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日本の技術力と異例のスピード感を掛けあわせ、トップシェア奪取――LED電球商品開発チーム

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※ベストチーム・オブ・ザ・イヤーのサイトから移設しました

いかに高品質で低価格なLED電球を他社より早く開発するか。日本の技術力を総動員したLED電球の開発と、それを支えるチームワークとは。東芝ライテック株式会社 LED事業部 商品担当 部長 宇津巻 隆久さんに伺いました。

生き残りを掛けたトップシェア争奪戦――異例のスピードでプロジェクト結成

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LED電球開発チームが結成されたのはいつごろだったのか。

「2009年12月です。現在はLED電球も価格が下がってきていますが、初代LED電球のころは1個1万円くらいでした。その後、各社の販売に伴い一気に競争市場となり、値段が下落しています。2009年7月には、従来価格の約半額1個5000円の新製品を販売しました」

その製品も出荷当初にシェア1位を獲れたものの、すぐに他社に追随され、2位以降に甘んじる日々が続いていました。より低価格で良い製品を他社が開発することが予測できたので、より低価格で品質の高い商品を提供しなければなりませんでした」

2010年春からLED電球がエコポイントの交換対象になるという話が持ち上がり、2010年3月までに新製品がでないと、需要の拡大を見込めないという危機感を感じ始めたのです。新製品を開発・販売しようと決定したのが、ちょうど2009年の11月中旬だったというわけです」

春に販売予定で、11月にチーム結成。日がない中でのプロジェクトだった。

「その通りです。通常、ランプの開発期間は短くて半年、長くて1年くらいかけます。白熱電球や蛍光灯のときはそうでした。LED電球は半導体製品でスピードが速い。長持ちするという点が売りなので、一度買うと10年くらい購入されない計算になります。すると普及当初にシェアを獲得することが重要になってくるのです。3月の販売に向け2月に商品が完成している必要がありました。実質は12月~2月の約3カ月で製造や販路を含め、すべて完了しなければならなかったんです」

「それまで3カ月という短納期で商品を市場に出した経験は私たちにはありませんでした。みんな時間に追われた経験もなかったと思いますね」

「当社は2010年の3月で白熱電球の製造をストップすることが決まっていたので、LED電球でシェアを取らないと生き残れない状態でした。東芝本社からも「トップシェアを目指せ」と号令があったぐらいです。大きな目標を短期間で達成するプロジェクトでしたので、事業部単体で行うのは無理ですから、関係部署をすべて集めました。キックオフミーティングを12月に行い、プロジェクトが始まったのです」

初の大きなプロジェクトだった。

「そうですね。キックオフミーティングでは「これは社の生き残りをかけたプロジェクトだ!」とみんなを奮いたたせようと考えました。資料には「少しの判断ミスが自分たちの首を苦しめるぞ」と太平洋戦争のミッドウェー海戦になぞらえて「トルネード作戦で勝利する!」と書いたりして(笑)。2月の販売をデッドラインにしてスケジュールを組み、「それを死守する!」とメンバーに伝えました」

どんなささいなこともオープンに、みんなで解決しようよ

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「誰が何をすればいいかという役割を細分化しました。設計や販売価格はおおよそ決まっていたので、要となるのは商品製造の部材の手配です。部材の調達スケジュールはより細かく決め、調達部にはスケジュールに間に合わなさそうな部材を明確にさせて、「じゃあどうすべきか」を自主的に考え、主体的に動いてもらうようにしました」

「部材調達だけで半年かかると言われたり、発注先の出荷スケジュールが遅くなりそうなど、ほぼ毎日何らかの問題が出てきました。例えば、部材は契約している海外の工場から調達しますが、出荷後予定通りに到着しない、数が足りない、塗装がはげているといった問題が日常的に挙がって来ました」

「もちろん過去のプロジェクトでもさまざま問題はありましたが、期間が長いのである程度は調整が取れました。しかし今回は3カ月なので、納期や出荷個数などが1つでも遅れると、3月の発売が危ぶまれる状況だったのです」

それらをどう解決していったのか。

「各部署のキーパーソンがほぼ毎日ミーティングを行い、スケジュールをもとに現状と課題を確認していきました。みんな文句を言わず参加してくれました。白熱電球の生産を止めることも決まっていたし、生き残りがかかっているという覚悟が出てきたのだと思います」

「今回のプロジェクトチームは、「技術」「調達」「設計」「工場」「営業」など多くのチームで構成されています。ミーティングでは「問題を抱え込まずにオープンにするように」と常に声をかけていました。各チームの実務担当者が問題を抱え込むと、スケジュール通り進まないことが懸念されたからです」

「どんなささいなことでもオープンにしてみんなで解決していこうよ、という姿勢でいました。やがてその方が効率的だということがメンバーに伝わり、問題が出たらすぐにメンバー同士が呼び出し合うようになりました」

「みんなで解決しようとする風土ができたことで、トラブルが続いても雰囲気が悪くはならなかったです。それぞれの役割で解決策を考え、現場の工場からも代替案が上がってきたりしました」

「製造工場は山形にあり、メンバーはすぐに駆けつられません。自分の部下を1名常駐させて、本社とのかけ橋役になってもらいました。3カ月での商品開発は社内でも初めてのことです。チーム内でのコミュニケーションを頻繁にとるようにしました」

コミュニケーションを取りながらメンバーのモチベーションを維持していった。

「そうかもしれません。その時はそんなことを考える余裕はありませんでしたが(笑)。製造ラインが安定してきたら次は営業チームに販売戦略をお願いしていきます。製品発売の3月は大抵の会社が決算期で売り上げを半月で締めるので、それまでに販売目標数を達成しなければならなかったんです」

「そこで、半月の販売計画を出し、それに合わせて工場から出荷できるように調整していきました。しかしスケジュール通りにはいかず、当初予定していた商品数量が予定通りあがってこなかったのです。そんな時も、需給メンバーには自身の任務に徹してもらい、営業との調整は私が窓口になってトラブルを解決しました」

プロジェクトチーム開発と3カ月の速度感がスタンダードに

「さまざまな困難を乗り越え、販売を開始した3月には、私もびっくりするくらいの割合でシェアトップになりました」

「本当に嬉しかったですね。メンバー全員で喜びました。私たちは、CO2削減の一環として白熱電球の製造を中止してから、LED照明等の省エネ製品に置き換える事業活動を推進してきました。このような企業メッセージをうたい、実際の販促計画と連動したことで相乗効果を得られたのかな思います」

「利益が出ている白熱電球の生産を止めるということを、会社の姿勢の本気度として社会に示した点は大きかったのではないでしょうか」

その後社内で変化はあったのか。

「LED電球はプロジェクトチームで開発することが定番になりました。「3カ月」のスピード感も普通になってきましたね。私たちが先例を作った形かもしれませんが、時代の流れもありますよね」

現在の仕事で、そのとき得たノウハウを生かせることはありますか。

「スケジュール通りには進まないこと、同じ部品を複数メーカーに頼んでも同じ品質で仕上がらないことが分かったので、部材調達班は先行して動くようになりました。それが無いと製品もできませんし、一番重要な部分ですからね」

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著者プロフィール

ベストチーム・オブ・ザ・イヤー

ベストチーム・オブ・ザ・イヤーは、2008~2016年の間、最もチームワークを発揮し、顕著な実績を残したチームを、毎年「いいチーム(11/26)の日」に表彰したアワードです。