チームとは?──「まなざし」を合わせ、「突破力」を持って一つの目標に向かって進む仲間で「仕合せ」に

※ベストチーム・オブ・ザ・イヤーのサイトから移設しました
毎年、一年間でチームワークを発揮し、顕著な実績を残したベストチームを表彰する「ベストチーム・オブ・ザ・イヤー」。第8回目の開催となる本アワードは、審査委員長に明治大学教授の齋藤孝さん、審査員兼アワード総合プロデューサーにおちまさとさんを迎え、都内某所にて盛大な表彰式が開かれました。
式典では栄えある受賞チームが表彰されるとともに、各チームの代表者の方々にお越しいただき、みんなで"真のチームワーク"について考えるトークセッションを開催。このレポートでは、ここでしか聞けない貴重なトークセッションの内容を中心に、お届けします。

受賞チームが語る「チームとは?」〜Pepper×FOVE〜
金子さんが手に持たれているのが、FOVEの実機ですよね?

はい。このFOVEは視線追跡型ヘッドマウントディスプレイといって、眼球の動きを追跡することで、バーチャルリアリティ空間を"自分の目の動き"で自在に操作することができます。
ピアノプロジェクトの映像を見せていただきました。FOVEで鍵盤を目で追うと、ピアノが弾けるというものでしたが。
そうです。例えば、身体が不自由な方が、手の代わりに眼球を使って、まばたきでキーを選択してグランドピアノを弾けるんです。
ピアノプロジェクトの他にも、最近は名古屋で寝たきりのお婆さんが、FOVEで東京の赤坂にいるPepperを操作して、孫の結婚式に参加するというプロジェクトもやりました。
つまり、国内だけでなく世界中どこでもできるということですよね。
そうです。私たちが作っているのは、あくまでもコントローラーなので、使い方は無限大だと思っていて、国境を越えて、物理的な制限もなく活躍できると期待しています。

そんなFOVEを作っているのは、わずか6名のチームだと伺いましたが、そのチームワークはどのように培われているのですか?
みんながひとつの方向を目指して走っているので、物理的な距離はあったとしても、お互い相手のことを非常に近く感じているのだと思います。
6人のメンバーはどうやって連絡を取り合っているのですか?
毎日決まった時間にビデオ会議をして、それぞれ設定したマイルストーンを越えられているかどうか、キャッチアップする時間を設けています。
リモートワークはミスコミュニケーションが発生しやすいので、なるべくビデオ会議でお互いの目を見て話せるようにしています。
6人のそれぞれのストロングポイントは?どういうスキルが合わさったらFOVEのようなものができるのでしょうか。
僕たちが作っているのはハードウェアなので、ハードウェアの知識がまずひとつ。
あと、このハードを動かすソフトウェアの知識ですね。それと僕たち2人のようなビジネスサイドを動かす人も必要です。投資家やパートナーと話したり、Pepperプロジェクトの話を持ってきたりですね。 今は、ハードの人間が日本にいて、ソフトの人間がオーストラリアにいて、アルゴリズムの人間が韓国にいて...と、かなりいろんなところに散らばっています。

新しいなぁ。
今僕たちがチャレンジしようとしているのが、シニアの方をチームに取り入れることです。
僕らの平均年齢は29歳なんですけど、日本のモノづくりの力はひとつの大きな武器だと思うので、シニアの方の力を借りて、もっと加速させていきたいなというのが次のステージです。国籍も年齢も垣根を越えたチームを作っていこうと努力しています。
一方、Pepperくんは今年、露出がすごく多かったですが、販売の方はどんな状況なのですか?
6月から発売を開始して、現状1ヶ月に1回約1000台を販売しているのですが、毎月発売開始から約1分で売り切れてしまう状態が今も続いています。
Pepperくんのかわいいところが、目線を外さないところなんですよね。
"こっちを見ているな"と思えるかどうかが、人間が惹かれるかどうかを左右する一番のポイントになりますので、技術の大半はそうした"人間っぽく見せるところ"に使っているんです。

Pepperくんはプロデューサー目線で見ると、同時多発的なタレントさんでもあるんですよね。
おっしゃる通りですね。今は「Pepper」というひとつのキャラクターなのですが、今、様々なデベロッパーさんが、いろんなコンテンツやアプリケーションを開発しているところですので、今後は派生してPepperとは少し違ったキャラクターも出てくると思います。
違うビジュアルタイプも出てくるのですか?
長期的には、あると思います。
我々がPepperで目指したのは、そもそも市場にこういったカテゴリーの製品がない中で、まずひとつ"Pepperとはこういうものだ"というのを打ち出すことでした。今後ここから、企業用や個人用など、これからニーズやバリエーションが出てくると思います。
プロジェクトチームは、どうやってチームワークを高めていったのですか?
FOVEさんと近いのが、Pepperもグローバルで開発していて、今も開発拠点はパリにあります。そこに400人くらい、日本にも100人くらいいて。製造は中国でやっていますので、グローバルに行き来しながら、みんなでひとつのゴールに向けて走り抜けてきた感じですね。
チームとは?
チームとは "突破力"──Pepperプロジェクトチーム

チームとは「突破力」です。英語にすると、"break through"。
4年前に、孫正義から「今から3〜4年以内に、一般のコンシューマーの方がすぐに買えて使えるロボットを作るように」と指示が出て、無謀にも思える中で成果あげるにはどうすればいいかというと、突破していくしかなかったんです。
技術的にもビジネス的にも、チームのみんなで知恵を出し合いながら突破していくということを、ここ数年間かけてやってきたと思います。
先生、時には無茶振りも"アリ"なんですね。
そうですね。非合理性を押し付けるのは、教育として最高ですよね。みんながあっけにとられますから。
一致団結して、まとまっていくしかないと。
結束力が高まりますよね。
チームとは "まなざし"──FOVE開発チーム
チームとは「まなざし」です。みなさんそれぞれの人生がある中で、ひとつの目標のもとに集まってチームは生まれると思っているので、その時、いかに同じ方向を目指していけるかというのが、非常に大事だと思っています。
"目は心の鏡"という言葉があるように、目は非常に多くの感情を語ると持っているので、ひとりひとりのまなざしの強さ、目標に対する目線の高さが、チームを束ねる強さになるのではないのかなと思っています。

チームって、いろいろあって面白いですね。
北陸新幹線開業チームが語る「チームとは?」

鉄道は開業前に端から端まで、線路を歩くと伺いましたが。
そうです。北陸新幹線で今回建設したのは231km。山あり谷あり、非常に複雑な地形・地質で、建設そのものに非常に苦労したのですが、その後開業するまでの間に、全行程を歩きながら、問題なく営業できるか、機能的に確認する作業を行いました。
何日間かけてどれくらいの人数で行くのですか?
私どもの組織だけでなく、JR西日本さん、JR東日本さんも含めた10〜20人のパーティーを組んで、それぞれの部門に分かれて一斉に調査します。期間としては、半年間かかりました。
一回目は下調べ、二回目にしっかり見て、最後にようやく車両を入れて走行テストをするんですね。例えば、私は土木の担当ですので、ハンマーを持ってすべてのコンクリート構造物を叩いて、品質のチェックを行いました。
職人技ですね。異常があれば、叩くだけでわかるものですか?
はい。健全なコンクリートはキンキンときれいな音がしますが、コンクリートに浮きがあると、ボコッと濁った音がするので、すぐにわかります。
ダイヤを作る上でも苦労があったのでは?
ダイヤはJR西日本さんといろいろ相談しながら決めました。
2社にまたがっていますからね。
私たちは他社と直通する新幹線は今回が初めてでしたので、いろいろ手探りでした。JR西日本さんに山陽新幹線の例を教えていただきながら、組んでいきました。
東の方から金沢に早く行きたいというニーズもあれば、地元にたくさん止まってほしいというニーズもありましたので、どうすれば最大限にみなさまの期待に応えられるかというのは、難しいパズルを組んでいるようなところがありました。

北陸新幹線の開業によって、金沢が激変しましたよね。
そうですね。金沢だけでなく、北陸全体が活況を呈していると思います。昨年に比べて、3倍のお客様が東の方からお見えになっていて。さらに、それにともなって大阪や中京からも大勢の方にお越しいただいていて、非常に賑わいが出ています。
金沢に日帰りで行けるというのは、今までなかったですからね。
ちょっと驚いたのが、大宮で乗り換えれば以前よりずっと早く来れるということで、東北の方にも随分お越しいただいているようで、想像以上に多くのご利用をいただいております。
先週、金沢で講演があったので北陸新幹線に乗ったのですが、グランクラスのお弁当が超絶においしくて、さすがだなと思いましたね。
やはり北陸は食材が豊かです。地元のお弁当屋さんが作っていて、季節ごとに工夫を凝らしていただいているので、おいしいお弁当になっていると思います。
チームとは?
チームとは "仕合せ"──北陸新幹線金沢開業チーム

みなさんと相談して「仕合わせ」にしました。
中島みゆきさんの『糸』に出てくる言葉ですが、今回、本当に大勢の関係者がいまして、そのひとりひとりが縦糸になり横糸になり、織り成した布が北陸新幹線だということで。仕合わせには、"めぐりあわせ"という意味もあるのだそうで、多くの関係者がめぐりあって、ひとつの目標に向かって力を合わせた結果だったのかなと思います。
いいですよね。「幸せ」とは違って、良いことも悪いことも全部含めたような言葉ですよね。
ラグビー日本代表チームの「チームとは?」

僕は正直に言ってにわかファンですが、強いチームに一回勝って翌日に大ブームがやってくる様子を興奮して見ていたのですが、実際、現場ではどんな感じでしたか?
イングランドのホテルで日本のテレビは観ることができたので、深夜なのに日本中の人がテレビの前で応援してくれている姿は、我々の目にも入っていました。勝った次の日から、すごかったですね。本当に嬉しかったです。
行きと帰りの羽田空港の違いが象徴的かなと思いますけど。行きのファンはいつも応援してくれている方たちで、帰りはそれどころの騒ぎじゃなかった。ラグビーに限らず、スポーツ界における一番のアップセットを体験させてもらいました。

ディレクターの稲垣さんはどのような思いでその光景を見ていたのですか?
みんなが努力した4年間が結果に結びついて、日本中のみなさんに大きな感動を伝え得ることができたのだと実感できました。
試合前に「勝つ」と言うのは簡単ですが、本当に想定するのはなかなか難しかったのではないですか?そこまで持っていくためのチーム作りや練習法で工夫されていたことはありましたか?
勝つ自信はなかったですけど、南アフリカに勝つための練習をしてきましたので。
今年の4月から、もう何百リットルの汗をかいたかわからないくらい宮崎で合宿をしてきていたので、最後南アフリカ戦のグラウンドに立つ前のロッカーでは、"やれるだけのことはやってきたのだから、これで散ったらしょうがない"というメンタルでしたね。
日本代表チームの練習は、世界一厳しいと言われているのですよね?
そうですね。朝・昼・晩と1日3回に分けてトレーニングします。
朝5:30〜6:00に起きて、朝からガンガン体ぶつけたりウェイトトレーニングをしたりして。そのあと朝ごはんを食べたら、まず1回寝るんです。起きて11:00くらいからまた練習があって、お昼ご飯を食べたら寝て、また16:00くらいからウェイトトレーニングとグラウンド練習があります。1日に2回も昼寝をするので、途中で今は何時で、ここがどこなのか、わからなくなるときがありました。

チームワークを高めていく"ジャパン・ウェイ"について教えてください。
一番良かったのは、良い仲間が集まっていたことですね。みんなのことが好きだったので、このチームのために何かしたいという思いがみんなにあって。
控えの選手が試合に出られなくても、このチームのためにできることを探して役割を全うしてくれたので、出ている選手もそれを誇りに思えた。素晴らしかったと思います。
その辺りの一体感ができていく過程は体感されましたか?
そうですね。ワールドカップのために168日間も合宿してきたので、いろんなことがありました。その中で、みんなの関係性が醸成されて、素晴らしいものになっていったと思います。
南アフリカ戦で、チームがひとつになったのはここだ!という瞬間はありましたか?
もともとひとつだったのですが、最後の80分過ぎに、リーチキャプテンがスクラムを選択した瞬間じゃないですかね。勝つか負けるか、どっちかしかなくなった瞬間です。
あの選択は勇気がいりますよね。
でも、それに向けて4年間スクラムを磨いてきたので、スクラムを選択するというのが、チームのひとつの意志でした。
ヘッドコーチはゴールキックを狙えという指示だったんですけどね。選手みんなが初めて逆らった瞬間でもあったんですよね。
自分たちの強みはどこだと認識していますか?
日本人は体が小さいので、ハイ・ワークレートですね。
体の大きい相手に、2人3人でタックルして、またすぐ相手よりも早く立ち上がってディフェンスラインを揃えるというのを、愚直にやり通す。それだけにフォーカスして練習してきました。組織で素早く前に出て潰す。日本代表の武器は、そこですね。
チームとは?
チームとは "一つの目標に向かって進む仲間達"──ラグビー日本代表チーム

仲も良さそうに見えますもんね。
ラグビーは体をぶつけるスポーツで、究極のスキンシップを常にやっているので、自然と仲も良くなりますね。
ラグビーの仲間意識って、いろんなチームスポーツの中でも独特のものがあると思うのですが、いかがですか?
タックルしたりボール持ってぶつかったりして、お互いがお互いの痛いところを知っているというのが、大きいと思いますね。ヒートアップするとコントロールが効かなくなる選手もいて、練習中に脳しんとうになったこともありました。練習が終われば、関係ないんですけどね。
ひとつの目標というのは、ワールドカップという意味ですか?
今回のワールドカップで結果を残すのはもちろんですが、それによって次の2019年に向けて良い4年間にしていきたいという全員の思いがありました。
ちなみに、リーチマイケルキャプテンと五郎丸選手からもメッセージをいただいています。
リーチマイケル選手: チームとは「同じ目標に向かって進むこと」。家族はお互い甘くて良いことしか言わないので、チームと家族は違うと思います。チームは、どんなことがあっても、同じ目標に向けてぶれずにがんばることだと思います。
五郎丸歩選手: チームとは「仲間」。人間は一人では生きていけません。クラスメイトもチーム。職場もチーム。仲間と一緒に生きていく。私にとってチームとは仲間のことです。

みなさん同じことをおっしゃいますね。お互い仲間だと言い合える間柄って、すごい。
先輩・後輩で言いにくいことはありますか?
ないですね。自分は37歳で最年長ですが、22歳の藤田慶和選手からいろいろアドバイスもらいましたし。廣瀬選手がキャプテンの頃から、そういう雰囲気を作ってくれていたのが、今回のワールドカップの結果につながったと思います。
最後にみなさんへコメントを
ワールドカップを戦ってきた日本代表としての誇りと責任を持って、今開催されている国内のトップリーグを盛り上げていきたいと思います。ぜひみなさん応援に来て下さい。
トップリーグという国内のシーズンが真っ只中ですので、ぜひみなさん会場までお越しいただければほんとにうれしいです。僕ら選手もみなさんに素晴らしいプレーをお見せしたいと思って切にやってますので、どうぞいらしてください。
あと個人的なことなんですけど、今度、「なんのために勝つのか。」という本を出し、そこで日本代表の4年間の思いを語ってますので、興味ある方はぜひともよろしくお願いします。

今回のワールドカップでにわかファンになられた方が本物のファンになってもらえるよう、これからもトップリーグや日本代表戦を通じて、ラグビーの夢と感動をより多くの方に伝えていきたいと思っております。
今年のベストチーム・オブ・ザ・イヤーは、いかがでしたでしょうか。2016年も日本に多くの素晴らしいチームが生まれることを、実行委員会一同、心より楽しみにしております。
著者プロフィール

ベストチーム・オブ・ザ・イヤー
ベストチーム・オブ・ザ・イヤーは、2008~2016年の間、最もチームワークを発揮し、顕著な実績を残したチームを、毎年「いいチーム(11/26)の日」に表彰したアワードです。