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2014年のベストチームに聞く──チームとは「輪」であり「ビジョンを共有する仲間」であり「悪ノリ仲間」

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※ベストチーム・オブ・ザ・イヤーのサイトから移設しました

11月26日の"いいチームの日"を記念して、今年、最も顕著な業績を残したベストチームに賞が贈られる「ベストチーム・オブ・ザ・イヤー」。今年で7回目の開催となったこのアワード。審査委員長に明治大学教授の齋藤孝さん、審査員兼アワード総合プロデューサーのおちまさとさんを迎え、今年も盛大に表彰式が行われました。

優秀賞にノミネートした3つのチームは、どれも日本に明るい希望をもたらしたベストチームばかり。栄えある最優秀賞の発表とともに、みんなで"真のチームワーク"について考える、貴重な時間となりました。

「チームワークが日本に希望をもたらす」齋藤孝さん

「今の時代は、1人で何かを成し遂げるよりも、いろんな人間がチームとなってアイデアを出し合いながら次の行動へ移す実行力が求められています。チームワークは日本社会が求めている力そのもの。ベストチーム・オブ・ザ・イヤーはチームにスポットを当てることで、日本全体にチームワークの大切さを浸透させていきたいという思いがあります」

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「本年度も、社会的意義のある活動をしてきたチームを選びたいという基準でやってきました。『こんなチームが日本を活性化していくんだな』という思いを、いっしょに持っていただけたら嬉しいなと思います」

「チームを引っ張るコツ」おちまさとさん

「仕事はすべてプロジェクトだと、よく言っています。チームをどのように引っ張って行くかというのも、プロデューサーの仕事のひとつ。ぼくの中でそのコツが3つあります」

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「1つ目は『役割を全うする』。オーシャンズ11のジョージ・クルーニーのように、プランを立てて役割分担をしたら、あとは自分の役割をいかに全うするかに徹するということです。2つ目は『スケジュール管理』。ぼくはいつも仮面ライダーのショッカーを思い出すのですが、時間通りに必ず集まるんですよね。あれだけの弱小でありながら、世界戦略をしようとしているところなんて、まさに日本の中小企業の鏡でもあります(笑)。3つ目は『家族を大切にする』。家族は最も小さなチームです。家族がうまくいっていなければ、仕事もうまくいかない。この3つが三位一体となることで、チームワークを発揮できるのではないかと思っています」

ベストチーム・オブ・ザ・イヤー2014 優秀賞は
「WHILLプロジェクトチーム」と「ふんばろう東日本支援プロジェクトチーム」

まずは優秀賞の2チームが発表され、齋藤孝さんより表彰楯が、おちまさとさんより花束が贈呈されました。

全くあたらしいカテゴリーのパーソナルモビリティ「WHILL」

車いすユーザーの人も、そうでない人も乗ることができる、また乗ってみたいと思える次世代車いす「WHILL」。福祉機器にクリエイティビティを掛け合わせた、チームの取り組みの革新性が評価されました。

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「私たちは3名から始まった小さな会社で、今は20名のチームになっています。今年、初めて製品をリリースすることができて、チームにユーザー様が加わるという嬉しいできごとがありました。これからもWHILLを世の中に広めて、どんどんチームの輪を大きくして行きたいと思います。本当にありがとうございます」(WHILL株式会社 代表取締役 内藤淳平さん)

継続的な被災地支援の希望となっている「ふんばろう東日本支援プロジェクト」

2011年3月11日の東日本大震災を機に立ち上がった被災地支援のボランティア組織「ふんばろう東日本支援プロジェクト」。支援活動はいまなお継続され、今年「コンピューター界のオスカー賞」といわれるオーストリアの「ゴールデン・ニカ賞」を受賞。新たな社会活動モデルを作った影響力が評価されました。

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「ぼくは仙台出身で、津波でおじを亡くしたり、いろんなことがあってこのプロジェクトを立ち上げました。この悲惨な出来事を肯定することは決してできないけれども、あれがあったからこんな風になれたと思うことはできる。それがぼくらの目指すべき未来なんだと、自分に言い聞かせてきました。ぼくらを支援してくださるみなさんに共通しているのは、『ただ悲惨な出来事で終わらせたくない、自分にできることがしたい』という思いです。3年半以上が経過した今、こんな栄えある賞を受賞したこと自体が、東北のみなさんのことをまだ忘れていないというメッセージになると思うので、そういった意味でも、すごく有り難いと思っております」(ふんばろう東日本支援プロジェクト 代表 西條剛央さん)

「支援プロジェクトのみなさんは、東北にたくさん笑顔を届けてくれたので、今回の受賞は本当に嬉しいです。ありがとうございます。東日本大震災が風化しないよう、たくさんの人が東北に足を踏み入れてくれると嬉しいです。これからも私たちの世代が協力して、ボランティア活動をがんばっていきたいと思います」(ふんばろう東日本支援プロジェクト 宮城支部 中川野乃花さん)

ベストチーム・オブ・ザ・イヤー2014 最優秀賞は?

最優秀賞は「妖怪ウォッチ」プロジェクトチーム

2013年7月11日に発売されたニンテンドー3DS専用ゲームソフトを軸に、クロスメディアプロジェクトとしてコミックやアニメ等による多角メディア展開された「妖怪ウォッチ」。玩具の妖怪メダルが発売されると、小学生を中心に流行し、品薄になる程の人気商品となり、社会現象を巻き起こしています。

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「『妖怪ウォッチ』は、長く愛される普遍的なコンテンツを作りたいと企画しました。ここにいるのは、会社は違えど、ひとつの志のもとに動いた仲間たちです。みんながそれぞれ自分の分野で、いろんな苦労と工夫をして、それぞれの分野を成功に導きました。今日は代表して、ぼくらの喜びをお伝えしたいと思います。本当に素晴らしい賞を、ありがとうございました」(株式会社レベルファイブ 代表取締役社長/CEO 日野晃博さん)

「ベストチーム・オブ・ザ・イヤーの受賞、とても喜んでいます。古くからの友人である音楽プロデューサーの高木たかしさんから連絡をいただいて、『おもしろいことをやろう』と始めたのがイナズマイレブンシリーズの音楽制作でした。それ以来、本当に長い間ずっと付き合ってきた仲間と、変わることなくいろいろなものを制作した結果、子どもたちに大ヒットして、こうして受賞できたのは、すごく嬉しいです。これからも子どもたちや家族みんなが楽しめるものを作っていきたいと思っています」(「ようかい体操第一」作詞・振付担当 ラッキィ池田さん)

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「妖怪ウォッチ」チームには、原作主人公の「ケータくん」とネコの地縛霊妖怪「ジバニャン」も登場。ラッキィ池田さんに振り付けを教えてもらいながら、ゲストプレゼンテーターの加藤憲史郎くんとともに、みんなで楽しく「ようかい体操第一」を踊りました。

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受賞チームが語る「チームとは?」

そして、受賞された3チームに再度ご登壇いただき、「チームとは?」というお題でトークセッションが開かれました。

「チームとは"輪"」――WHILLプロジェクトチーム

WHILLからは代表取締役の内藤淳平さんと営業・マーケティング本部長の樋口康記さんにお話を伺います。樋口さんはWHILLに乗って颯爽と登場。そのクールな姿に、齋藤さんもおちさんも釘付けです。

おち:前後だけでなく横にも動いていますが、どういうカラクリなんですか?

内藤:「オムニホイール」と言って、前輪が24個の小さなローラーでひとつの車輪になっています。「すべっているようだ」とよく言われるのですが、これによって大きなタイヤなのにすごくコンパクトに動けますし、障害物があっても7.5cmの段差まで乗り上げることができます。

「乗ってみたい!」と手を挙げた齋藤さんが、WHILLに試乗してみます。

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齋藤:これは、おもしろい!なんだかゴキゲンな気分になります。ほんのちょっとの手の動きで簡単に操作できて、安全な感じですね。

内藤:そうですね。動きもすごくスムーズで、行きたい方向に行けるので、運転ミスもしにくいです。タイヤも大きくて溝にはまらないよう、安全性にもこだわってつくっています。

樋口:iOSからBluetoothでつながっているので、およそ10mの距離であれば、アプリを使って遠隔操作もできます。介助する方と並んで会話しながら、いっしょに歩けます。

おち:ベストチームということで、WHILLもいろんな方が集まって作ったということですが、苦労はありましたか?

内藤:苦労よりも、ありがたいことが多かったです。私たちの場合、どんな風に作ろうと考えても、具現化することは自分たちではできないので、町工場やいろんな企業の方に「こういう部品を作ってください」とお願いするところから始まります。本当に小さい会社だったので、みなさん不安に思われたかと思うんですけど、みなさんが手伝ってくださったおかげで製品ができたので、すごくありがたく思っています。

齋藤:これがあれば、日本が超高齢社会に突入したときでも、動き回れるようになりますよね。

内藤:そうですね。もともとユーザーの声から始まっているんですけど、車いすに乗っている方が100m先のコンビニをあきらめるとおっしゃっていて。今だと自転車に乗れなくなったら、次どうしようと思われている方から選んでもらえるようになれば、もっとみんなが外に出て行ける世界ができるんじゃないかと思っています。

おち:デザインも近未来的でかっこいいし。より外出したくなる気分になるというか。実物を見ると、意外とコンパクトですよね。

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内藤:はい。これもユーザーの声から横幅は60cmに収めてほしいと言われていたので、最初に幅を決めて、そこに合わせて作っていきました。

おち:何社何人くらいのチームなんですか?

内藤:メーカーさんだけで30社くらい。私たちはユーザーのみなさんと作っていくというのを心がけていますので、日本とアメリカにフィードバックをくれる方たちがいて、そういった方もチームに加えると...何百人?

齋藤:日本とアメリカ両方のユーザーさんの声を聞いて、良かった点はありますか?

内藤:やはりアメリカは新しいものが出てきたときに、ちょっと乗ってみたいという先進的な気持ちがすごく強いです。まず乗ってみて評価してくれるんですね。日本の方はすごく繊細に安全性や機能面を評価してくれるので、日米に渡ってモノづくりができたのは、製品のブラッシュアップにはすごく良かったなと思っています。

おち:チームとは?

内藤:」であると。WHILLの前輪のように、メンバーにもインドネシア人や台湾人、アメリカ人など、いろんなメンバーが24個のローラーのように、ひとつのタイヤを作ってひとつの目的地に向かっているので、私たちの会社のチームは輪かなと思っています。

おち:理念がそのままプロダクトに落ちているというのは、わかりやすいですね。

「チームとは"ヴィジョンを実現する仲間"」――ふんばろう東日本支援プロジェクトチーム

ふんばろう東日本支援プロジェクトからは、代表の西條剛央さんとプロジェクト事務局の笠原隆治さんにお話を伺います。

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西條:最初ぼくらはTwitterで立ち上がった組織で、Twitterを使って"必要な人に必要なモノを必要な分だけ届ける"という仕組みを広めたんです。全国のみなさんが、3000ヶ所以上の避難所や仮設住宅に、15万5千品目を直送で届けてくださいました。

齋藤:送られる方と送る方は知り合いではないんですよね?

西條:まったく知り合いではありません。

おち:チームの人数は?

西條:ぼくらには境界がなくて、チーム名簿もないんですよ。中心はあるんですけど、いろんな関わり方ができるので、正確な人数はわからないですね。

齋藤:システムの肝となったのは何ですか?

笠原:西條が提唱している、構造構成主義ですね。状況と目的に応じて、その場に応じた方法を編み出していけばいいという。そこが基本概念としてあったので、自主的にいろんなプロジェクトが立ち上がりました。

西條:国も含めて、当時は現地の状況を全部把握できているところが、どこにもなかったんですね。ぼくはどういう方法が良いというのは、状況と目的抜きには考えられないから、その場に行って、被災された方のサポートをするという目的だけ見つめて、臨機応変にそれぞれで考えてやっていきましょうと、"コントロールする"という発想を捨てたんです。

おち:中央集権的じゃないんですね。被災地のことを忘れさせないようにするポイントは?

西條:直送するので、宅急便で送ると、送られた側が誰から送ってもらったのかがわかるんですよ。そうすると、ちょっと余裕が出てきたときにハガキや電話が届いたりするので、まだこんなに大変なんだという状況とか、支援の意味などを生で実感できるんですね。テレビを介していないリアルが分かって、遠くの親戚みたいになるんです。他人は忘れても親戚は忘れないので。

おち:チームとは、何でしょう?

笠原:ヴィジョンを実現する仲間」です。

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西條:ヴィジョンは、ぼくらが実現する価値があると思う将来の下書きです。ぼくが書いた下書きがちゃんとしていれば、ぼくが命じなくてもそれぞれのチームが自立的に動ける。ヴィジョンをいっしょに実現した仲間のことをチームと言うんじゃないかなと思っています。

なんでチームを作るかって、自分ひとりじゃできないからなんですよ。ぼくひとりじゃできないから、みんなに協力を呼びかけて、チームありきではなく目的ありきで動く。目的を達成したチームはすぐに解散しますし、チームに固執せず、しなやかに動いていくという、本質を見つめながら活動できたのがよかったのかなと思います。

「チームとは"悪ノリ仲間"」――「妖怪ウォッチ」プロジェクトチーム

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おち:わが家には4歳の娘がおりまして、毎日踊り続けているんですけれども、一般ユーザーから見てもこれはチーム戦だなというのがわかるじゃないですか。

日野:「妖怪ウォッチ」は、あらゆる部門がちゃんと成功できていて、こういうクロスメディアで同時展開するプロジェクトの中でも、珍しいパターンなんです。次から次にうまくいく、気持ちの良い成功パターンで、本当に幸せだなと思います。

おち:関わった人の数は?

日野:それぞれの会社での人数が正確にはわからないんですけど、ぼくらの会社だけでも数百人なんで、1000人以上、もっとかもしれない。

おち:最初のあいさつで「役割を全うしたチームはすごい」って話をしたんですけど、まさに全員が役割を全うされているのだろうなと見ていて感じました。

日野:そうですね。それぞれの分野の人たちを尊敬していますけど、みんなプロの意識で試行錯誤して、ものすごい工夫のもとに作られているんです。みんなでいっしょに作戦を練って、相乗効果が生まれるようにやったりして、会社を越えたチーム力が今回は特別に強かったと思うので、今のチームだったら、どのコンテンツでも負ける気がしません。

おち:入口が人によって違うんですよね。うちの娘は踊りからで、その後にアニメを見たりしています。

日野:「妖怪ウォッチ」は子ども向けというよりも、家族みんなで楽しめるファミリーのコンテンツにしようと思っていました。だからテレビアニメでも、子どもたちに向けたお話の展開の中に、大人にしかわからないギャグを入れたりして、「家族の間に会話を生む」というコンセプトで作っているんです。

今回ラッキィさんに作ってもらった踊りというのも本当に大きくて、できあがったものにすごい可能性を感じたので、映像を作ってネットで配信したり、アニメのオープニングはこれでいくんだと、ようかい体操を軸にした展開を始めました。

おち:チームとは?

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日野:悪ノリ仲間」です。ぼくらの今を象徴しているんですけど、いろんな会議の中で本当にこれを感じています。空気が良いので、みんなでおもしろいことを恥ずかしげもなく発言して、それをまとめていくという。たまに苦情が来て謝罪になることもあるんですけど、そういうエネルギーのあるチームになっていて、取材で会議風景を見た人が「居酒屋にいるみたいですね」って言ってくれて。

ぼくらにとっては、ものすごい褒め言葉なんですよね。それだけ、仕事としてやっているんじゃなくて、楽しいことをみんなで考えようぜっていうノリでできているということなので。大人がビジネスの会話をしているのではなく、子どもが集まって悪巧みしているような感じ。「こんなことしたら、やつら笑うんじゃね?」みたいな(笑)。「妖怪ウォッチ」をみんなが自分たちのものだと思ってくれているので、愛を持ってアイデアが出てくるんです。そこが強いところかなと思います。

今年のベストチーム・オブ・ザ・イヤーは、いかがでしたでしょうか。2015年も日本に多くの素晴らしいチームが生まれることを、実行委員会一同、心より楽しみにしております

(執筆:野本纏花/撮影:谷川真紀子橋本直己

著者プロフィール

ベストチーム・オブ・ザ・イヤー

ベストチーム・オブ・ザ・イヤーは、2008~2016年の間、最もチームワークを発揮し、顕著な実績を残したチームを、毎年「いいチーム(11/26)の日」に表彰したアワードです。