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テレワーク浸透に大切な2つのポイント──活用を阻む意外な「あるある」

この連載では、テレワークの考え方導入時のチェックリストサイボウズの導入の変遷とお伝えしてまいりました。今回は、他社の事例などを交えながらまとめてみたいと思います。

浸透の失敗例と成功例

すでにテレワークを実施している企業においては、「制度はあるけど使いづらい」という声をよく聞きます。何が使いづらいのか聞いてみると、たいていは「上司に申請しにくい」の一言。その理由には、「上司が使っていないから」「却下されそう」「理由を色々聞かれそう」といった、制度の目的を上司が理解していないのではといった懸念が挙げられました。



私たちチームワーク総研は、様々なテーマでの企業研修、ワークショップを行っています。たとえば、ある企業で、会社の問題を洗い出すワークショップを行った際にも、「もっとテレワークしたい」といった悩みが現場から上がってきました。5~6チームのうち2チームがその問題を掲げており、2チームとも「テレワーク制度をもっと使って働きたい」と希望を発表しました。



その場にいた管理職の方々は、彼らの発表を聞いて、「どんどん自分の好きなところで働けばよい。みなさんの意見を受けて、まず私は来週水曜を完全在宅勤務にします。〇〇部長、△△部長もぜひ積極的にテレワークしてください」と発言しました。 後日、その企業の方たちとお話をしたところ、その発言された管理職の方は、その日以降週1で在宅勤務するようになり、部長陣もテレワーク制度を以前より利用し始めたとのこと。メンバーがテレワークしたいという申請に対して異を唱える人はいないということでした。

テレワークを推進できた2つのポイント

この話には2点ポイントがあります。 1つは部のトップが推進して制度を利用し始め、かつ、他のマネージャー層にも制度利用を促したということ。また、その行動を部下も含めて確認できている点です。

「トップが規範を見せて行動する」が浸透の一番のきっかけになるのは言うまでもありません。この話においては、「やるよ」と部下全員の前で話したこと、それだけでなく他の管理職の方にもその場でほぼ命令のように(?)促したことが一番素晴らしかったと思います。



2つ目は、そもそもメンバーの「却下されそう」といった理由の半分以上が、実は杞憂だったということです。 「テレワークをもっとしたい」と勇気を出して発言したメンバーに対して「やればいいよ」という声は、実はワークショップ中にも上がっていました。発言したメンバーが、そのワークショップの場で「え? そうなの? いいの?」という顔をしたのは言うまでもありません(笑)。

また、後日、話を伺ったときも「別に、したらいいと思ってはいるけど、したいという意見がそもそも出てこなかった」と話す管理職の方が多かったのです。管理職の方としては「反対したことはない」ということでした。

発言する勇気を持つメンバーの責任と、発言しやすい環境を整える上司の責任

2つ目の「メンバーが勝手に忖度して意見を出さない」は、実は、テレワークを推進するうえでの「あるある」です。

この事象の解決方法は2つあります。一つはメンバー側の行動として、「勇気を出して自分のやりたいことを率直に伝える」ことです。あっさり許可が出るという場面を私たちは数々見てきました。そしてその度に「勝手に壁を作っていたのは自分だったのか」とメンバーも振り返るのです。



仕事に限らず「勝手に自分で壁をつくる」は普段から私たちがよくしてしまう行動です。「自分には無理」「どうせダメだろう」――。その意識を少しずつ捨てていくことが大事です。人は言ってくれないと分からないものです。自分のことを常に観察して慮ってくれる人は皆無だと思ってください。自分の「やりたい」を発言することを恐れない。壁は自分が勝手に作っているものかもしれません。



もう一つの解決方法は、上司側です。要望をメンバーから言ってくれないと分からないのですが、「メンバーが発言しやすい環境を整える」ことです。 普段忙しく、ほぼ席にいなくて部下と話していない。メールも見ることができない、そんな状況になっていないでしょうか? 確かにこれではメンバーとしても「言えない」「言ってもちゃんと相手にしてくれない」になりやすいですね。



最近、週に1回、あるいは月に1回上司と部下が1対1で対話する"1on1ミーティング"を制度として導入する企業が増えています。まさにこれはメンバーが発言しやすい環境をつくることが目的の制度です。こうした場を活用して「発言しやすい環境づくり」をすることが上司の役割なのです。

お互い、目の前のことに精一杯となるだけでなく、「最近どう?」などと何でも話せる関係性を創り上げる。昔では当たり前だったかもしれないけれども、今では「制度」として導入されなければそういう会話ができないのは、もしかしたら、本来悲しいことなのかもしれません。

とはいえ、「何でも言って来い!」と言えるのは、「この人は何を言っても、何かしら対処してくれる」と相手に思われてこそ言える言葉です。そこまで関係性や実績が築き上げられていない状態では、ジャイアンの言葉と同じになります。 メンバーは「発言する勇気を持つ」、上司は「メンバーが発言しやすい環境を考えて整える」。この2つがかみ合うことで、初めて意見活発な組織が構築できるのです。

テレワークを推進する人事の役割は

在宅勤務やテレワークなどは、人事制度として取り扱われがちですが、実際影響を受けるのは、一緒に働いているチームのメンバーです。そこで、制度や仕組みは人事主管で各部と調整しながら作りつつ、実際の日々の運用の責任は各現場にお任せするのが成功のコツだと思います。



むしろ人事の役割は、チームのメンバー同士が「発言しやすい」環境をつくること。関係部署に行って、制度の目的をしっかり伝えつつ、ワークショップをするなどして、チーム内の関係性を円満にし、制度利用が促進するように働きかけましょう。 勘違いしてはならないのは、「制度を使ってもらう」のは人事の仕事ではありません。「制度を柔軟に使いやすいように修正する」ことが人事の仕事です。「ここが使いにくい」「こうしたらいいのではないか」という現場の意見を、人事こそ耳を傾ける必要があります。作りっぱなしでは誰にも利用されない制度になりがちです。社員の意見や状況に応じて修正、変更し、自社なりのものにすることが大事です。



テレワークを題材に様々なことをお伝えしてきましたが、制度のつくり方や使い方については、テレワークに限らずどのような制度においても適用することかもしれません。「発言を恐れずお互いにとにかく対話する」ということが、すべてにおいて大事だと改めて思います。

今回の連載は、そもそも「交通機関が乱れて、駅で数時間缶詰or行列」といった非効率的な状態を無くしたいという話から始まりました。同じ想いを持つみなさんが動かれて、それぞれの組織でテレワークがもっと活用されるためのヒントになっていれば幸いです。



サイボウズチームワーク総研では、テレワーク、リモートワークのセミナーを行っています。宜しければお申込みください。

今回の新型肺炎対策を機に、無料の「【オンライン無料セミナー】リモートワークについて「ざつだん」しよう」も行います。

【関連する記事:この連載は全4回です】

連載1/4(初回):テレワークとは ── テレワークの現状とメリットについて

連載2/4(2回目):テレワークに必要な「環境」と「範囲」──チェックリストから考える「テレワークの導入」

連載3/4(前の記事):サイボウズがテレワークをするまで──テレワークの運用は「信頼関係」が前提

※この記事は、昨年TechRepublicに連載した記事を一部修正して掲載しております。

photo credit: shixart1985 Girl working on a notebook at home. Top view. via photopin (license)

著者プロフィール

なかむらアサミ

チームワーク総研 シニアコンサルタント。様々な組織のチームワークを良くするためにチームの正しい定義を伝えています。