちビジネスパーソンは立ち止まっているわけにはいきません。前を向いて歩んでいかなければなりません。
では、現代のような「不確実で、正解がない」ビジネスシーンを、私たちはどのように歩んでいけばいいのでしょうか。それはおそらく、「その時々の状況に合わせて、柔軟に対応していく」ことに尽きるのかな......と思います。
「その時々の状況に合わせて、柔軟に対応していく」ために必要なことを考えてみると、「情報が共有され、いつでも状況が把握できること」「時間と場所の制約を受けずに柔軟に対応できること」などが挙げられます。まさに、テレワークのような働き方です。VUCA時代を歩んでいくためには、テレワークがもっとも適しているのです。
だからといって、働き方に対する価値観を変え、実践するのは容易なことではありません。サイボウズが在宅勤務・テレワークに取り組み始めたのは2010年からですが、現在のように実践できるようになるまでには、数年の月日がかかりました。そして、今も改善を続けています。
このようなお話をすると、とてもハードルが高いように感じられるかもしれません。でも、そのハードルは、実際にはそれほど高くないのではないかと思います。なぜなら、私たちはすでに、在宅勤務やテレワークを通じて「最初のステップ」は踏み出しているからです。
あと、やるべきことは、踏み出した歩みを止めないことだけ。やり続けることだけ......。
さて、一言で「テレワーク」といっても、その取り組みはさまざまでしょう。チャットやテレビ会議、グループウエアなどを使った「ザ・テレワーク」という環境で働いている方もいらっしゃるでしょうし、働く場所こそオフィスではないものの、そのやり取りは、今まで通りメールや電話という方もいらっしゃると思います。「本当だったら、〇〇がもう少し□□だったら便利なのに」......そんな不満や問題意識をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。
しかし、そういった不満や問題意識こそが、改善の種です。ですから、不満や問題意識をお持ちでいらっしゃったら、その感情や感覚をどうか大切にしてください。そして、話しやすい仲間と共有し、小さな、できることから改善していくこと。それが、歩みを止めないコツなのではないかと思います。
この本が、その歩みを止めないヒントになることを祈って......。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
2020年11月 サイボウズチームワーク総研
本書が、メンバーと場所が離れていても強いチームをつくる一助になれば嬉しいです。
著者プロフィール
三宅 雪子
チームワーク総研研究員・編集員。組織におけるチームワークを探求。働く人の強み・魅力を引き出し、人と人との関わりをチームの生産性へつなぐ道すじを探る。