世界一の「東京スカイツリー」を支え、もっと愛されるタワーに――東武タワースカイツリー チーム
※ベストチーム・オブ・ザ・イヤーのサイトから移設しました
2012年5月にオープンした東京スカイツリー。その運営全般を担うのは、東武タワースカイツリー株式会社です。世界一高い電波塔として、また周辺施設を含め観光地としても、開業後約2か月で来場者数が1000万人を突破するなど、今年の話題となっています。ベストチーム・オブ・ザ・イヤー実行委員会では、新たな新名所としてのスカイツリーを支えるチームワークを評価しました。 スカイツリーの完成前後におけるチームの取り組みについて、東武タワースカイツリー株式会社 広報宣伝部 課長 高梨さんと、営業計画部 鈴木さんに聞きました。
世界一のタワーに――1日2万人超の来場
2012年5月にオープンしてから100日で162万人の来場者数を突破し、一気に日本の主要な観光地となった東京スカイツリー。都内だけでなく全国各地、そしてアジア圏を中心とした世界各地から「世界一のタワー」を見ようと、1日に数万人が来場するようです。完成後の来場者数が注目されがちですが、実は完成前から「来場」する人も多かったそうです。
建設中のところを一目見たいという人も多くいらっしゃいましたが、現場に入ることはできません。そこで、『車窓からツリーを眺める』企画で都内名所を回るバスツアーのルートに入れたり、インフォプラザという情報発信コーナーを設けて、紹介したりしていました。(鈴木さん)
私たちば驚いたのは、"現在何メートルまでできました"と完成までの過程がニュースになったことです。完成を期待するたくさんの人に向けて、オープンに情報を発信していくことにしました。また社内でも開業までの進ちょくを全員で共有し、問い合わせには各部が連携して対応していました。(高梨さん)
開業前からさまざまな準備をしていたスカイツリーチーム。 準備期間の連携が、開業後、多くの人にスカイツリーに来てもらう下地となったのです。
スカイツリーの魅力に集まってきたメンバー
東京スカイツリーの運営には、運営母体の東武タワースカイツリー株式会社以外にも多くの企業がかかわっています。「タワーの設備保守」「お客様誘導」「各ショップの統括」「店員」といった仕事を担当する人ごとに、それぞれ属している企業が異なります。 それらが一体となって1つのチームとなる。その連携を支えるのは、携帯電話とメールを中心とした情報共有です。
現場の社員が専用の携帯電話を持ち、常に連絡を取り合える体制を整えています。大きなイベントでは無線を使い、現場のチーム全員が情報を共有できるようにします(鈴木さん)
お客様から届いたご意見や要望は、全社向けにメールで共有しています。要望に対して各現場が対応し、報告するという過程がすべて分かるようになっており、対応が遅れるとアラートが出ます。1つ1つの要望に対して、解決までのプロセスを共有しているのです。(高梨さん)
オープン初日は、それぞれの現場がお客様を初めて迎え入れる日です。無線を中心に、展望台へ上るエレベーターの乗車人数や稼働状況を共有して安全運行を心掛けたり、誘導やマスコミ対応、ソラマチへのアナウンスも行いました。
展望台は、天候に合わせて入場調整をします。初日は天候が悪く入場制限がありましたが、多くの人が詰めかけた中で無事故で1日を終えられたのは、各現場の強い連携があったからです。
運営における最大のミッションは『お客様の安全』です。安全に運行し、安心できる運営をするという目的のもと、毎日全員で協力する意識は欠かせません。(高梨さん)
会社は違えども、1つの目標に向かって連携し合う点は、まさに「チーム」の定義に一致します。
実は高梨さんと鈴木さんは、数年前まではまったく別の会社にいました。 高梨さんはホテルの支配人、鈴木さんは旅行会社で働いていたのです。東京タワースカイツリーのチームを支えるのは、バックグラウンドが違うメンバーたち。各自の事情が異なる中、共通認識を作り上げる苦労はなかったのでしょうか。
前職では旅行手配やお客様のご案内など、さまざまな経験ができました。東武タワースカイツリー社では「スカイツリーの魅力を明確に伝え、知ってもらう」という大きな仕事を任されました。これまでの経験を生かしながら「世界一のタワー」の魅力をさまざまな角度から伝えることが面白いですね。(鈴木さん)
「理想が同じなので、意識を合わせる苦労はあまり感じなかった」という鈴木さん。働く全員に共通していたのは、「世界一のタワー」にかかわる仕事ができることへの誇りです。
「世界一のタワー」というスカイツリーの魅力が、かかわる人のモチベーションの源泉になっていることは間違いありません。
住民の方との連携も
「世界一の観光地を目指す」。その大きな目標は、関係会社の社員だけでは達成できません。キーになったのは「住民との連携」です。
スカイツリーの候補地が決まってからは、住民と継続して対話しています。心掛けているのは"顔の見える対応"です。建設中からさまざまな情報を、近隣のみなさんと共有しています。(高梨さん)
住民の意見や要望は、毎日電話やメールで届きます。基本的には直接皆さんと会い、話をします。定例の意見交換の場も活用しながらさまざまなご意見をいただきます。「このポイントでこういう写真が撮れたよ」と声をかけてもらったり、商店街のイベントとの連携企画を提案いただいたこともありました。
住民との対話で心掛けているのは、「話を聞くこと」「自分たちの思い(メッセージ)も明確に伝えること」(高梨さん)。その結果、スカイツリーを一緒に盛り上げようとする気持ちが高まり、地元住民との連携が強固になっていったのです。
「世界一のタワー」から、「愛されるタワー」へ
2012年現在、スカイツリーは世界一の高さを誇ります。一方で、「建設物の高さはいずれ抜かれる日がくるだろう」と高梨さんは読みます。 そこで最近は、"3000万人に見られるタワー"と言い方でスカイツリーの魅力を伝えるようにしています。「展望台から見渡せる約70キロ四方の領域には、3000万人が住んでいる」からです。
展望台に上ったお客様に、"3000万人がスカイツリーを見ているんですよ"と伝えると反応が良いのですよね。単純に"高さ"という魅力を切り取るだけでなく、多くの人に愛されるタワーを目指していきたいですね。(高梨さん)
「世界一のタワーの魅力を伝えたい」。東武タワースカイツリーのチームに集まったメンバーの気持ちは、この1つに集約されています。開業から半年弱を経た今、その思いは「愛されるタワーであり続けるために」という形に変わっています。目標を新たにしたチームが伝える「スカイツリーのまだ見ぬ魅力」――。まだまだスカイツリーからは目が離せそうにありません。
著者プロフィール
ベストチーム・オブ・ザ・イヤー
ベストチーム・オブ・ザ・イヤーは、2008~2016年の間、最もチームワークを発揮し、顕著な実績を残したチームを、毎年「いいチーム(11/26)の日」に表彰したアワードです。